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第6章~ラグナロクの始まり~
第151話(フレイン視点)
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嫌な予感しかしなくて、フレインは内心身構えた。石碑を見つけて破壊すればいいだけの話なら、オーディンだって最初からそうしているのではないか。それができなかったから、今こうなっているのではないか。
では、それができない理由とは……?
「消えるんですよ、石碑を破壊した者が」
「……消える……? 存在がってこと?」
「そうです。しかもただ消えるわけじゃありません。『存在していたことすらなかったこと』になります」
「それはつまり……」
「要するに、その人との思い出すら残らないということですよ。最初から存在していなかったかのように、生きていた痕跡自体がなくなってしまいます。あなたで例えるなら、弟くんが『俺は最初から一人っ子だった』と思い込むことでしょうか」
「それは……ちょっと嫌だな」
それを聞いて合点がいった。そんなペナルティーがあるのなら、さしものオーディンも石碑を破壊することはできない。
フレインは小さく息を吐きながら、言った。
「それじゃあ、第三の方法は事実上不可能じゃないか」
「そうなるねー。でも第一、第二の方法は、最終的に僕たち全員が滅びちゃうわけだから。最悪、誰かを犠牲にして石碑を破壊してこないといけないのかなーなんて」
「犠牲……ね」
「ま、あまり後味がいい作戦じゃないわな。それ以前に、石碑がどこにあるか突き止めなきゃならん。大勢が生き延びるには第三の方法が一番なんだが、ハードルが多すぎるのが問題だ」
「そういうわけなので、わたくし個人としてはもっと別の方法を考えたいですね。と言ってもなかなか難しいので、我々も考えあぐねているところですが」
「なるほど……」
では、それができない理由とは……?
「消えるんですよ、石碑を破壊した者が」
「……消える……? 存在がってこと?」
「そうです。しかもただ消えるわけじゃありません。『存在していたことすらなかったこと』になります」
「それはつまり……」
「要するに、その人との思い出すら残らないということですよ。最初から存在していなかったかのように、生きていた痕跡自体がなくなってしまいます。あなたで例えるなら、弟くんが『俺は最初から一人っ子だった』と思い込むことでしょうか」
「それは……ちょっと嫌だな」
それを聞いて合点がいった。そんなペナルティーがあるのなら、さしものオーディンも石碑を破壊することはできない。
フレインは小さく息を吐きながら、言った。
「それじゃあ、第三の方法は事実上不可能じゃないか」
「そうなるねー。でも第一、第二の方法は、最終的に僕たち全員が滅びちゃうわけだから。最悪、誰かを犠牲にして石碑を破壊してこないといけないのかなーなんて」
「犠牲……ね」
「ま、あまり後味がいい作戦じゃないわな。それ以前に、石碑がどこにあるか突き止めなきゃならん。大勢が生き延びるには第三の方法が一番なんだが、ハードルが多すぎるのが問題だ」
「そういうわけなので、わたくし個人としてはもっと別の方法を考えたいですね。と言ってもなかなか難しいので、我々も考えあぐねているところですが」
「なるほど……」
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