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第6章~ラグナロクの始まり~

第103話(アクセル~フレイン視点)

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 痛みに悶え、意識も朦朧としていると、兄が片手でこちらの身体を抱え上げた。そしてピピの背中に乗り、早口に言った。

「ピピちゃん、ヴァルハラまで連れてって。なるべく急いでね!」
「ぴー!」

 途端、ピピが山の中を駆け出した。夜道にも関わらずひたすら健脚に飛び跳ね、馬よりも速く山を走っていく。今まで見てきた木々がみるみる遠ざかっていった。

 どうにか意識だけは保つべく、感覚のなくなった手を握り締めたら、兄の声が近くで聞こえた。

「アクセル、しっかりするんだよ……もうすぐ泉に着くから……! ピピちゃん、急いで!」
「ぴー!」

 ピピが足を速める。

 泉まで意識を保っていられるかわからなかったが、それでもアクセルには妙な安心感があった。兄とピピがいれば、自分はギリギリのところで溶けずに済むのではないか。そんな確信が芽生えていた。

 ――平和になったら、またピピの木彫りでも作りたいなぁ……。

 兄と同じ家に住んで、牧場みたいな大きな庭を作って、そこにピピも住まわせて、たまに一緒に駆け回ったりして……。

***

「アクセル……!」

 意識のなくなった弟を抱きかかえ、フレインは唇を噛んだ。

 やはり個別に蛇を退治したのは失敗だった。狂戦士モードになれば連携しなくても倒せると思ったけれど――実際、倒せたけれど――その後のことまでは気が回らなかった。

 弟が無茶な戦い方をしていたら、兄の自分がフォローしてあげなければいけなかったのだ。それなのに、なんたる失態か。
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