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第6章~ラグナロクの始まり~

第100話

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「兄上、すまない……! 俺が油断していたせいで」
「いや、大丈夫。今は痛くないからね。急いで泉に行けば問題ないさ」
「わ、わかった……。とにかく急ごう」

 細かいことを考えている余裕もなく、アクセルは兄の右腕を掴んで走り出した。

 道はわからないはずなのに、何故かこっちだという確信があった。狂戦士モードのせいで第六感も鋭くなっているのかもしれない。

 そうやって日が暮れるまで走り続け、完全に道が見えなくなってからも、アクセルはひたすら足を進めた。

 少しでも休んだら狂戦士モードが解けそうだったし、そもそも時間を置いたらどんどん身体が溶けていってしまう。そうなったら狂戦士でも走れない。

 完全に動けなくなる前に、なんとかヴァルハラに辿り着かなくては。身体が溶けようが腕がもげようが、泉にさえ入ってしまえば全て元通りになるのだから……。

「……!」

 その時、前方から何かの気配を感じた。巨大な獣のようだった。暗くてよく見えなかったが、トントンと軽快な足音でこちらに近づいてくる。大きいとはいえ、イノシシのような重厚感のある生物ではなさそうだ。

 となると、サイズの大きな鹿か何かか……?

「はあ……今度は神獣かな? いい加減に欲しいね。こっちは急いでるのに」

 兄が少し苛立たしげに抜刀する。姿を現した瞬間、仕留めるつもりみたいだ。彼も左腕がなくなっているので、これ以上敵に時間をかけたくないのだろう。
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