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第5章~神々の国へ~

第6話

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「『ブレイザブリク』っていう館だよ。父上の『ヴァラスキャルヴ』に比べるとかなり地味だよね」
「ヴァラスキャルヴ……?」
「そう。父――オーディンが生活している館の名前なんだけど、聞いたことないかな」
「は、はい……すみません……」
「いいんだ。ヴァルハラで生活してると、接する機会もないだろうしね」

 バルドルは城に入り、とある部屋に案内してくれた。

「今日からここがきみの部屋だよ」
「……え?」

 更に驚いて、思わず目を丸くする。

 バルドルが「きみの部屋だ」と言ってくれたのは、立派なゲストルームだった。

 一部屋でアクセルの自宅くらいの広さがあり、専用のトイレやバスルームもついている。もちろんベッドやテーブルなども備え付きで、簡単な流し台もあった。

 バルドルはにこやかに言う。

「家具は置きっぱなしだけど、好きに模様替えしていいからね。足りないものがあったら――文房具とか、布団とか――必要ならいくらでもあげるから、遠慮なく言って」
「…………」
「わかった?」
「あ、はい……いえ、でも……」
「なあに? 何か気になることでもあった?」
「いえ、気になるというか……あの、本当にここ、俺が使っちゃっていいんですか?」
「もちろんだよ。どうして?」
「いえ、その……これは人質の身分にはあまりにも贅沢で……」

 これでは「人質」ではなく「お客様」だ。こんなにもてなされては、ますます調子が狂ってしまう。

 奴隷のような過酷な労働は勘弁して欲しかったけれど、初日からこんなに甘やかされていいんだろうか、俺は?
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