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第4章~更なる力を求めて~
第54話
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「だから、いろいろ心配になってさ」
と、兄がこちらを抱き締めながら頭を撫でてくる。
「お前、腕っぷしはともかく、時々危ういところがあるでしょう。お人好しだから悪意にも付け込まれやすい。だから一年もヴァルハラを離れて本当に大丈夫かなって、心配になったんだ。今回ばかりは、さすがに一緒についていくわけにはいかないから……」
「兄上……」
「何かあっても、私は助けてあげられない。一人で切り抜けるしかない。お前、本当に大丈夫? バルドル様の元でやっていける?」
「…………」
不安は……ある。というか、不安しかない。ヴァルハラを離れ、知らない場所で知らない神々に囲まれ、それで一年間も過ごすなんて全く想像できない。何かトラブルがあっても兄に頼るわけにはいかず、自力でどうにかするしかない。そこもまた不安だった。
でも……。
「大丈夫だよ、兄上」
アクセルは兄をぎゅっと抱き締め返した。本当は大丈夫じゃないけど、あえて大丈夫だと言ってみせた。
そうでないと、兄は余計に心配してしまう。
「一年くらいなら何とかなるさ。生前だって、兄上がいない環境で十一年間なんとかやって来られたんだから……。用心していれば、きっと大丈夫さ」
「うん……私も何も起きないことを願ってる。もしお前に何かあったら、バルドル様のところに乗り込んじゃうかも」
と、兄がこちらを抱き締めながら頭を撫でてくる。
「お前、腕っぷしはともかく、時々危ういところがあるでしょう。お人好しだから悪意にも付け込まれやすい。だから一年もヴァルハラを離れて本当に大丈夫かなって、心配になったんだ。今回ばかりは、さすがに一緒についていくわけにはいかないから……」
「兄上……」
「何かあっても、私は助けてあげられない。一人で切り抜けるしかない。お前、本当に大丈夫? バルドル様の元でやっていける?」
「…………」
不安は……ある。というか、不安しかない。ヴァルハラを離れ、知らない場所で知らない神々に囲まれ、それで一年間も過ごすなんて全く想像できない。何かトラブルがあっても兄に頼るわけにはいかず、自力でどうにかするしかない。そこもまた不安だった。
でも……。
「大丈夫だよ、兄上」
アクセルは兄をぎゅっと抱き締め返した。本当は大丈夫じゃないけど、あえて大丈夫だと言ってみせた。
そうでないと、兄は余計に心配してしまう。
「一年くらいなら何とかなるさ。生前だって、兄上がいない環境で十一年間なんとかやって来られたんだから……。用心していれば、きっと大丈夫さ」
「うん……私も何も起きないことを願ってる。もしお前に何かあったら、バルドル様のところに乗り込んじゃうかも」
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