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第3章~新たなる試練~
第196話
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「ちょっとちょっと……一体どうしたの? 大丈夫かい?」
「わからないんだ……」
「わからないって、何が?」
「何もかもだ……。兄上の気持ちも、何故こうなったかも、何を言いたかったのかも、全部……」
「アクセル……」
カタン、と兄がカップをテーブルに置いた。そして突っ伏しているアクセルの頭を撫でつつ、静かに言った。
「気にするな……って言っても、お前は気にしちゃうんだろうね。お前は見た目よりずっと繊細だから」
「……そうなんだろうな。なかなか兄上のようにはなれない」
「私のようになる必要はないよ。お前のように、細かいことにも感情を動かされる戦士はヴァルハラではとても貴重だ。それだけ人間らしいということだからね。お前の純粋さは、ある意味で長所だと思うよ」
「……そうだろうか」
「そうさ。お前がもっと疑り深くて図太い性格だったら、私もあんな風に突き放したりはしなかった」
「…………」
アクセルはのろのろと身体を起こした。まだ兄を直視することはできず、目を伏せたままポツリと言った。
「……やはり騙したのか、俺を」
「いや……半分は本当だよ」
「えっ……?」
「お前のこと、弟気質で羨ましいっていうのは本当。お前は誰にでも愛されるタイプだから、余程のことがない限り誰かに恨まれることはない。あんな問題児たちでも、お前に対しては悪い感情を抱いていなかったからね。きっと、お前の人徳の賜物なんだろう」
「それは……」
「あと、十一歳も年下の弟に泣いて謝られたらお兄ちゃんは許すしかない……例え腹立たしくて仕方なくても表面上は『いいよ』って言わなければならない……そんなのはずるいし卑怯だ……そう思っているのも本当だよ。まあこれはお前が小さい頃の話だから、今はそういうこと滅多にないけど」
「…………」
「わからないんだ……」
「わからないって、何が?」
「何もかもだ……。兄上の気持ちも、何故こうなったかも、何を言いたかったのかも、全部……」
「アクセル……」
カタン、と兄がカップをテーブルに置いた。そして突っ伏しているアクセルの頭を撫でつつ、静かに言った。
「気にするな……って言っても、お前は気にしちゃうんだろうね。お前は見た目よりずっと繊細だから」
「……そうなんだろうな。なかなか兄上のようにはなれない」
「私のようになる必要はないよ。お前のように、細かいことにも感情を動かされる戦士はヴァルハラではとても貴重だ。それだけ人間らしいということだからね。お前の純粋さは、ある意味で長所だと思うよ」
「……そうだろうか」
「そうさ。お前がもっと疑り深くて図太い性格だったら、私もあんな風に突き放したりはしなかった」
「…………」
アクセルはのろのろと身体を起こした。まだ兄を直視することはできず、目を伏せたままポツリと言った。
「……やはり騙したのか、俺を」
「いや……半分は本当だよ」
「えっ……?」
「お前のこと、弟気質で羨ましいっていうのは本当。お前は誰にでも愛されるタイプだから、余程のことがない限り誰かに恨まれることはない。あんな問題児たちでも、お前に対しては悪い感情を抱いていなかったからね。きっと、お前の人徳の賜物なんだろう」
「それは……」
「あと、十一歳も年下の弟に泣いて謝られたらお兄ちゃんは許すしかない……例え腹立たしくて仕方なくても表面上は『いいよ』って言わなければならない……そんなのはずるいし卑怯だ……そう思っているのも本当だよ。まあこれはお前が小さい頃の話だから、今はそういうこと滅多にないけど」
「…………」
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