上 下
299 / 2,666
第3章~新たなる試練~

第176話

しおりを挟む
「親分~! おはようございます~!」

 そこへロシェがやってきた。やはり……というか何というか、ある意味で予想のできる展開だった。特に何も言っていないのに、アクセルが行くところにすぐ現れるのは、どこかから常に見張っているということだろうか。

 そう言えば、ハチミツ採集に行ったことも知っていたし……。

「おはよう。今日もご苦労だな」

 アクセルはさも何も知らない風を装って返事をした。変に疑っているところを見せると、向こうも警戒するだろうと思ったのだ。

 ロシェは愛想笑いを浮かべながら口を開いた。

「親分、今日はこれから死合いですよね? 戦う前にアップしてるんですか?」
「ああ。準備運動くらいは必要だと思ってな」
「さすが親分! ランキング三十五位の戦士は違いますね~」
「……これくらい、みんなやってると思うけどな。ところで、今日は何の用だ?」
「あ、そうそう。親分、死合いが終わったら山に行きませんか?」
「……山に?」
「ええ。ハチミツ採集失敗しちゃったんでしょ? 僕、ハチミツ採集のコツ知ってるんで、教えてあげますよ」
「…………」

 罠だな、と思った。ロシェと一緒に山に入ったら何が起こるかわからない。夢で見たように、本当にイノシシに喰われてしまう可能性もある。ハチミツ採集なんて言っているけど、どこまで本気か疑わしいし……。

「……まあ、考えておくよ。俺は死合いがあるから、後にしてくれ」
「あ、そうですね。じゃあ死合いが終わったらお迎えに上がります~!」

 それだけ言って、ロシェはあっさりと立ち去って行った。あの分じゃ、本当に死合いが終わったら迎えに来そうだ。リスクを回避したいのなら、この時点できっぱり断るべきだっただろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

兄が媚薬を飲まされた弟に狙われる話

ْ
BL
弟×兄

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

BL
 俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。  ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。 「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」  モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?  重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。 ※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。 ※第三者×兄(弟)描写があります。 ※ヤンデレの闇属性でビッチです。 ※兄の方が優位です。 ※男性向けの表現を含みます。 ※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。 お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

処理中です...