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第3章~新たなる試練~
第3話
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簡単に身支度を整え、財布と買い物籠だけを持って市場に向かった。
アクセルはいつもの要領でジャガイモや鶏肉を購入していたのだが、兄が市場に来ることは珍しいらしく、行く先々で声をかけられていた。
「あれ、フレイン様。どうしたんですか、こんなに朝早く」
「ああ、今日は弟とデートなんだ。いいでしょう」
「アクセル様と一緒でしたか。本当に仲がよろしいですね」
「そりゃあもう、アクセルと私は相思相愛だからね。昨日のお泊りなんかとっても……」
「あああ兄上! そろそろ行くぞ!」
世間話を遮り、アクセルは慌てて兄の腕を引っ張った。まったくこの兄は、一体何を話しているのか。油断も隙もあったもんじゃない。
「おや? アクセル、あっちに何か美味しそうな食べ物が売っているよ」
するっと手を離れ、スタスタと横道に逸れて行くフレイン。
ミルクを購入中だったアクセルは、焦ってコインを落としてしまった。
「ああもう……! 兄上、ちょっと待ってくれ」
お金を払ってミルク瓶を一本ひったくり、急いで兄を追いかけた。
兄は、とある出店の前で足を止めていた。二段組の丸い蒸し器の上に、白くて丸い拳大の塊が置かれている。白い蒸気でもくもく蒸かされているようだ。
「ね、美味しそうじゃない? これ何ていう食べ物?」
「いや、俺も初めて見た……」
「それは我が祖国の名物、『温泉まんじゅう』だ」
不意に、横から野太い声が聞こえてきた。そちらに目をやったら、体格のしっかりした長身の男がこちらを見据えていた。
その男性はのっしりと店側に回ると、堂々と椅子に座り込んだ。
アクセルはいつもの要領でジャガイモや鶏肉を購入していたのだが、兄が市場に来ることは珍しいらしく、行く先々で声をかけられていた。
「あれ、フレイン様。どうしたんですか、こんなに朝早く」
「ああ、今日は弟とデートなんだ。いいでしょう」
「アクセル様と一緒でしたか。本当に仲がよろしいですね」
「そりゃあもう、アクセルと私は相思相愛だからね。昨日のお泊りなんかとっても……」
「あああ兄上! そろそろ行くぞ!」
世間話を遮り、アクセルは慌てて兄の腕を引っ張った。まったくこの兄は、一体何を話しているのか。油断も隙もあったもんじゃない。
「おや? アクセル、あっちに何か美味しそうな食べ物が売っているよ」
するっと手を離れ、スタスタと横道に逸れて行くフレイン。
ミルクを購入中だったアクセルは、焦ってコインを落としてしまった。
「ああもう……! 兄上、ちょっと待ってくれ」
お金を払ってミルク瓶を一本ひったくり、急いで兄を追いかけた。
兄は、とある出店の前で足を止めていた。二段組の丸い蒸し器の上に、白くて丸い拳大の塊が置かれている。白い蒸気でもくもく蒸かされているようだ。
「ね、美味しそうじゃない? これ何ていう食べ物?」
「いや、俺も初めて見た……」
「それは我が祖国の名物、『温泉まんじゅう』だ」
不意に、横から野太い声が聞こえてきた。そちらに目をやったら、体格のしっかりした長身の男がこちらを見据えていた。
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