転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています～ヴァルハラで死合いましょう～

第１章～あなたを目指して～

第４９話

「く……」

　溺れかかった者のように、必死に兄にしがみついた。歯を食いしばって堪(た)えたものの、生理的な脂汗や涙が滲み、しがみつく手に力が入る。兄の背に爪を立ててしまったが、申し訳ないと思う余裕もなかった。

「……アクセル」

　こちらを抱き締めながら、兄が優しく囁いてきた。

「我慢しなくていいよ。痛いなら思いっきり泣きなさい。その方が痛みも薄れる」
「……！？」
「大丈夫。ここには私しかいないし、人目を気にする必要もない。遠慮はいらないよ」
「あ……あに、フレイン様、でも……」
「いいよ、兄上で。『フレイン様』なんて呼びにくいだろう？」
「……っ……」
「お前が頑張っていたこと、お兄ちゃんはちゃんと知ってるよ。たった四ヶ月でよく五〇位以内に入ったものだ。本当に頑張ったね。偉い偉い」

　ぽんぽんと頭を撫でてくれる。

「……兄、上……」

　もうたまらなかった。いろんな感情が堰(せき)を切ったように溢れ出し、涙となってボロボロこぼれてきた。決して泣くまいと思っていたのに、どうしても嗚咽(おえつ)が止められなかった。

「兄上……兄上ぇ……」
「よしよし、大丈夫。お兄ちゃんはここにいるよ」
「と、いうか兄上……俺が誰か、わかってるのか……？」
「もちろんだよ。お前は私の可愛い弟、アクセルだ。なんでそんなこと聞くの？」
「だ、って……兄上、最初会った時、『誰だっけ？』って……」
「ああ、そっか……。そんなこともあったね」

　ふふ、と兄が笑みをこぼす。