転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています～ヴァルハラで死合いましょう～

第１章～あなたを目指して～

第３５話（フレイン視点）

　その本曰く、ヴァルハラは「アース神の世界アースガルズ」のほんの一部で、最高神・オーディンの娘たち――ヴァルキリーが戦士たちエインヘリヤルを管理し秩序を守っているそうだ。毎月出される戦士ランキングや、見回り当番等の仕事は、全部ヴァルキリーたちがスケジュールを組んでいる。

　ちなみに、天上には同じく「ヴァン神族の世界ヴァナヘイム」、「光の精の世界アールヴヘイム」という二つの世界があって、そのうちヴァン神族とは人質を交換し合って和議を結んでいるそうだ。人質に選ばれるのは主にランクの高い戦士で、一年間の人質生活に耐える必要があって……云々かんぬん。

　――ホント、細かいルールが多いなぁ……。

　フレインは持っていた本を投げ出した。

　天上の理は地上とは全然違う。人間だった頃の常識が通用しないこともたくさんあった。フレインも十一年前に初めてヴァルハラに来た時は、かなり戸惑ったものだ。ランクを盾に嫌がらせやセクハラをしてくる戦士も大勢いたし、もっと直接的に手を出してくる者もいた。

　下界では男が男に手を出すのは異常だったのに、ここでは割と当たり前に行われていると知って衝撃を受けたものだ。

　――そう言えば、あの子は大丈夫なんだろうか……。

　ふと、弟・アクセルのことを思い出す。

　彼はまだこちらに来て日が浅い。ヴァルハラについて知らないこともあるだろう。

　それだけに、あまりにひどい扱いをされたらショックを受けそうだ。普通の嫌がらせならともかく、獣じみた男に手を出されでもしたら……。