上 下
32 / 2,666
第1章~あなたを目指して~

第32話

しおりを挟む
 大人はできるだけ避けること……と心の中にメモし、アクセルも茂みの中に入っていった。周囲の気配を確認しつつ、自分の武器・二刀小太刀に目を落とす。

 ――弓矢くらい持ってくるべきだったな……。

 あまり荷物を持って行くと動きが鈍くなると思ってやめたが、こうして個人的に狩りをするのなら、弓矢は絶対必要だ。ちょっと失敗した。やりにくいことこの上ない。

 ――兄上が勧めてくれた武器も、狩りを前提とはしてないしな……。

 再び兄との思い出に脳を浸す。

 最初はアクセルも、兄の真似をして「太刀」を使っていた。でも自分にはあの重さと長さがどうにも扱いづらくて、手合わせの成績もあまり伸びなかったのだ。

 俺は兄上みたいになりたかったのに、武器すらまともに扱えないのか。

 そう悩んでいた時、兄にこう意見された。

「もっと刀身を短くしてみたらどうだろう?」
「……短く? 短剣にしろって言うのか?」
「いや、そこまで短くしなくていいけど。でもお前の長所は腕力じゃなくて瞬発力だからね。もっと小回りが利いて軽い武器の方がいいんじゃないかな?」
「軽い武器か……」

 それで考えあぐねた結果、二振りの小太刀を使うことにした。

 太刀を扱えなくなったのは残念だったが、武器を替えたおかげで成績も伸び、生来の真面目な性格も相まって、アクセルは十六歳で初陣を飾ることができたのである。

 ――もっとも、兄上と同じ戦場に立つことは叶わなかったが……。

 アクセルが戦場に立てるようになった時には、兄は既に前線でバリバリ活躍していた。お互いの出陣場所が違うので会うことも滅多になく、早く前線に出たいと思っていたら兄が戦死してしまったのだ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

兄が媚薬を飲まされた弟に狙われる話

ْ
BL
弟×兄

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

BL
 俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。  ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。 「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」  モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?  重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。 ※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。 ※第三者×兄(弟)描写があります。 ※ヤンデレの闇属性でビッチです。 ※兄の方が優位です。 ※男性向けの表現を含みます。 ※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。 お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

ある日、人気俳優の弟になりました。

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

処理中です...