転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています～ヴァルハラで死合いましょう～

第１章～あなたを目指して～

第１６話

　それからアクセルは、しばらく自分の部屋に閉じこもって塞ぎ込んだ。息を吸ったり吐いたりすることさえ辛くて、このまま死んでしまおうかと思ったくらいだ。

　最早人間としての「生」に未練はない。兄の死と共に、アクセルの中の何かも死に絶えたのだ。これ以上生きる価値もないし、強くなる意味もない。

　だが、ヴァルハラに招かれるためには戦場で死ぬことが大前提である。病死や自死などは最も不名誉なことで、オーディンの眷属としては論外なのだ。

　――ヴァルハラで待ってるからね……。

　兄の墓前に立っていたら、大好きな声が蘇ってきた。聞こえないはずの兄の声が、何故か身体の内側から響いてきた。

　――兄上……。

　この世に兄・フレインはいない。最愛の兄は戦場で亡くなったのだ。もう二度と会うことは叶わない。

　でもヴァルハラに行けば――オーディンの眷属エインヘリヤルに選ばれれば、もしかしたらまた……。

「……わかったよ。俺は必ずヴァルハラに行く。だから、それまで待っていてくれ……」

　もう振り返ることはなかった。ヴァルハラを目指して、ただ真っ直ぐ駆けるのみ。

　愛しい兄に、もう一度会うために――。

＊＊＊

　以降、アクセルは何かに憑りつかれたように戦場に赴く。

　そして兄を亡くした十一年後、同じ戦場で命を落とした。享年二十七歳だった。これもまた兄と同じだった。