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第1章~あなたを目指して~

第7話~フレイン目線~

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「ちょ、おい……。あれフレイン様じゃね?」
「え、マジかよ。オレたち出た方がいいかな」
「そ、そうかもな……」

 ひそひそ話し合っている先客もいたが、フレインはかまわず上着を脱いだ。

 次いで上半身裸になったら、弟につけられた傷跡が露わになった。左の肩甲骨から背中の中心にかけて、バッサリ斬られてしまっている。

 ――ありゃ……意外と酷かったなぁ。

 痛みはそれなりだったが、ここまで傷が深いとは思わなかった。我が弟もなかなかやるではないか。

 満足げに微笑みながら、下着一枚になって泉に飛び込む。

 透明度の高い泉は、水中で目を開ければどこまでも見通せるほど透き通っていた。水温もちょうどよく、全身の疲れが溶けていくようだった。

 フレインは背中を水に浸し、仰向けになって静かに遊泳した。横目で、先客の男たちが顔を赤くしながらそそくさと出て行くのが見えた。

 そう言えば、ヴァルハラに来たばかりの頃は色目を使ってくる戦士たちがたくさんいたものだ。今はそんなことをしてくる命知らずなヤツはいないが、男しかいないヴァルハラの中では、自分はちょっとした目の保養になっているらしい。

 まあ、見たい人はいくらでも見ればいい。別に減るものじゃないし、不快にもならない。

 仮に無礼なことをしてくる者がいたら、問答無用で腕を切り落としてしまえばいいだけのことだ。

「…………」

 フレインはぼんやりと空を見上げた。

 今こうしている間にも、弟の蘇生は続いている。結構な重傷だったから、目覚めるのは明日の朝になるかもしれない。

 一体どんな夢を見ているのだろう。せめていい夢を見ているといいな、と思った。

 次に目覚めたら、またしばらく離ればなれだろうから。

 ――待ってるよ、アクセル……。

 私に追いついてくれるのを。いつまでも。ずっと。
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