転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています～ヴァルハラで死合いましょう～

第１章～あなたを目指して～

第５話～フレイン目線～

「…………」

　じっと弟を見つめる。やや長めの前髪が目元にこぼれかかっていた。そっと左右に掻き分けてやったら、端整な顔が露わになった。血で汚れていても、我が弟は美形だと思う。

　――本当に強くなったね……。

　弟がヴァルハラにやってきたのは、三ヶ月ほど前。最初はランキング圏外の新人戦士だったのに、三ヶ月で一気に１００位以内に食い込んできた。

　最高神・オーディンの眷属として選ばれた戦士――エインヘリヤルは、もともと粒揃いの猛者もさばかりである。その中で上位１００名に入るのは並大抵のことではない。それがたった三ヶ月で頭角を表してきたのだから、余程の努力をしたということだ。

　憧れの兄に認知してもらいたいがために……。

「……アクセル」

　弟の唇にそっとキスを落とす。濃厚な血の味が思った以上に甘美だった。つい身体の芯が疼いてしまった。

「おやすみ。またいつか死合おうね」

　そう囁き、棺を閉めて、フレインは館を後にした。

　今日の「死合い」はもうおしまい。後は夕方から行われる宴に参加するかどうかだ。

　――たまには参加しようかな。

　いつもはあまり気が進まないが、今日はすこぶる気分がいい。ヤギの蜜酒をたらふく飲んで酩酊したいところだ。
　そんなことを考えながら歩いていたら、友人のジークに遭遇した。背が高く体格にも優れた気のいい戦士である。ランクも五位という強者だ。

「やあジーク。今から宴かい？」
「ようフレイン、お前さんも宴……って、うわ！　ひっどい有様だな。宴の前にその格好なんとかしてくれよ」
「ありゃ、そうだった」

　自分の姿を見下ろしたら、お気に入りの衣装にべっとり血糊が付着していた。そう言えば、肩の傷も治していない。宴の前に治療して着替えてこなくては。

　ジークが片眉を上げてこちらを眺める。