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番外・触手編

第16話

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「うん。本当は全部まとめて焼却処分してやりたかったけど、さすがにあの状況で燃やすわけにはいかないだろ? だから塩撒いて弱らせたのさ。やっぱり植物には塩がよく効くな」
「はあ、そうですね……」

 なるほど、塩か。確かに人体への影響はないし、元気のいい植物には一番効果的な道具かもしれない。

 だけど夏樹には、些細だけどひとつだけ引っ掛かっていることがあった。

「……なんかあの植物、先生とちょっと攻め方が似てた気がする」
「えっ? そうなのか?」
「ええ。なんというか、その……俺のいいところを知り尽くしてたみたいで」
「ふーん……?」
「というか俺、明らかに男なのに、植物には『メス』として認識されてたような気がして……。裸にすればメスじゃないってわかるはずなのに、なんで襲ってきたんだろ……」

 独り言のようにボヤいたら、市川は頭を掻きながらこう言った。

「詳しいことはわからんけど……アレかな、夏樹の喘ぎ声を聞きながら育ったから、お前のこと『メス』だと勘違いしちゃったのかな」
「……は? それ、どういうことですか?」
「いや、ホラ……あの植物、いつもベランダで育ててただろ? 実はあのベランダ、リビングの音結構聞こえるんだよ。だからここでしてたイチャイチャの音も、あの植物は全部聞いてたのかもしれん」
「えええっ!? なんですか、それは! じゃあ、俺が襲われたのは先生のせいってこと!?」
「いや、そこまでは……。これはあくまで想像だし、俺だってあんな植物……ぶっ!」
「知りません! もう最低っ! こんな変態教師と付き合うんじゃなかった!」

 食べかけのピザトーストを顔に投げつけ、夏樹は勢いよく席を立った。
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