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保健の授業編

第14話

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「あー、だりぃ。物理とかやってらんねーよ」
「藤枝センセー、いますかー……って、いないのか」
「なんだぁ~。センセーに癒してもらおうと思ったのに」

 誰かがドカッと空いているソファーに腰掛ける音がした。他の二人はうろうろと保健室を歩き回っている。

(どうするんだよ、先生……!)

 一応カーテンは閉めているけれど、一番奥のベッドに来られたらおしまいだ。

 声も出せずに市川を見上げると、彼は不動のまま耳を澄ませていた。何かを考えているらしく、じっと向こうの様子を窺っている。

「……あれ? 奥のベッド、誰か寝てねぇか?」
「ホントだ。カーテン閉まってる」
「ちょっと覗いてみる?」

 一人の足音がこちらに近づいてくる。足音が大きくなると同時に、自分の心音も大きくなっていった。

(ど、どうしよう……!)

 夏樹は今ほぼ全裸の状態だ。どこにも逃げ場はない。一人なら布団を被って寝たフリもできるけれど、今は市川も一緒にいる。見られたら言い訳のしようがない。

 どうする? どうすれば……。

「…………」

 すると、不動だった市川が急に身体を起こした。

 素早く陰茎を抜き去り、着崩したジャージを整え、夏樹に布団を被せてカムフラージュする。

 そしてカーテンが開く前に、こちらからカーテンを開けた。

「ん? お前らここで何してんだ?」
「うわぁっ! 市川先生!?」
「なんでそんなとこにいるんスか!?」

 驚愕する生徒たちに向かい、市川は爽やかな口調で答えた。

「いやね、授業中にちょっと気分悪くなった生徒がいたもんでさ。保健室連れて来たのはいいけど藤枝先生がいなかったから、奥のベッドに寝かせてたんだ」

 ……よくもまあ、そんな口から出まかせが出てくるものだ。布団を被りながら少し呆れてしまった。
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