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跳び箱編

第4話

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 一時間目。大嫌いな体育の時間がやってきた。

「よし、OK! じゃあ次のヤツー!」

 ピッ、というホイッスルの音が聞こえた。直後タタタ……と床を走る音がして、ダンと踏み切り台を踏む音が聞こえてくる。

 ストンと無事にマット上に着地した音を聞いて、夏樹は再び溜息をついた。

「よし、いいぞ。じゃあ次ー!」

 市川の姿が跳び箱の向こうに見えた。手元のチェックボードに何か書き込みながら、生徒たちが跳び箱を跳んでいくのをチェックしていた。

(ていうか、なんで跳び箱なんだよ……)

 バスケやサッカーなどの球技の方がまだよかった。陸上競技や器械体操は、夏樹にとって特に苦手なジャンルだった。よりにもよってそんなものを実技テストに選ぶなんて、最早嫌がらせのレベルではなかろうか。

 しかもこんな風に一人一人跳んでいく形をとってしまっては、クラスメート全員の前で恥をかいてしまう。「男のくせに跳び箱七段も跳べないのか」と笑われてしまう。

(どうしてくれるんだ、あのクソ教師……)

 自分の順番がだんだん近づいてくる。七段の跳び箱が迫ってくる。精神的プレッシャーのせいか、夏樹はだんだんお腹が痛くなってきた。

「じゃあ次、笹野ー!」
「…………」
「おーい、早くしろよ。後がつかえてんだから」
「……はい」

 仕方なく、夏樹は嫌々走り出した。数メートル先に七段の跳び箱が待ちかまえている。近づけば近づくほどそれが大きくなり、三階建てのビルよりも大きくなっていくような錯覚に陥った。

(……やっぱり無理!)

 緊張と不安で身体が強張り、ついに跳び箱に手をついたまま足を止めてしまった。
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