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第10話
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「…………」
それを聞いて、ふと思った。
アビーは魔法使いとしての才能がある。それは教えてもいない魔法を使えるようになったことからして明らかだ。才能があるかどうかわからないジェームズとは全然違う。
ではもしアビーが成人して「魔法使いになりたい」と申し出たら、リデルは印を与えるのだろうか。ジェームズのように二年間も渋ることなく、あっさりと魔法使いの仲間にしてやるんだろうか。
(してやるんだろうな……多分)
内心はちょっと面白くないが、まあ仕方がない。こればかりは生まれもっての素質だ。五歳の子供に嫉妬するのも大人げないし、今日魔法使いになれればそれでよしとしよう……。
(……に、しても暑いな)
ハンマーと釘で板をトントンやってるからだろうか。さっきから額の汗が止まらない。
今は時期的にもそんなに暑くないはずなのだが、部屋の温度がどんどん上昇しているような気がする。
なんでこんなに暑いんだ? というか、さっきから若干焦げ臭いのだが……。
ハッとした次の瞬間、玄関から何かが崩れるような音が聞こえてきた。
「えっ? な、何の音?」
「動くな、アビー! お前はここにいろ」
急いで立ち上がり、玄関に続く廊下のドアを開ける。
その瞬間、熱い煙で顔面を叩かれ、煙たい空気に思わず噎せ返った。
(火事!? なんでいきなり!?)
火の勢いに押され、反射的にドアを閉める。隙間から煙が漏れ、ドアが次第に焦げて来た。迷っている暇はなかった。
「アビー、逃げるぞ!」
「え、う、うん……」
戸惑っているアビーの手を引っ張り、ジェームズは火元からできるだけ遠い部屋に走った。
この家には裏口というものがない。玄関が焼かれてしまっている以上、一階の窓から逃げるしかなかった。
ジェームズは寝室に飛び込み、ドアを閉めてから窓を勢いよく開けた。そしてアビーを抱え上げて外に出し、続いて自分もそこから脱出する。
家の近くにいると危険なので、なるべく離れた場所に避難しようとした。
ところが途中まで逃げた時、大事なものを忘れてきたことに気付いた。
それを聞いて、ふと思った。
アビーは魔法使いとしての才能がある。それは教えてもいない魔法を使えるようになったことからして明らかだ。才能があるかどうかわからないジェームズとは全然違う。
ではもしアビーが成人して「魔法使いになりたい」と申し出たら、リデルは印を与えるのだろうか。ジェームズのように二年間も渋ることなく、あっさりと魔法使いの仲間にしてやるんだろうか。
(してやるんだろうな……多分)
内心はちょっと面白くないが、まあ仕方がない。こればかりは生まれもっての素質だ。五歳の子供に嫉妬するのも大人げないし、今日魔法使いになれればそれでよしとしよう……。
(……に、しても暑いな)
ハンマーと釘で板をトントンやってるからだろうか。さっきから額の汗が止まらない。
今は時期的にもそんなに暑くないはずなのだが、部屋の温度がどんどん上昇しているような気がする。
なんでこんなに暑いんだ? というか、さっきから若干焦げ臭いのだが……。
ハッとした次の瞬間、玄関から何かが崩れるような音が聞こえてきた。
「えっ? な、何の音?」
「動くな、アビー! お前はここにいろ」
急いで立ち上がり、玄関に続く廊下のドアを開ける。
その瞬間、熱い煙で顔面を叩かれ、煙たい空気に思わず噎せ返った。
(火事!? なんでいきなり!?)
火の勢いに押され、反射的にドアを閉める。隙間から煙が漏れ、ドアが次第に焦げて来た。迷っている暇はなかった。
「アビー、逃げるぞ!」
「え、う、うん……」
戸惑っているアビーの手を引っ張り、ジェームズは火元からできるだけ遠い部屋に走った。
この家には裏口というものがない。玄関が焼かれてしまっている以上、一階の窓から逃げるしかなかった。
ジェームズは寝室に飛び込み、ドアを閉めてから窓を勢いよく開けた。そしてアビーを抱え上げて外に出し、続いて自分もそこから脱出する。
家の近くにいると危険なので、なるべく離れた場所に避難しようとした。
ところが途中まで逃げた時、大事なものを忘れてきたことに気付いた。
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