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ぼくのひみつ

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ぼくのひみつは、ユルセナイユルセナイと心の声がときおり聞こえることだ。

のんだくれのおとこがおんなの人にからんだときだ。困ります。止めてください。とおんなの人はいった。
でもおとこはわざと、いやがらせのようにおんなの人にしつこくからんで怖がらせた。
おんなの人はひいいと声をあげた。
なんだなんだと人が集まり始めた。おとこはちぇっとテレビでみた時代劇の三下みたいに片意地はって逃げた。
おんなの人はだれかに助けられて良かったとぼくは思ったら、声が聞こえた。
あのおとこユルセナイ。

おんなの人はとても怖い顔をしてしゃべった。ううん。しゃべってない。だって唇が動いてないもん。

まさか、ぼくもままのように心の声が聞こえる? まさかね。

それからも、何もしていない人が酷い目にあった時をみるたび、声が聞こえるようになった。

あの人だけはユルセナイ。

とても怖い声。そんなにひどい目にあったのかな。かわいそうだな。ごめんね。こどもだからなにもできない。

そうだ。ままのまねをしよう。

「 だいじょうぶですかあ? 」
「 こわかったの? 」
たずねると、怖い顔が、崩れた。ああぼくのせいじゃないよ。うん怖かったよ。情けなくてね。
ユルセナイという声が消えた。
あ びっくりした。声って消えるんだ。

安心できる人やこどもがあらわれたらユルセナイという声って消えるんだ。

ほとんどの人は、安心したらユルセナイという声が消える。良かったあ。

でも、特定の人はとてもこわい。 ユルセナイユルセナイとずっといいつづけているからだ。
まるで壊れた人形みたい。

ごめんね。とても怖いから近寄りたくないよ。もうそれしか言えないみたい。

ごめんね。ごめんね。ままにもいいたくない。とても怖くてままにも手にはおえなそうだ。
ままには怖い目には合わせたくない。

ままにもずっと黙っていた。この声は秘密だ。

ある日、ユルセナイユルセナイと言い続けたおんなの人が夫を台所の包丁でさしたようだ。

台所の包丁は、美味しいごはんをつくるために、野菜や、肉、果物を切るためにあるんだよ。

ままはそういってたのに。

ぼくはなんだか泣きたくなった。まま。ごめんなさい。 ぼくはままにぼくのひみつを泣きながら打ち上げた。

ままはえっと目を丸くしながら、そのおんなのひとは?とぼくにたずねて交番に連絡した。

そのおんなの人は、せっかくけっこんしたのに、相手にずっとないがしろにされていたようだ。

家庭内暴力? 夫婦でも酷い目にあわされる人は多いってままに聞いた。

ずっと、ユルセナイという声が聞こえて怖かった。とままに打ち明けると、ままは気づいてあげられなくてごめんね
と子どものように涙を流した。

これからはユルセナイという声が聞こえたら、ままに教えてとやくそくした。

ごめんね。まま。その約束は時々果たしていない。

だってどうしてもいやな時があるんだ。怖くてたまらない時があるんだ。

そんなにユルセナイのなら勝手にしろと思ってしまったんだ。

ままには秘密だよ。ままのように善良じゃないんだ。ぼくは少し悪いんだ。

ごめんね。まま。だから神様はユルセナイという心の声をぼくに教えたのかな。

悪いことがおきそうなこころだもの。そんなに辛かったならいいかと思ったんだ。

だって、さしたおんなの人はすっきりした顔だったもの。

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