冥府の花

栗菓子

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第2話 歪みⅡ

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シュエの告白

 ねえ。神様は本当に残酷なんだよ。所詮この世は弱肉強食。醜い悪意は増殖するし、どんなに弱者が平穏を願っても、踏み躙られるだけのが多いんだ。
きっと、弱者の怨嗟も積もり積もって、このおかしな能力を生み出したんだよ。
だってだれでも蘇生できるってそれこそ神様でしょう。でもぼくはあんな亡骸の山から得体のしれない力をもらったんだ。僕はここに閉じ込められたんだよ。あの亡骸の山はなにかとても偉い人たちのために、偉大な目的のため生贄にされたんだ。
嗚呼ぼくの親や祖父母もあそこに埋まっているかもしれないな。
とにかく妹といたはずのぼくは気づいたらあそこに幽閉されていたんだよ。
反骨心の強い苛烈な子どもだったら怒り狂ったかもね。でももう僕は何も感じなかった。
唯途方に暮れたよ。ぼくは驚いたことに死ななかった。多分昔は自殺を図ったかもしれない。記憶がないけど何回もぼくは死んだことがあると思う。でも力が死ぬのを許さないんだ。
おまけにぼくは痛覚がなくなったんだ。無痛と無感動。本当に生きている感覚もなくなった。これは本当に人間として生きていると言えるのか分からないんだ。
ぼくはどれほどここにいたのか?時間の感覚さえもなくなったよ。
どれだけあいつらはぼくから奪えば気がすむのか・・。
悲惨だね。それに時折死者の凄惨な最期も見えてしまうんだ。でもぼくには何もできなかった。今までは・・。君と言う魂に出会ってぼくは初めて自分で何かをしようと思う気になれたよ。そうだ。ぼくはずっと妹が気になっていた。そしてここから出たかった。明確な意志が芽生えた。
これは明らかな異変だ。世界にぼくという弱者の憤怒が及ぼす牙を爪を与えることが出来たらどれほど楽かと思っていたよ。
君は昏い暗い世界に光を齎した。
嗚呼そうだ。君には名前が無かった。アキと名付けよう。
ここから出よう。そして妹を探してそして本物の神様に会おう。そしてコロソウ。
僕は決めたよ。このどうしようもない運命を与えた本物を殺すとね。
ずっとずっとずっと思っていた。
嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい。やっと強い意志を持てた。
歓喜とともにぼくは世界を滅ぼそう。ぼくたちを踏み躙り繁栄する世界を嫌悪し憎悪し破壊しよう・・。
全てから忌み嫌われる存在と成り果てても、君はぼくを信じてくれるかい?



アキの本音
シュエ様の独白はとても怖くて重い重い過去だ。
アキにはどうしたらいいかわからない。だがシュエ様が世界を呪っていることは分かる。アキは一度死んでシュエ様に蘇生された身だ。
シュエ様には抗えない。唯、シュエ様のことを肯定するだけだ。アキはシュエ様の大事な妹に出会えるまでシュエ様を守ろうと思った。
この途方もない暗い世界でたった一人孤独に耐えていたシュエ様を思うたびにアキは僅かに胸が痛んだ。
これが歪つだと罵る者もいるかもしれない。嘲笑するものもいるかもしれない。
だがそれでもアキはシュエ様の傍らにいてずっといたかった。
シュエ様・・ええ貴方様を信じましょう。俺はとうに殺された身。シュエ様を盲目的に愛し信じましょう。
それが俺の絶対の誓約です。決して裏切られることのない約束です。
シュエ様。貴方様を愛しています。
貴方様は俺の神です。

 アキの本音が吐露されるたびに、シュエは蕩けるような目をした。精神的な交合がされているみたいに気持ちが良かった。嗚呼君とアキといると感覚が戻る。否、前より視界が広がる。世界も広がる。
 あまりにも広大な世界拡大にシュエは眩暈がしそうだった。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。アキといると奪われたもの。それ以上のものが戻ってくる。シュエの能力はかつてない高揚感と多幸感に満たされて莫大になりつつあった。いびつなほどの深い絆と愛に結ばれた主人と使い。

この歪みは世界を侵食して新しく変容させるだろう。その世界はより良い世界かさらなる悪夢を生む世界かはまだわからない。

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