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「な、なんで…」
「あは、バレた?」

私の後にはそう言って笑う小宮主任が居た。私と目が合っているにも関わらず、お尻にある手は休む間もなく動いている。

まだ、水瀬課長ならよかったよ。もう既に変態だってわかっていたから。…小宮主任まで変態だったなんて…。なんだか少しショックだ。ていうか、手を止めてくれ…

「小宮主任も変態だったんですね。」

そう言いながら、そっと手を振り払った。

「相馬さんにだけだよ。相馬さんと痴漢プレイしたいなぁって思って、早起きして電車に乗ってみた。」

にこっと爽やかな笑顔とは真逆な言葉に、空いた口が塞がらない。何を言ってるの、この人は。

「…やめてください。それに、一昨日のことは忘れてください」
「えー、無理だよ。あんなに気持ちいいセックス、初めてだったし。」

耳元で聞こえる声に、身体かびくりと震えた。くすぐったい。くすぐったい、だけなのに。

「ほら、めっちゃ感度いいじゃん。やば、興奮してきた」
「ちょっ!やめて……っ、ください、叫びますよ!?」

胸に伸びてきた手をパチンと叩いて、小宮主任を睨む。そんな私の顔を両手で包むように掴んだ小宮主任がふふ、と笑う。

悔しいけどイケメンだ。なんだその笑顔は。爽やかだけど意地悪な笑みに釘付けになる。だって、こんなのときめかないわけがない。

「……かわい、ちゅーしてい?」
「っ、は!?」

いきなりガラッと雰囲気が変わり、甘えたような声で聞いてきたもんだから、思わず大きな声を出してしまった。周りの人の視線が痛い。ごめんなさい……

そんな私をクスクスと笑いながら見ている小宮主任をまた睨む。あなたのせいですからね!?あなたが急に変なことを言うから!

「本当に可愛いね」

ぐいっと引き寄せられて、気が付いたときには唇と唇が触れ合っていた。離れようとするけど、頭の後に回っている小宮主任の腕のせいで動けない。文句を言おうと口を開いた瞬間に、ぬるっと舌が入ってきた。

「んっ、!?……ふ、……っ」

何でこんな場所で深いキスなんてしてくるのよ…!見られてたらどうするの!?必死に抵抗するけど、徐々に力が抜けていく。

頭が真っ白になる。体が熱い。とろけてしまいそう。

暫くしてやっと離れた唇。ふわふわとした体を小宮主任が抱き寄せるようにして支えてくれている。

「うわ……えっろ、誘ってんの?」

耳元で囁かれて、力が抜ける。もうやだ、恥ずかしい……

「誘ってな、い……!」
「無理だ、我慢出来ない。次降りない?」
「仕事、間に合わないですよ…!」
「ってことは、間に合うならいいってことね?わかった、じゃあお昼休みね。」
「はっ!?」
「会社が嫌なら、どっか違うとこ行こ」 

いやいやなんでそうなる!?水瀬課長と同じぐらいにやばい。

「ね、約束だよ。もし、聞いてくれないなら全社員がいるところでキスするから。」
「なんでっ!?」
「嫌でしょ?みんなに誤解されて、もっといじめられちゃうかもよ?」
「……鬼畜だ……!」
「花蓮ちゃんが可愛すぎるのが悪いんだよ?」

小宮主任のめちゃくちゃな言動に絶望していると、電車が会社の最寄り駅に止まった。

ほら、行くよ、と小宮主任に肩を抱かれながら電車から降りる。

「っ、離してくださいっ!」

こんなところ誰かに見られたらやばいと今更気付いた。誰も見てないよね…?

「別々に行きましょう。お昼休みの約束は仕方ないので守りますから!」
「わかったよ。お昼休み、楽しみにしてるね。じゃあ、お先にー」

飛びっきりの笑顔で言った小宮主任の背中を見送ってから、はぁとため息をついた。小宮主任はまともな人だと思っていたのに…なんだか、裏切られたような気分だ。あの鬼畜主任め…

お昼休みのことを考えるとかなり憂鬱だけど、休むわけにはいかないし…と、行きたくないけど会社に向って歩き出した。

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