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53 悪役令嬢が歩けば事件に当たる
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手紙っていざ書こうとすると緊張するというか書き出しが難しい。
『ヒョーガル王子様
お久しぶりでございます。ミルフィーナ・ダルンです。突然のお便り失礼します。
レオナルド王子様やアルフィン様から、お元気だと伺い、大変嬉しく思います。私が預かりましたヒョーガル王子の所有物、必要であれば、至急、王子殿下に頼みましてお送りいたします。
ヒョーガル王子様の益々の御健勝を願います。お忙しい中、読んでくださりありがとうございます。
所有物、必要でなければ、今後も預かりたく存じます。
隣国より、ヒョーガル王子様のお幸せを切に願い失礼いたします。』
めちゃくちゃ短い文になってしまった。
書きたい事色々あるけど、検閲が入るだろうし、あなたのことが好きです、あなたの国の事沢山勉強しています、なんて絶対にかけない。
重い、痛い、勘違い女。
ハァー
うん、結局話す事ってないよね。だって出かけたのだってピクニックのみだし。思い出ってたいしてなかったりする。
浅いのよ、関係が。
書きたいこと、気持ち悪いぐらい独りよがりの告白ぐらいになりそう。
もしかして好きって感情が勘違いかもしれない。少し自分の中で盛り上がった的な…
改めて共通点もないのにヒョーガル王子様の何が好きなのかしら?
顔、剣術、器用さ、勉強熱心なとこ、負けず嫌い、有言実行しちゃって、なんだろうな。
結局私も顔か、あの瞳は反則だ。赤かオレンジか必ず確認したくなる。見たくなる。
そんなの好きの理由になるのだろうか?恋の理由になるのだろうか?
アリサさんに聞けば、本能とか言ってくれそう。そういうのが結局答えなのに、グダグダ考えるのがヒロイン外女だな。
書いた手紙を執事長に渡した。送って欲しいと一言添えて。
返事も期待していない。
ただ何もしなければ、私の時が止まったままだからね、これは全部私のため。
学校側から次の生徒会役員の指名がきたが断った。今努力していることが認められたのは、正直嬉しい。張り切って動く私の姿が見えなかったのでお断りした。レオナ様も兄様も
「今は、そんな余裕ないでしょう」
と言われたが、いや、余裕というより人のための偽善をする心の余裕がないのよ。
結局自分を中心にしか考えられないということだ。
何もないまま、時間だけは過ぎていき今年が終わった。
少し寂しい。
ただ勉強だけはあるのよ。一冊終わると新たなる一冊、それに意味はあるのでしょうか?誰か、勉強の神様を教えてください。
先が見えません。
手紙の返信は来ない。
そしてとうとうレオナルド王子様とマリネッセ様の婚約が、年明けに内々に発表された。公式には、卒業パーティーの時になるらしい。マリネッセ様の派閥に入っている私としては、面倒だなと思っていただけに大変嬉しい。
これでやっと色々丸く収まる。
ヒロインも幸せになる。攻略対象者も幸せ、悪役令嬢も処罰もない、オールハッピーエンド…
「リン、明日は買い物に行きましょう。マリネッセ様に何かプレゼントをしなきゃ」
「いいですねお嬢様。すぐに執事長に許可もらってきます」
街は、いつも通り活気があって面白い。
「お嬢様、書店も立ち寄っていいですか?」
「もちろんよ、リン。ロマンス小説の新刊?」
「はい、それに…いえなんでもありません」
ん?歯ぎれが悪いリンの話に引っかかってはいたが、まずはプレゼント!
「お嬢様、あちらに人集りが」
近づくと、ミランの雑貨店と書いてある。
「ここにミラン国のお店!不思議、絵姿を若い女の子達が買っているわ、リン」
「ミルフィーナ様!」
「カリナ様!」
まさかこんな場所で会うとは思わなかった。
「どうしたのですか?」
と聞けば、少し照れたように
「興行終了したサーカス団があまりにも素敵だったもので、私も絵姿を買いにきました」
「あれは、サーカス団の方達の絵姿なんですか。随分と人気があるのですね」
「はい!それはもう、去年の興行、私5回も見ましたから。パフォーマンスも最高でしたが、それは皆さん美しい男性ばかりで、光り輝いて情熱や感動がありました。終わった後もこうやって、余韻が残るほどで」
本当にこの店は、イケメングッズを買う女の子達ばかりだ。見たこともないぐらいの熱気が、あの店から出ているな。恐るべしミラン国。
カリナ様には別れを告げて別な店に行く。
「サーカス団って美しい男性がパフォーマンスするんですね」
とリンが言った。
それ!と同意だ。アリサさんが知ったら大変だ。
サーカス団って、確か歌にダンスに芝居と聞いたような気がする。
「リン、あのお店も知らないわ」
「私も初めてです、お嬢様、並びましょう」
と並んで買ったクレープなるもの、
「パンが薄くて、果実とこの甘いクリームはなんでしょう。最高に美味しいですね」
とリンが言えば、この屋台に果物を運んでいた商人達が、
「これが、ミラン国で今流行りのクレープですよ。若い女の子達から人気がありまして、去年からボルドート王国で店を構えたんですよ」
「えっ、またミラン国?」
と零してしまった。
不思議だ。行列の出来ている店はニ店ともミラン国。
私の呟きを聞いた商人が、
「いや、前は、あの細道の所で店もやっていたんですよ、こんな大通りに店が出るなんて凄いですよ、兄貴達は」
と言うと、
「こら、ダリル余計なこと言ってんじゃねぇ!」
と男達が気の良い感じのダリルという男を蹴り飛ばした。
軽い悲鳴が上がったものの男達はすぐにダリルを回収、どこかに連れて行った。
私は、あの細道を知っている。
ラーニャと行った惚れ薬の店の方角だ。『前は、店をやっていた』
あのお店潰れている。摘発されたはず、ミラン国の店だったの?
どういうこと?
惚れ薬=薬物
ここもミラン国、あっちもミラン国、偶然?たまたま?
襲われたパーティーは、確かにミラン国の姫様がいたのもたまたま、王宮に不審な輩が入りこめるかな?
私は、明らかに顔色が変わったと思う。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
リンが支えてくれる手をぎゅっと掴んだ。それと同時に首当たりに視線を感じる。
誰かに見られているかも。
ぎゅっと掴んだ手を離し無理にでも笑う。
「お嬢様?」
「リン、誰かに見られている?」
小声で言った。
リンは辺りを見回した。首を振る。
私は、リンに
「人の多い店に入りましょう。我が家の出入りの商人に屋敷で何か買うと言って一緒に帰りましょう」
と言えば、
「お嬢様!何が!」
と慌てた。
「今は、駄目よ。リン!笑って。真っ直ぐに大通りにあるダルン侯爵家の出入り業者の所へ」
小声で話すが、視線は刺さるままだ。距離はあるのか?大通りなことが救いだ。
考えたくない不安がぐるぐる回る。
ずっと引っかかっていたパーティー会場の馬車降り場なんて、どう考えても警備の兵はいるしすぐに捕まるのに、どうやって忍び込んだのか、中に手引きした者がいる、知らない人を何人も連れていても疑問を持たれない人…
でも、小さな店を潰したぐらいでミラン国の姫様が、一侯爵家を狙うかな?パーティーの時、姫様は全く私なんて気にもかけてなかった、やっぱり知らない?
「お嬢様、この先に日常品の商会があります。入りましょう」
「そうね」
「これはダルン侯爵令嬢様」
店主が出てきた。リンは、すぐに
「失礼します。店主、お嬢様が具合が悪くなりました。奥で休ませて頂けれないですか?それとここからは、奥で話しましょう」
と言った。
リンも気づいた、男二人が店内に入ってきた。
私は、奥に通され、様子を見るのは、店主だ。
「どうしようか、リン?堂々とすれば大丈夫だと思うけど?」
「お嬢様、時間をかければ向こうも人数や準備をされます。このお店の品物を運ぶ商人と共に屋敷に帰りましょう」
「リン、あなた、いつの間に立派になって!」
私は、リンから後光が見えた気がした。
「リン、帰れたわ。家よ。良かった」
「すぐに誘拐なんてしませんよ。どんな動きをするか見てたんでしょうね」
「リン、なんか警備隊の人?ってくらい発言がカッコいいわ」
「お嬢様、私、ロマンス小説だけじゃないんですよ、実は最近は、国盗り合戦や騎士武勇伝なんてのを読んでいまして。結構、その手の話詳しいです」
「確かにね、私もリンから借りた暗殺ファイターの一幕が出るんじゃないかとドキドキしたわ」
と言えば、
「実は、私もです。本の知識を活かして、馬車の上での戦闘や御者の鞭を手に入れて実践かと思いました」
「リン、あれ、やる気だったの?」
「もちろんですよ」
とまさか本の中の暗殺者の真似事をする気だったとは!?
『ヒョーガル王子様
お久しぶりでございます。ミルフィーナ・ダルンです。突然のお便り失礼します。
レオナルド王子様やアルフィン様から、お元気だと伺い、大変嬉しく思います。私が預かりましたヒョーガル王子の所有物、必要であれば、至急、王子殿下に頼みましてお送りいたします。
ヒョーガル王子様の益々の御健勝を願います。お忙しい中、読んでくださりありがとうございます。
所有物、必要でなければ、今後も預かりたく存じます。
隣国より、ヒョーガル王子様のお幸せを切に願い失礼いたします。』
めちゃくちゃ短い文になってしまった。
書きたい事色々あるけど、検閲が入るだろうし、あなたのことが好きです、あなたの国の事沢山勉強しています、なんて絶対にかけない。
重い、痛い、勘違い女。
ハァー
うん、結局話す事ってないよね。だって出かけたのだってピクニックのみだし。思い出ってたいしてなかったりする。
浅いのよ、関係が。
書きたいこと、気持ち悪いぐらい独りよがりの告白ぐらいになりそう。
もしかして好きって感情が勘違いかもしれない。少し自分の中で盛り上がった的な…
改めて共通点もないのにヒョーガル王子様の何が好きなのかしら?
顔、剣術、器用さ、勉強熱心なとこ、負けず嫌い、有言実行しちゃって、なんだろうな。
結局私も顔か、あの瞳は反則だ。赤かオレンジか必ず確認したくなる。見たくなる。
そんなの好きの理由になるのだろうか?恋の理由になるのだろうか?
アリサさんに聞けば、本能とか言ってくれそう。そういうのが結局答えなのに、グダグダ考えるのがヒロイン外女だな。
書いた手紙を執事長に渡した。送って欲しいと一言添えて。
返事も期待していない。
ただ何もしなければ、私の時が止まったままだからね、これは全部私のため。
学校側から次の生徒会役員の指名がきたが断った。今努力していることが認められたのは、正直嬉しい。張り切って動く私の姿が見えなかったのでお断りした。レオナ様も兄様も
「今は、そんな余裕ないでしょう」
と言われたが、いや、余裕というより人のための偽善をする心の余裕がないのよ。
結局自分を中心にしか考えられないということだ。
何もないまま、時間だけは過ぎていき今年が終わった。
少し寂しい。
ただ勉強だけはあるのよ。一冊終わると新たなる一冊、それに意味はあるのでしょうか?誰か、勉強の神様を教えてください。
先が見えません。
手紙の返信は来ない。
そしてとうとうレオナルド王子様とマリネッセ様の婚約が、年明けに内々に発表された。公式には、卒業パーティーの時になるらしい。マリネッセ様の派閥に入っている私としては、面倒だなと思っていただけに大変嬉しい。
これでやっと色々丸く収まる。
ヒロインも幸せになる。攻略対象者も幸せ、悪役令嬢も処罰もない、オールハッピーエンド…
「リン、明日は買い物に行きましょう。マリネッセ様に何かプレゼントをしなきゃ」
「いいですねお嬢様。すぐに執事長に許可もらってきます」
街は、いつも通り活気があって面白い。
「お嬢様、書店も立ち寄っていいですか?」
「もちろんよ、リン。ロマンス小説の新刊?」
「はい、それに…いえなんでもありません」
ん?歯ぎれが悪いリンの話に引っかかってはいたが、まずはプレゼント!
「お嬢様、あちらに人集りが」
近づくと、ミランの雑貨店と書いてある。
「ここにミラン国のお店!不思議、絵姿を若い女の子達が買っているわ、リン」
「ミルフィーナ様!」
「カリナ様!」
まさかこんな場所で会うとは思わなかった。
「どうしたのですか?」
と聞けば、少し照れたように
「興行終了したサーカス団があまりにも素敵だったもので、私も絵姿を買いにきました」
「あれは、サーカス団の方達の絵姿なんですか。随分と人気があるのですね」
「はい!それはもう、去年の興行、私5回も見ましたから。パフォーマンスも最高でしたが、それは皆さん美しい男性ばかりで、光り輝いて情熱や感動がありました。終わった後もこうやって、余韻が残るほどで」
本当にこの店は、イケメングッズを買う女の子達ばかりだ。見たこともないぐらいの熱気が、あの店から出ているな。恐るべしミラン国。
カリナ様には別れを告げて別な店に行く。
「サーカス団って美しい男性がパフォーマンスするんですね」
とリンが言った。
それ!と同意だ。アリサさんが知ったら大変だ。
サーカス団って、確か歌にダンスに芝居と聞いたような気がする。
「リン、あのお店も知らないわ」
「私も初めてです、お嬢様、並びましょう」
と並んで買ったクレープなるもの、
「パンが薄くて、果実とこの甘いクリームはなんでしょう。最高に美味しいですね」
とリンが言えば、この屋台に果物を運んでいた商人達が、
「これが、ミラン国で今流行りのクレープですよ。若い女の子達から人気がありまして、去年からボルドート王国で店を構えたんですよ」
「えっ、またミラン国?」
と零してしまった。
不思議だ。行列の出来ている店はニ店ともミラン国。
私の呟きを聞いた商人が、
「いや、前は、あの細道の所で店もやっていたんですよ、こんな大通りに店が出るなんて凄いですよ、兄貴達は」
と言うと、
「こら、ダリル余計なこと言ってんじゃねぇ!」
と男達が気の良い感じのダリルという男を蹴り飛ばした。
軽い悲鳴が上がったものの男達はすぐにダリルを回収、どこかに連れて行った。
私は、あの細道を知っている。
ラーニャと行った惚れ薬の店の方角だ。『前は、店をやっていた』
あのお店潰れている。摘発されたはず、ミラン国の店だったの?
どういうこと?
惚れ薬=薬物
ここもミラン国、あっちもミラン国、偶然?たまたま?
襲われたパーティーは、確かにミラン国の姫様がいたのもたまたま、王宮に不審な輩が入りこめるかな?
私は、明らかに顔色が変わったと思う。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
リンが支えてくれる手をぎゅっと掴んだ。それと同時に首当たりに視線を感じる。
誰かに見られているかも。
ぎゅっと掴んだ手を離し無理にでも笑う。
「お嬢様?」
「リン、誰かに見られている?」
小声で言った。
リンは辺りを見回した。首を振る。
私は、リンに
「人の多い店に入りましょう。我が家の出入りの商人に屋敷で何か買うと言って一緒に帰りましょう」
と言えば、
「お嬢様!何が!」
と慌てた。
「今は、駄目よ。リン!笑って。真っ直ぐに大通りにあるダルン侯爵家の出入り業者の所へ」
小声で話すが、視線は刺さるままだ。距離はあるのか?大通りなことが救いだ。
考えたくない不安がぐるぐる回る。
ずっと引っかかっていたパーティー会場の馬車降り場なんて、どう考えても警備の兵はいるしすぐに捕まるのに、どうやって忍び込んだのか、中に手引きした者がいる、知らない人を何人も連れていても疑問を持たれない人…
でも、小さな店を潰したぐらいでミラン国の姫様が、一侯爵家を狙うかな?パーティーの時、姫様は全く私なんて気にもかけてなかった、やっぱり知らない?
「お嬢様、この先に日常品の商会があります。入りましょう」
「そうね」
「これはダルン侯爵令嬢様」
店主が出てきた。リンは、すぐに
「失礼します。店主、お嬢様が具合が悪くなりました。奥で休ませて頂けれないですか?それとここからは、奥で話しましょう」
と言った。
リンも気づいた、男二人が店内に入ってきた。
私は、奥に通され、様子を見るのは、店主だ。
「どうしようか、リン?堂々とすれば大丈夫だと思うけど?」
「お嬢様、時間をかければ向こうも人数や準備をされます。このお店の品物を運ぶ商人と共に屋敷に帰りましょう」
「リン、あなた、いつの間に立派になって!」
私は、リンから後光が見えた気がした。
「リン、帰れたわ。家よ。良かった」
「すぐに誘拐なんてしませんよ。どんな動きをするか見てたんでしょうね」
「リン、なんか警備隊の人?ってくらい発言がカッコいいわ」
「お嬢様、私、ロマンス小説だけじゃないんですよ、実は最近は、国盗り合戦や騎士武勇伝なんてのを読んでいまして。結構、その手の話詳しいです」
「確かにね、私もリンから借りた暗殺ファイターの一幕が出るんじゃないかとドキドキしたわ」
と言えば、
「実は、私もです。本の知識を活かして、馬車の上での戦闘や御者の鞭を手に入れて実践かと思いました」
「リン、あれ、やる気だったの?」
「もちろんですよ」
とまさか本の中の暗殺者の真似事をする気だったとは!?
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