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50 悪役令嬢は失恋中
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「ねぇ、リン、手紙来ている?」
「お嬢様、まだですね」
「そう」
アルフィン様から話を聞いてから一か月以上経った。まぁ、ここら辺は想定内だわ。国の立て直しがあるだろうし、一国の王子忙しいのだろう。
絶対無事に決まっている。
相変わらず勉強をしながら、トモホーク王国の情報をお父様に集めてもらう。
一か月以上過ぎれば、情報は入って来るらしく、お父様も手に入れた情報を話してくれた。
本当にアルフィン様の言う通り、王弟は捕らえられたそうで、現在元王妃(ヒョーガル王子のお母様)が執政をしているそうだ。
「数日前に…、トモホーク王国で夜会を、夏頃開く予定でボルドート王国にも世話になったので、是非もてなしをしたいと招待状を持参した使者が来たそうだ…」
とお父様は、ゆっくりだが、ありのまま知っている事を話した。真っ直ぐに見ながら、私の顔色を気にしている。
「そうですか、国が立ち直りつつあるのは、大変素晴らしいことですね。レオナルド王子様が向かうのでしょうか?親交もありますしね」
そういうことだ。
「ミルフィーナ…」
私は出番ではない。
「王族の証など無くても、確かに王妃様ならお母様だし、わかって当然ですね。無事ならいいです。ペンダント取りに来なさそうですね。使者の方も取りに来ないですし、必要なかったのですね。残念です。会いたかったのですが」
お父様を困らせるな。
「ミルフィーナ…」
感情を出すな。飲み込め。嘘をつけ!
「お父様。すみません今日、この辺りで失礼します」
勝手に話を切り上げた。
「ミルフィーナ!」
「心配しないでください。大丈夫です。生きているとわかって安心しています。国に着いたらすぐ殺されてしまうのではないかと本気で思っていたのですよ。それを思えば、ペンダントなんて命に関わることに比べたら、必要ないですよ」
と言って、執務室を出た。
「お嬢様…」
「あぁ、リン、大丈夫よ。気にしないで」
「はい、今日は、少し甘いお茶を入れて下がらせてもらいますね」
「ありがとう。助かるわ」
湯気が立つティーカップに口をつけた。
「ラーニャに手紙を書こうかな」
可愛いレターセットを出す。
「ラーニャは返事くれるよねー」
「大丈夫」
「大丈夫」
湯気がなくなったティーカップにポタポタと落ちてしまい、あまりにもみっともなくて笑ってしまう。
勘違い甚だしい。
今日は、外に飛び出したい気分だ。
明かりを消して、想像した。船に乗ってミラン国に行く所、馬に乗ってトモホーク王国に行く所、歩いて荘園の薔薇を見に行っている所。
「屋台もいいわね」
美味しいものを食べている所、可愛い小物を買っている所。
「牛の匂いもたまらない臭さがあっていいのよね」
領地で草原を歩いて、糞を踏むところまで…
想像して、想像しまくる。
脳みそが疲れて眠くなるまで。
あんなこと、そんなこと、
あっと言う間に朝が来ることを信じている。
「おはよう、リン」
「お嬢様、おはようございます」
家族も私を気遣っている。それって逆にキツいんだけどね。
「おはようございます」
挨拶の後、いつも通り食事をして、学校に行く。
アルフィン様が、来たらキツいなと思っていたら、兄様が止めてくれたのか、教室には来なかった。
三日もすれば、そんな気遣いもなくなる。みんな言いたい言葉を飲み込みながら、今日も一日過ごす。
最近一日が長く感じる。
仕方ない、勉強でもしよう。
アリサさんの話を聞いて、レオナ様の話を聞いて、リンの話を聞いて、毎日は回っている。
多分、何の事件もなく私の周りは順調に世界が動いている。
オート機能オンで願います。
机の上には可愛い手紙。
ラーニャだ。
妊娠中だと教えてくれた。
幸せそうだ、何より。
領地に戻ったら、何をプレゼントすれば良いかな。赤ちゃんの物?
みんなに相談しなきゃ。話題が出来て正直助かったわ。
みんな気を使うから、私から話題出しすることが多くて、ネタ切れだったし、やっぱりラーニャだわ。
更に一か月も経てば、まぁまぁ仕方ないよね、という雰囲気になってきたと思う。私自身そう思っているし、何勘違いしているんだよ!と誰かに言って欲しいけど、私の周りにそんなチャレンジャーはいない。たまに恋話っていう、爆薬を投げられるけど、それもお年頃だから。
大丈夫、笑える。嘘なんて平気で私はつける。私悪役令嬢ですから、恋愛脳じゃないので、全然平気ですよ。
家では、手紙の確認もないし、トモホーク王国の名前も出ない。
「ミルフィーナ様、サーカスが来るんですって。絶対に見に行った方がいいですよ。去年素晴らしかったのですから!」
と休み時間に現れるお友達。
「カリナ様、サーカスってミラン国の?」
「ええ、懐かしいですわね。ちょうどレオナルド王子様の婚約者決めのパーティー」
「そうですね、ラザリーさんの髪型の生け花。話題になりましたもの」
懐かしい。
まだサーカス話で令嬢達は盛り上がっているのを横で聞いていた。
一年でこんな懐かしくなるなら、忘れられても当然だな。
時間が経てば、余計に勘違いが痛くて、思い出しては恥ずかしくてクッションを叩いている。
早く思い出すこともやめないといけないな。痛すぎる。
ペンダント捨ててしまおうか?
でも魔法陣がある貴重品。どうにか無いものにするか忘れる方法があるだろうか?
あれから二か月以上経った。
レオナルド王子様とアルフィン様がトモホーク王国に向けて旅立ったらしい。夏休みに入る前の学校はテスト中で、つまらないから小さな事も噂で流れる。
「あぁ、ペンダント持っていってもらえば良かったな」
と帰りの馬車の中で言うと、兄様が、
「行かなくて良かったのかい?頼んだら連れて行ってくれたのではないか?」
「やだ、兄様。令嬢一人他国に連れて行くって税金凄くかかるのよ。メイドも護衛もあるし、だから駄目ですよ。なんと言っても招待状ありませんから」
大丈夫、大丈夫、兄様。
そんな悲しそうな悔しそうな顔しないで。
アリサさんが来てから、兄様は気持ちが顔に出るようになってて、貴族として心配。レオナ様がいるから大丈夫か。
「早くテスト終わらないかな」
夏休みに入って、家庭教師の先生が来た。お父様、断ってくれれば良かったのに。
突然のキャンセルは困るか!?
最近の読書量のおかげでいろんな雑談も理解出来るようになった。
「隣国トモホーク王国は、大規模なパーティーをしたそうですよ。民衆も多いに盛り上がるでしょうね」
と先生が雑談で言う。
夜会、終わったんだ。
「そうですね、経済も安定し、国政も安定すれば、平和になりますね。ボルドート王国とも取引が豊富になれば、商人も活気が出ますね。先生は、ミラン国のサーカスってご覧になったことありますか?あちらの興行利益も大変な金額だと聞きました。」
「ええ、チケット代が高額ですからね。しかし素晴らしく、楽しい時間を過ごせますよ。ミルフィーナ様も是非一度見てみるといいですね。私は、見目麗しい人達の華麗な踊りと歌のが…」
先生は楽しそうにサーカスを、話してくれる。でも全然耳には残らない。
言葉が通り過ぎるってこのことだ。
本当はね、夜窓を開けたら、いるんじゃないかって、あれから毎日想像していたの。
意味なく窓を開けたりね。
悲劇のヒロインの役割が来たけど、結局はヒロインのラッキーパワーで招待状が届くとかね。
やっぱり夢、見ちゃうのよね~。
なんか、ここまでやっているんだし的なの全面に押し出して。
乙女ゲームの中で、私は、ヒロインじゃない。悪役令嬢ならこのあたりが物語的に、『あー当然だよね、あの子悪役令嬢だしね』で落ち着いたし終わりかな。
ハアー
夜会終わったのか。
何事もなくて良かったね。
もう窓を開ける必要もないか。
うん、良かった。
「お嬢様、まだですね」
「そう」
アルフィン様から話を聞いてから一か月以上経った。まぁ、ここら辺は想定内だわ。国の立て直しがあるだろうし、一国の王子忙しいのだろう。
絶対無事に決まっている。
相変わらず勉強をしながら、トモホーク王国の情報をお父様に集めてもらう。
一か月以上過ぎれば、情報は入って来るらしく、お父様も手に入れた情報を話してくれた。
本当にアルフィン様の言う通り、王弟は捕らえられたそうで、現在元王妃(ヒョーガル王子のお母様)が執政をしているそうだ。
「数日前に…、トモホーク王国で夜会を、夏頃開く予定でボルドート王国にも世話になったので、是非もてなしをしたいと招待状を持参した使者が来たそうだ…」
とお父様は、ゆっくりだが、ありのまま知っている事を話した。真っ直ぐに見ながら、私の顔色を気にしている。
「そうですか、国が立ち直りつつあるのは、大変素晴らしいことですね。レオナルド王子様が向かうのでしょうか?親交もありますしね」
そういうことだ。
「ミルフィーナ…」
私は出番ではない。
「王族の証など無くても、確かに王妃様ならお母様だし、わかって当然ですね。無事ならいいです。ペンダント取りに来なさそうですね。使者の方も取りに来ないですし、必要なかったのですね。残念です。会いたかったのですが」
お父様を困らせるな。
「ミルフィーナ…」
感情を出すな。飲み込め。嘘をつけ!
「お父様。すみません今日、この辺りで失礼します」
勝手に話を切り上げた。
「ミルフィーナ!」
「心配しないでください。大丈夫です。生きているとわかって安心しています。国に着いたらすぐ殺されてしまうのではないかと本気で思っていたのですよ。それを思えば、ペンダントなんて命に関わることに比べたら、必要ないですよ」
と言って、執務室を出た。
「お嬢様…」
「あぁ、リン、大丈夫よ。気にしないで」
「はい、今日は、少し甘いお茶を入れて下がらせてもらいますね」
「ありがとう。助かるわ」
湯気が立つティーカップに口をつけた。
「ラーニャに手紙を書こうかな」
可愛いレターセットを出す。
「ラーニャは返事くれるよねー」
「大丈夫」
「大丈夫」
湯気がなくなったティーカップにポタポタと落ちてしまい、あまりにもみっともなくて笑ってしまう。
勘違い甚だしい。
今日は、外に飛び出したい気分だ。
明かりを消して、想像した。船に乗ってミラン国に行く所、馬に乗ってトモホーク王国に行く所、歩いて荘園の薔薇を見に行っている所。
「屋台もいいわね」
美味しいものを食べている所、可愛い小物を買っている所。
「牛の匂いもたまらない臭さがあっていいのよね」
領地で草原を歩いて、糞を踏むところまで…
想像して、想像しまくる。
脳みそが疲れて眠くなるまで。
あんなこと、そんなこと、
あっと言う間に朝が来ることを信じている。
「おはよう、リン」
「お嬢様、おはようございます」
家族も私を気遣っている。それって逆にキツいんだけどね。
「おはようございます」
挨拶の後、いつも通り食事をして、学校に行く。
アルフィン様が、来たらキツいなと思っていたら、兄様が止めてくれたのか、教室には来なかった。
三日もすれば、そんな気遣いもなくなる。みんな言いたい言葉を飲み込みながら、今日も一日過ごす。
最近一日が長く感じる。
仕方ない、勉強でもしよう。
アリサさんの話を聞いて、レオナ様の話を聞いて、リンの話を聞いて、毎日は回っている。
多分、何の事件もなく私の周りは順調に世界が動いている。
オート機能オンで願います。
机の上には可愛い手紙。
ラーニャだ。
妊娠中だと教えてくれた。
幸せそうだ、何より。
領地に戻ったら、何をプレゼントすれば良いかな。赤ちゃんの物?
みんなに相談しなきゃ。話題が出来て正直助かったわ。
みんな気を使うから、私から話題出しすることが多くて、ネタ切れだったし、やっぱりラーニャだわ。
更に一か月も経てば、まぁまぁ仕方ないよね、という雰囲気になってきたと思う。私自身そう思っているし、何勘違いしているんだよ!と誰かに言って欲しいけど、私の周りにそんなチャレンジャーはいない。たまに恋話っていう、爆薬を投げられるけど、それもお年頃だから。
大丈夫、笑える。嘘なんて平気で私はつける。私悪役令嬢ですから、恋愛脳じゃないので、全然平気ですよ。
家では、手紙の確認もないし、トモホーク王国の名前も出ない。
「ミルフィーナ様、サーカスが来るんですって。絶対に見に行った方がいいですよ。去年素晴らしかったのですから!」
と休み時間に現れるお友達。
「カリナ様、サーカスってミラン国の?」
「ええ、懐かしいですわね。ちょうどレオナルド王子様の婚約者決めのパーティー」
「そうですね、ラザリーさんの髪型の生け花。話題になりましたもの」
懐かしい。
まだサーカス話で令嬢達は盛り上がっているのを横で聞いていた。
一年でこんな懐かしくなるなら、忘れられても当然だな。
時間が経てば、余計に勘違いが痛くて、思い出しては恥ずかしくてクッションを叩いている。
早く思い出すこともやめないといけないな。痛すぎる。
ペンダント捨ててしまおうか?
でも魔法陣がある貴重品。どうにか無いものにするか忘れる方法があるだろうか?
あれから二か月以上経った。
レオナルド王子様とアルフィン様がトモホーク王国に向けて旅立ったらしい。夏休みに入る前の学校はテスト中で、つまらないから小さな事も噂で流れる。
「あぁ、ペンダント持っていってもらえば良かったな」
と帰りの馬車の中で言うと、兄様が、
「行かなくて良かったのかい?頼んだら連れて行ってくれたのではないか?」
「やだ、兄様。令嬢一人他国に連れて行くって税金凄くかかるのよ。メイドも護衛もあるし、だから駄目ですよ。なんと言っても招待状ありませんから」
大丈夫、大丈夫、兄様。
そんな悲しそうな悔しそうな顔しないで。
アリサさんが来てから、兄様は気持ちが顔に出るようになってて、貴族として心配。レオナ様がいるから大丈夫か。
「早くテスト終わらないかな」
夏休みに入って、家庭教師の先生が来た。お父様、断ってくれれば良かったのに。
突然のキャンセルは困るか!?
最近の読書量のおかげでいろんな雑談も理解出来るようになった。
「隣国トモホーク王国は、大規模なパーティーをしたそうですよ。民衆も多いに盛り上がるでしょうね」
と先生が雑談で言う。
夜会、終わったんだ。
「そうですね、経済も安定し、国政も安定すれば、平和になりますね。ボルドート王国とも取引が豊富になれば、商人も活気が出ますね。先生は、ミラン国のサーカスってご覧になったことありますか?あちらの興行利益も大変な金額だと聞きました。」
「ええ、チケット代が高額ですからね。しかし素晴らしく、楽しい時間を過ごせますよ。ミルフィーナ様も是非一度見てみるといいですね。私は、見目麗しい人達の華麗な踊りと歌のが…」
先生は楽しそうにサーカスを、話してくれる。でも全然耳には残らない。
言葉が通り過ぎるってこのことだ。
本当はね、夜窓を開けたら、いるんじゃないかって、あれから毎日想像していたの。
意味なく窓を開けたりね。
悲劇のヒロインの役割が来たけど、結局はヒロインのラッキーパワーで招待状が届くとかね。
やっぱり夢、見ちゃうのよね~。
なんか、ここまでやっているんだし的なの全面に押し出して。
乙女ゲームの中で、私は、ヒロインじゃない。悪役令嬢ならこのあたりが物語的に、『あー当然だよね、あの子悪役令嬢だしね』で落ち着いたし終わりかな。
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