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21 悪役令嬢は王子1と話し合う

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アルフレッド公爵様が我が家に来た後、黒豹(盗賊)のヒョウ(使用人)さんがヒョーガル王子として我が家の客室に移った。

兄様はびっくりしていた。まず、ヒョウという使用人さえ、何となくアリサが騒いでいたかな程度(あんなに使用人との垣根とかアリサさんが騒いでいた話や問題になった事を全無視していた事実に私は、驚愕)で、まさかトモホーク国の王子とはと空いた口が塞がらない状態だ。

私は兄様は本当に残念な人だと思う。
真面目なんだけどね。
侯爵令息で成績も良い、穏やかなイケメンだ。派手でもなく、人当たりも良い、だけど圧倒的に思慮深さが欠けている。多分レオナルド王子の側近に選ばれていないのはそういうとこだと思う。

何故アリサさんがあんなに一使用人に必死になったか、男好き(イケメン)アンテナが働いたに決まっているのよ。恐るべしヒロイン。
(これは、悪役令嬢なりの解釈です)

まぁ、お兄様の最初の挨拶は、意味がわからなかった。

「はじめまして、エルフィン・ダルンと申します。トモホーク王国の王子様が何故我が家にいるのかはわかりませんが、ゆっくりお寛ぎ下さい。私のことはエルフィンと呼んで頂ければ、すぐに参上します」

後から考えて、学校で、レオナルド王子様がみんなにやらせているのかとも考えた。俺様王子か、いや二回程王宮の王子主催の茶会に出席したけど、そんな感じはしなかった。ザ・王子という感じだった。

私に挨拶が回ってきたときに、
「ミルフィーナです。王子殿下の記憶も戻っておりませんから、違和感しかないと思いますが、お兄様の言う通り、お寛ぎ下さい」
と挨拶した。
ヒョーガル王子様から、
「後で話がある」
と言われてドキンとしたが、居心地が悪いのだろうか、視線も表情も見えない。
食事のマナーも普通にいや、慣れた所作で美しい。お父様も流石王子と納得しているようだ。

「だから言ったじゃない」はもう言わない。神の遣いなんて信仰者的な持ち上げられ方したら、大変だから、みんなの記憶の片隅に消えて言って欲しい。


ヒョーガル王子が話したいと言えば、もちろん応接室が準備された。
「ラーニャ、お茶が美味しい!」
と言えば、
「ダルン侯爵家で一番高い茶葉でございます」
ふふっ
「はあー、安心したよ、お前達は普通に接してくれて、息が詰まるかと思った。平民の俺が王子なんてないだろう」
と言われて、私は、
「確かに二年間は、平民の記憶しか無いと思いますが…でも所作を見る限り、美しいです。その前の記憶はやはり関係ありますか?」
と聞いた。
私は、結構重要なことを聞いたと思っている。これによってアリサさんを呼び戻さないといけないかもしれない。

「凄い考えた。王子の記憶はないんだけど、書物室にあった本がわかるんだよ、意味が!不思議だろう。平民は勉強は中々出来る環境じゃない。なのに、歴史も政治も経済も農業や戦線術、理解出来るんだ。その理由は一つだ。俺は勉強したことがある」

興奮したのか髪の毛が揺れる。
前髪から見える目も表情も晴れやかで、何か前に進んでいく力強さのようなものが見えた。

嬉しいのかな?

「御立派ですね。勉強したことが記憶になくとも理解出来るなんて話。私には耳が痛いですよ」
と言えば、ラーニャが後ろから、
「お嬢様は、学ぶ意欲も集中力もありませんから」
と言った。
何がおかしいのかヒョーガル王子はゲラゲラ笑った。
「貴族ってもっと傲慢で自分勝手で平民をゴミにしか思ってないかと思っていた」

どうなんだろう?

「ヒョーガル王子様、せっかくなら学校に行ってみたらどうですか?王子としてではなく、侯爵家として。屋敷にいてもつまらないですし、学ぶことで思い出すかも知れませんし、どうせ兄様が通っているのですから馬車も相乗りでいいじゃないですか」
と提案すれば、表情のわからない前髪が揺れた。
困っている?

「お金のことならご心配なく、ちょうど一人分学費がありますので大丈夫ですし、学校に行くことによってヒョーガル王子様がトモホーク王国に帰国しても経歴が出来ますから良い提案だと思います」

「うわー、アリサ様可哀想、もっと言い方がありますよ」
と壁から聞こえる。
ラーニャはすぐに口を出す、でも確かに今のは、意地悪な言葉だな。

何がおかしいのかヒョーガル王子は、ラーニャの一言に笑いボタンを押されているようだ。
にこやかな雰囲気を出した。
オレンジ色の瞳が私を見た。
「こちらでお世話になった分は、事業を起こすなり仕官するなり、金は返す」
と言った。

ノー、NO、know~
こっち見ないで!イケメン出さないで~
性格悪でいて欲しい!

ヒョーガル王子の方は向かずに、
「執事長を呼んで、お父様に連絡と学校の準備をお願いね。大事なことがあった。髪の毛切らないといけないわ」
と言えば、メイド長が動いた。

呼吸を整え、動揺を飲み込んだ。
もう顔は見ない!見てはいけない!

窓の方を見ながら、
「まだ15歳くらいなんだから、周りに甘えれば何とかなりますよ」
とこっそり言えば、ヒョーガル王子は、
「それは貴族の考えだな!」
と言った。
「そうですか、意識してませんでした」
「さっきのトモホーク王国に戻る時に経歴と言ったが、盗賊団のことを塗り替える為に必要だと言いたいのか」
「それは、ヒョーガル様の面子の問題ですからね。今、トモホーク王国の情勢はどうなっているんですか?」
「この間来たアルフレッド公爵が言うには、王弟派が有利と言われたな。今連絡を取って、もし王弟派だった場合、殺される可能性もあるとだから、あちらの貴族に連絡を取るのは情報の詮索が厳しいから、王宮を通すと言っていた。至極まっとうな意見だと思う」

そうだなぁ、今は難しい立場だものね、ヒョーガル王子は。国王派にとっては勢いがつく存在でも王弟派には邪魔な存在。

「トモホーク王国の内情は大変そうだけど、ヒョーガル王子様が学校に行ける期間も短そうですね。勉強が好きならなおさら、今の内、本当にある時間を有効利用しなければいけませんよ。お金なんて、農業改革や流行商品生み出せば返せますし、お兄様が犬のように使って下さいと申しておりました。有効利用するべきです」

「お嬢様、エルフィン様はそのようなこと一言も言っておりませんでしたよ」
とラーニャから威嚇射撃が飛んで来た。

まぁ、目の前の黒豹さんはゲラゲラ笑っているから、ラーニャもそれ以上は言わない。肩をあげ少し困った顔をしている程度、そして応接室の話しあいは終わった。


ヒョーガルの客室

いいんだろうか?学校なんて行ってしまって、周りが王子と呼び始めた。俺は、本当にヒョーガルなのか?記憶がない。
ただ本を読んで気づいたことは、『知っている』だ。記憶がないのに、本の意味や情報が理解出来る。
何故、は簡単だ。きっと読んだことがあるから。
こんな沢山の本、貴族以外大商会ぐらいじゃなければ買わないだろう。
俺のペンダントは、守りの魔法陣が描いてあるとアルフレッド公爵が言った。
こんな小さい物に組み込んであるものは、王族しか持てないと言った。

周りの反応が暗転するかのように変わった。
でもそんな中、一人だけ変わらない。ミルフィーナ。
不思議だ。盗賊団にいた俺を王子様がこんなとこにいたら、国際問題になるとか言って無理やり、侯爵家に連れて来た。料理人の下働きだけど。
あいつは、使用人扱いで申し訳ないと謝った。

『始めから、俺がトモホーク王国のヒョーガル王子だと知っていた』

未来視、ミルフィーナは、予知夢と言ったが、これは特別な力じゃないか。

ミルフィーナのことを考えれば、答えには辿りつかない。そうだと決めつけていた者に、どっちかなぁなんて選択肢は、存在していないのだから。

今は、時間があるのだから歳相応のことをしろとあいつは言う。
たまにあんな子供が達観しているというか、俺より歳上じゃないかと思う。

あ~、
「良いんだろうか、そんな贅沢。もし俺が、ただの盗賊で平民で周りがみんなガッカリして、俺を嘘つきと責めたてたら」
とベッドでうつ伏せになって言っていると、

「大丈夫ですよ、ミルフィーナお嬢様は責めたりしません。それにお金を稼ぐアイデアも言われてたじゃありませんか?」
とラーニャというメイドがいつの間にか部屋にいた。
俺は、盗賊をしていたから気配察知はかなり優れているのだが?
このメイドは異常だ。

あー、ミルフィーナと仲が良いメイドってだけじゃないのか?護衛も兼ねているようだ。

「全く、そんな心配しなくてもお嬢様の予知夢は絶対ですから安心してください。全く疑ってないでしょうミルフィーナ様は!」

と言われ、頷く。
このメイドちょっと怖っ。

でも俺は、この家に来れて良かった。光って見える世界に出た。
言われた通り、もうすでに気持ちが昂ぶっている。
農業改革か、色々調べてみようと思う。
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