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7 ヒロインの攻略現場を見学中

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マリネッセ様が、
「セオデリック、ここにいる方達は、今年入学する方が多いの。あなたも同学年で私の侍従をしてもらうのだから顔を覚えてもらって」
と声がした。
マリネッセ様が檄を飛ばし、少し弱々しいセオデリック様をテーブルごとに回らしている。
しかしその弱々しい所が、可愛い顔立ちのセオデリック様への庇護欲を増幅させる。


たぶんここだろうな。好感度25%に上げるイベント。さぁ選択肢はどれ!
という気持ちになっていた。この場にいる事情を知るメンバーは固唾をのんで見ている。

「あ、あの~、私セオデリック・レスターと申します。マリネッセ様の学校内では侍従をやりますのでお願いします」
と言った。
ここでの意味を取り違えてはいけない。彼は使用人ではない。所謂上位貴族の側近という意味だ。
もちろん、もうじきマリネッセ様はレオナルド王子様の婚約者になるだろうと噂されている公爵令嬢に何かあったら大変だ。そのために今回、派閥よろしくねのお茶会が組まれているのだから。

アリサさんは、狙った獲物が来たかのようなギラッとした目で隣のテーブルに挨拶に来ていたセオデリック様を見定めている。
これに気づいているのは、上位貴族だろう。あからさまに見ている。扇子で口元も隠していないから、余計下品な行為だ。

アリサさんのテーブルにセオデリック様が回ってきた途端、アリサさんはセオデリック様の手を握った。触れるではなくて。
突然の出来事。
驚いた。
注目していた知っている者達はまさかの行動に驚いた。
令嬢としてありえない。婚約者でもない、今日初めて会った男性。とんでもなく破廉恥だからだ。
「嘘っ」
とレオナ様が声を漏らした。
もちろん兄として馬車内で、令嬢令息の決まり事というか普通の話はしたはず。

なのに。

「セオデリック様、私も今年入学予定なのです。ちょうどお母様の再婚で侯爵家に来たのですが、中々上手くいかなくて、ずっと子爵家の居候みたいな扱いだったので、こんな風な貴族のお茶会に慣れてなくて、いろいろ教えてくださいね」
と最大限の笑顔を向けた。
セオデリック様がおどおどしている。こんな令嬢初めてに決まっている。構わず、ニコニコとセオデリック様を褒めちぎるアリサさん。
離さない手にまるで仲良しこよしでいきましょうと誘っているみたいだ。
どこの娼婦だよと思いながら、お父様がいるだろう方向を確認すれば、頭を抱えていた。

わかってくれたかい、父様よ。
私は絶対この子の面倒はみない。兄様もおでこに手を当てている。レオナ様も嫌な顔をしている。
一番驚いたのはマリネッセ様のお顔。驚き?いや、それとも違うような…
何か怒りが出ているような。
目が怖っ!

「まぁこんな感じだったわ、ラーニャ」
とラーニャはメモを取りながら聞いている。
「何故メモをとるの?」
「いや、メイド達みんなで、どうなったか知りたくて、絶対聞き漏らすなと固く言い付けられてまして、で、お嬢様これからどうなるんですか?」
「さぁ、検討がつかないわ、お父様が決める事ですもの」

私としては同じ学校に通いたくないとは伝えてある。それをどう捉えてくれるか。
お兄様もお父様に報告があると執務室に行ってしまった。
乙女ゲーム通りになるのかどうか。私も途中まではやったが…
とにかく面白くなかった。このアリサばかり得をする世界、何が面白いのかわからない。ログインボーナスのガチャもアリサの衣装やアクセサリー。
そう言えば、一度だけレアアイテムが出たのは、街の骨董品店。

「お嬢様、大丈夫ですか?ぼぉーとして天に召されたかと思いましたよ」
「失礼な。今度一緒に街に行ってくれる?確かめたいことができたわ」
と言えば、ラーニャは、すぐに何を、食べようかと考えている。
「全く」



一方、執務室では、エルフィンが今日のお茶会の話をしていて、父は頭を抱えている。
「大変な娘を養女にしてしまった。世間体もあるし、離婚は出来ない。どうしようか」
エルフィンは、
「ミルフィーナに面倒を見せれば良いのでは!」
と軽く言った。こいつは何も反省していないと呆れる父は、
「馬鹿者。ミルフィーナは面倒がかかることを予測して同じ学校には、通いたくないと言ったのであろうが、エルフィン今言った台詞をミルフィーナの前で言ったらお前は、大変な事になるぞ。女性は怒らしたら、まず黙る。ずっと無視される。そのあとチクチクこれでもかというほど嫌味の針を刺す」

無言からの想像した。レオナの表情と言葉のチグハグ。
「えっ、絶対言いません。父様。レオナが言ったんですが、婚約者を見つけた方が良いのではないかと。そうですよ、相手に任せれば良い!礼儀がなっていないから其方に向かわせ花嫁修行を早くからさせれば良いんじゃないかな」

「エルフィン、でかした。それだ!まず、我が家、侯爵令嬢としての礼儀作法ではなく、結婚相手先の家に修行させればいいのだ。素晴らしい。早く見つけよう。まだ13歳、引くて数多だ」
「父様、事情はきちんと話さないと後々面倒になりますからね。女性は怖いですから、相手先の夫人にはしっかりと、言わないと」
「わかっておる」

しかし執務室は明るかった。一つ問題が片付いたと思ったから。



「ねぇ、サラ。今日の公爵家のお茶会もお庭もお屋敷も凄かったの。あんなところで暮らしたらお姫様だわ。本当に素敵だったわ。学校に行ったら、あんな大きなお城みたいな家の友達出来るかしら?ふふふっ、あの別宅とは比べ物にもならないわ」
とアリサが言えば、サラは
「お嬢様、ミルフィーナ様に報告しなくてよろしいのですか?」
と聞くと、
「何故?ミルフィーナ姉様に公爵家の事を教えなきゃいけないの?」
「もともとミルフィーナ様がマリネッセ様に誘われたお茶会じゃありませんか?」
と聞くと、
「そうだったかしら?でも私もダルン侯爵令嬢だから一緒でしょう。私が出たのだから問題ないでしょう?とくに何もないし」
と言ってアリサは宝石のアクセサリーを並べている。その笑みは野心が見え隠れしていた。
サラは、すぐにメイド達の控え室で今の話をした。
メイド達にも隠さなくなってきた野心。エルフィン様に対する二重人格のような甘えた仕草や声色に女同士嫌な匂いを嗅ぎ取っていた。
これが少しでもアリサに同情や好意的な感情があれば、嫌な匂いを誤魔化せたかもしれないが、今やただ嫌悪感しかなく、どんな言葉も嫌な人と受けとられていた。



報告を受けた私は、
「ラーニャ、これはやっぱり私が仕向けたのかしら?」
メイド達の様子を想像してから聞くと、ラーニャは、
「そうですね。初めて聞いた乙女ゲームのストーリー、照らし合わせて実行なさってますから悪役令嬢で間違いはないかと思います」
としっかり言い切った。
「そうよね。私悪役令嬢をやっているわね」
と言って静かに書き出した乙女ゲームの内容を見ていた。

やはり他人から認定されるのは、辛いものがあるとおもいながらも、これで悪役令嬢を辞めれるなら仕方ないかなとも思った。

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