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6 公爵令嬢家のお茶会

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朝からバタバタしている、公爵家のお茶会だ。用意は周到に、私とお父様とお兄様は一度うなづきあってから、別れた。

準備も終盤に私はお腹が痛くなった。という設定。

すぐに現れたのは、お義母様。
「大丈夫ですか?ミルフィーナ様」
と声をかけてくれる。
「大丈夫です、少し横にならさせてください。ドレスは脱いで構いませんか、お義母様」
「もちろんよ。今日は残念ですが、お茶会を見送りましょう」
「申し訳ございません。お義母様。アリサさんにお伝え願えますか、私の欠席をそして楽しんで来てくださいと伝えていただければ嬉しいです」
と言えば、お義母様も頷く。

そして私はすぐ着替えてお父様と先に公爵家に向かった。

「本日はとても無礼なお願いをしてすみません、マリネッセ様」
と言えば、笑ってマリネッセ様も
「ワクワクするわね、レオナ様に聞いたわ。私の出番は何かしら?」
と聞いてくる。
仕方ないな。演劇部でもあるまいし。

「では、マリネッセ様にはセオデリック様を、少しキツめに物事を頼んでください。きっとアリサさんは、すぐにカモを見つけたと喜んで近づきますわ、多分ロマンス小説のヒロインのような計略をもってきますわ。耳を傾けましょうね」
「まぁまぁ、私もお芝居に参加するのね、セオデリックには伝えるのは良くないわね」
と喜んでいる様子だ。
父様には、
「はい、アリサさんがセオデリック様に近づき擦り寄らなければ、私の勘違いですからお父様。二人に謝りますわ」
と言ってお父様は納得した。

そして私はメイド服に着替える。
舞台は整ったわ。
ゆっくりとお客さまが入って来た。令息令嬢、華やかだ。
こうしてメイド服を着ていると不思議と本当にお芝居の世界に入ったみたいで緊張してきた。
公爵家のメイドは皆テキパキと仕事をこなす。私もタワーになっているお菓子を並べたりと働いていた。
すると、一際、キャッキャッする声。

「お兄様、夢のような世界。私お姫様になったみたい」
と声が聞こえた。アリサさんだ。
声が通る。お兄様が困っている。少し離れようと何度も横にずれているのに。アリサさんは、手を乗せるではなくガシッと掴んでお兄様を引き寄せる。


「凄いわ」
これは誰が見ても強力な客引き令嬢だ。エスコートではない。どこであんなベタベタしたスキンシップを覚えてきたのだろう?そして、怖くてお父様を見れない。

もちろんお兄様がついているので、アリサさんを連れてマリネッセ様の挨拶の列に並ぶ。
その間私は、お客さまに出す飲み物をトレーに置いたコップに注いでいく。意外に仕事があるなと思っていれば、アリサさをの挨拶シーンを見逃した。
「しまった!」
と思ったが、お兄様の困り顔を見て、何かやったのかしらと意地悪な心がワクワクしてしまった。
ある程度お客さまが揃った所で、開催されるらしくマリネッセ様が私に近づいてきた。
「確かにあざとそうな子ね。ぎこちない挨拶をして私よりも周りにいた令息にアピールしていたみたい。私は初心ですよって。ミルフィーナ様、たぶんエルフィン様も気付かれましたわ、きっと」
と楽しそうに笑うマリネッセ様。
「マリネッセ様にかかれば余興になりますわね」
と言えば、
「確かに!もうお会いすることがないご令嬢でしょうけど」
と令嬢失格印をしっかり押したようだ。所謂マリネッセ様の派閥には入れないということだ。

フゥー
令嬢怖いね。13、4歳ぐらいの子達の集まりなのに、もう上位貴族はきちんと自分の立場や立ち振る舞いを知っている。
もちろん私も家庭教師から色々教わった。貴族としての挨拶、礼儀作法。
ホストであるマリネッセ様ではなく周囲の令息に向けた挨拶なんてホストにしたら、すぐにわかること。
アリサさんは、招かれた客として、最低な事をした。


エルフィンside

「お兄様、緊張しますね」
とニコニコ笑顔で私を見てくるアリサ。ミルフィーナの言う通り、彼女の視線の先を捉えているのは、令息達だ。マリネッセ様の挨拶だって、いかに自分を可愛いく見せるかに誇張して視線は令息達が自分をどう見たかに最後追いかけていた。ホストのマリネッセ様を見ていない。
大変申し訳ない事をしている。
ミルフィーナの言っていたことは、少し自分が構ってもらえない僻みだと思って捉えていた。

「参ったな」

見えてなかったのは、私だ。これがハニートラップというやつか。学校に行っているとその手の話題は、男達が集まれば話が盛り上がるネタだ。
まさか自分がという心境だ。チラッとレオナを見れば、威圧を感じる。馬鹿な男と言われているようだ。
レオナも協力者だと聞いた後、すぐに詫び状を書いた。気づかなかったと。
返ってきた返事は、これから女性が接触してきた場合、逐一報告すること。
「私は、信用を失っているんだな」
それは理解している。
まぁ今日、見るまでは、ミルフィーナが大袈裟に言っているなと思っていたのは本当だ。

私は見る目がない。父様に報告することが増えたことは確かだ。
ただここに来る前に父様に言われた。
女性は女同士だからこそわかる計略があると、それは男は入ってはいけないと注意された。下手に巻き込まれると大変なことになる。最終的に女同士手を組んで、男が悪いと追い詰められると言われた。『父様何があった』と聞きたかったが、恐ろしくて聞けない。

ハアー
レオナがこっちを見てる。行かなきゃ、あれは来いという意味だろう。

「アリサ、レオナに挨拶をしてくるよ」
と言えば、袖口を掴み、人差し指を顎に当てて、
「お兄様、こちら私、知らない人だらけですので、寂しいです。早くお戻りくださいね」
と袖口を何度も引っ張る。

ハアー、レオナの視線を感じる。めっちゃくちゃ怒っているような気がする。パッとみると笑っている。
笑っている。
それがとてつもなく怖い。
だってあれ、目では早く来いと訴えているよ。
こっちでは、服引っ張っているし、早く離せよ。
「アリサ、悪いが貴族の礼儀が欠けているよ」
と言えば、少し驚いた顔した。その隙にレオナの所に向かった。

レオナは笑っている。完璧な微笑みで。
「報告」
短い単語だ。
「知りあいがいないから早く戻ってきてと言われました」
「あ、ベタベタしない。義理でも兄妹でしょう?ミルフィーナ様とあんなに密接してないでしょうが!」
と笑顔と言葉がチグハグだ。
怖い、女性怖い。
なんでこんな表情と言葉が違うんだ。
また父様に報告しなければ。

レオナが、ゆっくり笑顔を崩さず口元だけを動かして、
「まぁ、しっかりエルフィンも理解したようですわね。アリサ様の仮面の下のあざとさや計略。ほら下向かない。アリサ様が見ているわ。手を振って。エルフィン、度々席を離れてアリサ様がどのような行動をするのか見極めるのが、今回やるべきことでしょう。わかりましたね」
「はい、レオナ!」

まるで母様のような、いや母様にあの圧があっただろうか?いやそれも父様に聞いてみなければわからない。

女性、怖い。
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