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1 悪役令嬢断罪の時間です

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とうとうこの日が来てしまったわ。
乙女ゲームのプロローグ、最初の攻略対象者からの悪役令嬢への断罪イベント!



「ミルフィーナ、本当にアリサを虐めたのか?」
そう、私に聞く兄様。
ここは食事中ですよ兄様。そんなに、興奮していたら、唾が料理にかかりますのに。
私は、ゆっくりと兄様を見た。かなりの剣幕だ。兄様の後ろに震えている義妹。

ここで言う台詞は、
「いいえ、私は何もやってません」
だったかしら。
なら、
「はいやりました」
と言えば、どうなるのかしら?部屋に謹慎?あの子の真似して涙目で
「やってませんお兄様~」
と語尾上げ甘ったるく言えばいいのかしら?
お兄様と義妹の用意している台詞は何かしら?

とりあえず、逆に質問してみましょうか。
「何をもって私が、アリサさんを虐めたとなったか教えて下さいませ」
と聞くと、兄様は、
「ほら、アリサ、先程の話をみんなの前で言ってごらん。大丈夫、守ってあげるから」

ハアー
お兄様、その子義妹ですよ。私が本当の妹ですのに、完璧に落ちているわ。
さすが肩慣らし!
駄目だ兄様、呆気ない攻略に疑うことを知らない兄、使えないわ。

「あの、私、ずっとちゃんと家族になりたいと思っていて、だからミルフィーナ姉様にも私の事アリサって呼んで欲しくて、お茶も一緒にしたくってお願いしたら断られて」
とフルフルしながら言う。
この震えは何を表しているのか、誰か教えてください。私怒ったりしていませんよ、もちろん脅しもしていません。

それが彼女の言う虐めなのか。
やばいな、やっぱりこの子。
絶対関わりたくない何でも悲劇のヒロイン系女子。
関わったら最後、ちょっとした事でも大袈裟に事を大きく言う女子。
そういう子って自分に味方になってくれる人見つけるの上手だよね~。
そして簡単に裏切るし。

「どうしたミルフィーナ、酷いこと言ったと認めたか」
と兄様が囃し立てる。

「同じ年で姉も妹もなくないですか?なら私もアリサ様と呼ぶ方が公平ですからと前回その話で言ったら、それは家族として認めてないんですかって、そこも私、虐めているって言われました。だから私の事も姉様ではなくていいとなり、皆さんの前で、では、間をとってアリサさんミルフィーナさんにしましょうってなったじゃありませんか?お兄様お忘れになりましたか?」
と言うと、兄様は、そうだっけなっと言う顔をしてから、
「確かに名前の呼び方問題は何度も出た議題だったな。では、お茶の時間が持てなかったのは何故だ。そのぐらい構わないだろう」
と私に言った。

ふぅーと長い一息吐いた後、
「お兄様、今日はレオナ様の相談に乗って欲しいと言ったのはお兄様じゃないですか?それもお忘れになったのですか?」
と言えば、しまったと言う顔をして、
「あっ、そう、そう、レオナがミルフィーナに聞いてからとか言っていたな。それ今日だったかな」
と言った。

私は、人差し指を顎に立てて困ったわと言うポーズを取る。
チラッとお父様を見た後、後妻のローズリーお義母様を見た。
何度も同じ議論をしたと強調した、まぁ二回目だけど。
顔色を悪くしているローズリーお義母様は、
「申し訳ございません、少しアリサと話をさせていただきます」
と言ってから立ち上がった。

アリサさん本人が仕掛けているのか、お義母様が仕掛けているのか、私にはわからないけど、プロローグの攻略対象者は仲良くなる事だから。



お父様とお兄様と私とメイド長だけになった。顔色を悪くしたお兄様は、チラチラ私を見てくる。

「すまなかった、ミルフィーナ。すっかりレオナの件は忘れていた。それで彼女は何を言っていたかな?」
と汗を拭きながら兄様は言った。
その間もお父様は黙っていた。

ふぅー
「お兄様、レオナ様は今怒っていますよ。お兄様のそういうとこ。自分のことを忘れられているや時間を作ってくれないとか、婚約破棄もありえますよ」
と言えば、焦りながら、
「いや、忘れたわけではないのだが、仕方ないだろう、アリサが毎日のように私の部屋に来て、頼ってくるんだよ。ここに来て間も無いから頼れるのは、私だけだと言うし」

うわー、下心ある女の台詞そのままじゃないの。
やばいねあの子。
お義母様は関係ないかな。
「お兄様、こんな事言いたくありませんが、それ利用されてますよ。兵法でもありますが、弱いふりをした間者が一番つけ込みやすいのは、絆される人間ですよ。アリサさん、お兄様とレオナ様のお茶会の時も、誰にも見られないようにレオナ様のところに行き、私が虐めていると言いにいき、レオナ様が逆にあなたのそういう態度よくないわよと注意したら、逃げて行ったそうですよ。それから、お兄様に手紙を書いてもお返事が来なかったとか。会いに行っても、今、アリサさんが大事な話があるからと言って断ったから、レオナ様怒ったんじゃないですか!」
と言えば、

「えっ、手紙なんて知らないよ!」
とお兄様が言えば、
「では、アリサさんが隠したんじゃありませんか?お兄様とレオナ様を会わせたくなくて」
と言えば、単純な兄である。
「アリサ!」
と怒っている。
「お兄様、きちんと状況を見て下さい。お兄様は、家族として優しい方です。その優しさを利用されていると思うと私、辛いです。レオナ様を一番に思って下さい。アリサさんと話すなと言うわけではありません。きちんとご自分の時間をお持ちください。そうすれば、今回のようなレオナ様とのすれ違いなど起きません」

兄様は単純な男だ。ずっと頷いている。

「その通りだ。ミルフィーナ、すまない。アリサか毎日同じように君のことを言うものだから、信じてしまったよ。よく考えれば、そんな接点はないのに何故虐めだ虐めだと騒ぐのだろう?」

またか、この兄。あんまりにも平和ボケというか汚いものを知らなすぎだ。
「お兄様、アリサさんは、きっと私を排除したいのでしょう。同じ年だから、なんでも比べられるし邪魔なんでしょうね」
と言えば、驚愕の顔をしていた。

「何だって!?」
と驚いている。やばいな兄。
まぁ、大袈裟に言ってますけど!
「お兄様、レオナ様だって気づいてますよ」
「ええ~!」

「きっとお義母様も。だから慌てて話に行かれたのでしょうね。お兄様、女王蜂の性質って知ってますか?」
と聞くと、お兄様は首を振った。

「女王蜂は、その巣で何匹か卵があるのですが、最初に出てきた女王蜂が、孵化する前に妹になる女王蜂を殺していくんですよ。その巣で女王は一匹でいいんです。それを生まれ立てで実行するんです。本能ですね」
と言えば、お兄様は青褪めていた。女の性質を理解したのか、自分が利用されていたのがわかったからなのか?

「なんてことだ!私は、アリサに騙されていたのか?」
「いいえ、誘導されていたのでしょうね」

「恐ろしい」
と兄様はぼそっと言った。
まぁ、今、私が誘導しているんだけどね。ごめん、兄様。

「ミルフィーナ、最初からアリサのことをずっと見ていたのはそういうことか?」
と父様にも聞かれた。

本当は、ここは違うが、話したって理解されないだろう、だから
「はい、亡くなったお母様から女王蜂の話は令嬢やご婦人に当てはまるから油断はするなと亡くなる前、私に助言して下さったのです」
と言えば、お兄様は、
「私にはそんな話はして下さらなかった」
「きっと、お母様は、お兄様が優しい紳士になるし、レオナ様との婚約も決まって見ていたから騙されたりしないと思ったんですよ」

「騙された…か」
かなり深く反省しているようだ。

そして、お父様は何やら考え込んだ。

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