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15ゴリラ令嬢脱却計画7

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ウッ、ホッ、ホッ、ホッ
と軽快になったランニングなんて3周に入り、歩きは3周。腹筋背筋35回。
ヘンリから妄想話を聞いてから二ヶ月以上が過ぎた。
今日、私は、カスタードクリームを食べに行く。
お母様もリューエン公爵夫人のお茶会に参加すると言い、家族で王都にある屋敷に行く。馬車で一日なのだが。
私だけ、王都に入ったら馬車を降りても良いと言ったのだけど却下された。
しかしカスタードクリームの菓子だけは買って置いてくれるらしいので、目的は達成出来そうだ。

ただ一つ、とても憂鬱な催し物…

王宮での薔薇のティーパーティー
そんな人見知りを発動する催しの参加が決定された。
これは、侯爵以上の要参加。親睦を深めようの会と母様が言っていたけどね、侯爵と言えばあのカトレアがいる。

苦手なんだよね。

フゥー

「どうしました?お嬢様、腹筋35回辛いですか?」
と足を押さえているドリーにいわれ、
「とても辛いわ、止めていい?」
と聞けば、答えはノー。
なら、辛いとか聞かないで欲しいわ。

「最近、お嬢様のお痩せになる感じが小康状態なので、やる気が出ないのはわかりますが、王都のタウンハウスでもメニューは行き渡っております。もちろん、料理長のレシピもご安心下さい。ゴリラ令嬢脱却計画は進行中です」

「いや、王都に行ってまで、ゴリラ脱却しなくてもいいわよ。一週間しかあちらにいないのよ。観光したり、カスタードクリーム食べたり、お土産買ったり、新たな魅惑の食べ物に出会ったり、私忙しくてトレーニングできないわ。それに考えようによっては、ゴリラも二足歩行だし、より人間よ。私には十分よ」
と言えば、
ドリーの絶望を見るような眼差し。

「お情様、学園に行ったら確実にいじめられます。デブだの太っちょだのと」
「アグーって魔物扱いされるよりずっといいわよ。太っちょって何だか可愛いわね」
「お嬢様、それ悪口ですからね。公爵令嬢なんですから、完璧を、目指してくれませんかね」

少し考えてから、
「無理ね」
と答えた。
これ以上の食事制限は無理だから。
もちろんトレーニングもここが限界。私には友達がいるし、もう他の人のことなど、全部不敬よで通せばいいじゃない、いけるわ、流石リサーナね。


馬車に乗り込む。
カスタードクリームが近くにある町に…私は呼ばれている気がする。
「こっちよ、パイがあるわよ、パンケーキ、シフォン、マカロンもあるわよ~、召し上がれ~」
グフ、フフフ

「大丈夫か、リサーナは?」
と父様の声が聞こえる。
両親が心配?奇妙な珍獣を扱うかのごとく、ゆっくり恐々しながら手を伸ばす。そして私の肩をさする母。

揺らされたぐらいで、私は揺るぎませんよ。口に広がる無限の未知なる幸福を想像しながら、いざ出発です。

少し揺れる馬車に目の前にお父様、私の横にお母様の布陣。
お父様はまだ仕事が残っているようで、箱から書類を取りまた違う箱にサインをしては入れていく。
「公爵の仕事って大変なんですね?馬車の中でまでお仕事なんて、私には無理な領域ですね。レイモンドという従兄弟は優秀ならお育て下さい。確かに人見知りを発動しますが、別館に住んでいただければ、たいして問題がないように思われます」
と言えば、お父様は、
「昨日の夜やろうと思った仕事だったんだけど、結局後回しにしてしまったんでね。リサーナは寝てていいよ」
と言われた。

まさか朝食食べた後で、昼寝を許可されるとは至福すぎ…
最近の忙しさに何かおかしいと、思いながら考えることを避けていたな。でもやっぱり寝ようかな。

スゥー、ガー、スゥーガー

「あら、一瞬で寝てしまって、令嬢らしがらぬイビキまで。この子大丈夫なのかしら、こんな風で。嫁入りできますかね?」
「こんな痩せて、頑張っているから疲れたんだよ。イビキは、王都の医者に相談するよ…」

二人は痩せて頑張りは認めているものの残念な娘を見ながら溜息を吐いた。

昼食は、王都に入る前の宿場町で休憩しながらとる予定。
そこまでは、堂々と寝ていられる。そう思っていたが、次の大きな振動で起きた。

「なんだというんだ」
父様の御者への確認の言葉。
「子供が道で倒れてました」
と声が聞こえた。我が家の護衛騎士が対応しているらしく話し声が小さく聞こえた。
「大丈夫かしら?」
と言えば、両親とも私に笑顔をくれた。扉が叩かれ、騎士の一人が父様に説明した。
「旦那様、シューマルの修道院から子供が二人脱走して違う領地に向かった途中に具合が悪くなったと言っています。今、水と簡易な手持ちのパンを与えましたが、いかが致しましょうか?」

「シューマルと言えば、王都の西地区だな、何故脱走なんてするんだ?」
と父様が言い、母様も考えるように、
「王都の東地区のトレセ修道院は、我が家が支援しています。同じように脱走などしているでしょうか?聞いたことがないけど」
と心配そうに口にした。
「何故脱走したのか聞きましょうよ、母様、もしかしたら冒険をしたいとか成し遂げたい夢のために脱走したのかもしれません」
そう、今の私なら確実にカスタードクリームのために馬車から逃亡し、王都の店に行きますもの。

馬車を日陰に止めた。
馬車から降りてまず硬くなった身体をほぐす。
少し離れたところにいいワンピースを着た少女と大きさの合ってない服を何重にも折り、サスペンダーでウエストの位置を合わせた男の子がいた。

まぁ私には、関係ないので近くには行かない。

「迷惑かけてごめんなさい、でも見逃してください。俺達、違う町に行って働きたいだけなんだ」
父様が
「まず落ち着きなさい。働くのは修道院だって推奨しているはずだ。それが悪い事じゃない。なぜ脱走なんてするんだ、シスターや神父に町で働きたいといえば済む事だろう」

少女が
「私が何処かに連れて行かれるから、ペーターは、逃がしてくれたんです」
と言えば、母様も
「何処かって就職先?知らない場所に連れて行かれるの?」
と聞けば、
「いつの間にか少女ばかりが修道院に集められていて、貴族風な男が嫌な目で見ているんだ。そしてその男が名前を聞いた子供は、その日のうちに、院の中で一番良い服を着せられて、後から来る馬車に乗せられたきり帰って来ない。みんなとのお別れも何もないまま流れるように連れて行かれる」
と話した。

少女ばかりって何だかいやらしいわね。貴族風の男ってめちゃくちゃ怪しい、とここまで離れた場所で聞いていた。

騎士や御者は父様にこういったことは、孤児や修道院ではよくある話だと言っていた。中々平民も厳しいのね。私の横にスッと現れた黒い影、パァッと見ればドリーだった。
「何故ドリー?」
「心配でついてきてしまいました」
「何に心配?」
「もちろんゴリラ令嬢脱却計画に決まっています。食べ過ぎ注意ですから。私も追加メンバーで乗せてもらいましたよ、お嬢様」
といい笑顔で私に言うけど、王都ぐらい私に自由をくださいよ。ハァ~今や私にとって離れたい人だよ、ドリーは!

私に一番歳の近いメイドだから私付きだけど…
歳の近い!?

「お父様、お母様、その二人プラント公爵家に連れ帰り、使用人にしましょう!」
と提案した。
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