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9 (小熊)ゴリラ令嬢脱却計画1
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翌日、川の作業場には、ザント男爵一家と村人10人と子供達多数が集まってくれていた。
「プラント公爵令嬢、リサーナ様がまさか自ら参加していたとは、少しも知らずに大変失礼いたしました。もうおやめください」
とザント男爵に言われた。家族全員顔色悪い。
きっと食べていないんだわ、辛いでしょうね。みんな風が吹いたら飛ばされてしまいそう。
しかし、なんて言おうかしら?お母様が聖男の言うことを聞きなさいの一点張りだしね。んー、どうしましょう。
ヘンリを見るが、芋の籠を荷台から下ろして、話を聞いていないのか、男爵家と話したくないのか?
男爵と何かあったのだろうか?
「ザント男爵様、私、確かに公爵令嬢ですが、穴掘りは、私のためにやります」
と言えば、
ザント男爵一家はみんな地面に平伏して、
「令嬢自ら率先して、他領のこの地を心配して、どうにかしてくださろうとするその美徳と優しさ、公爵家からこの様な恩情をいただきありがたく存じます。そして貧民に仕事と芋を与えてくださるなんて感謝しかありません」
何言っているのかしら?
おんじょうって何?
まぁ、私のこと敬っているってことだけはわかるわ。
「いいわ、良きに計らいなさい。困った時は助け合う、私が困った時はよろしくね。ドミニオン商会には芋を頼んであるの。作業終了後、みんな自分で取りなさいね」
といつもどおりの口調で言った。
少しの間
うわぁ、と歓声と拍手が上がった。
「うぉー、芋だ、ありがとう、お嬢様」
「飯だ~、神様~」
「ありがとうございます、貴族様」
「プラント公爵家いいとこあるじゃないか、ありがたいね」
「聖人君子だよ、お嬢様は!」
「いや、そこは、太った聖女だろう」
「熊みたいなお嬢様ありがとう」
「マジ、小熊」
「さぁー、作業するか」
えっ、今子供達、小熊って言った?
ドリーをバッと見たら、目線を外した。
何だって、今、私、
アグーじゃなくて、小熊なの!
あれは平民の紳士発言じゃなかったわけ!?
まさかの小熊ちゃんになったのね。
子供達が、私を褒める必要はあるのかしら?ないわね。
これは事実よ、私は小熊ちゃん!
確かにあの重かった身体が二周も走れる様になったわ。
乗馬服がもう破けることもないのよ。
やだわ、確かに間違いないわ、私痩せてきたわ。
「大変、大変、ヘンリさんや、今の聞きましたか?小熊ですって、こ・ぐ・ま」
と言うと
「お嬢様、なんでそんな嬉しそうなんだよ、小熊ってまだ悪口だぞ。背が低いから「小」がついているだけで熊なんて表現どう考えても大男を表している」
と申し訳なさげにヘンリは言った。
「えっ、だって、アグーじゃないのよ、アグー脱却したのよ。これって魔物的な見た目からさようなら、トレーニング終了ってことじゃない!食事も以前に戻れる」
と張り切って言った。
ヘンリは残念そうに私を見た。
「まだ四足歩行から抜け出してないのに…」
そして、ドリーが、
「お嬢様、小熊令嬢も立派なイジメ発言です。小熊脱却しなきゃ人間になれません、現在公爵家からゴリラ令嬢脱却計画を頂きましたよ、今回も責任者は奥様です」
と言った。私の後ろから、笑い声がする。
それは私に比べて棒切れのように痩せている少女。
溢れ出す笑いが可愛い。
フフフ、と声を出して笑って、それに釣られるかの様に我が家の使用人、ドミニオン商会の下男、ザント男爵の村人や子供達が笑った。
何故笑うのかわからないけど、みんな漏れ出すかの様に笑いながら作業し始めた。
ゴリラ、ゴリラ、と言いながら。
「突然笑ってしまい、失礼しました」
と笑って少し頬に赤みが出た少女。続けて、
「知りませんでした。リサーナ様がこんなに気の良い人だなんて。他領の村人まで世話をしてくださるなんて…先日のお茶会では怖がってしまい申し訳ありませんでした。せっかく話しかけてくださったのに。もしかして、このような恩情をあの時提案しようとなさっていたのですか?私、自分のことで精一杯で周りの声が聞こえてなくて…」
とクリスティが謝罪をしてきた。
また恩情?
「違うわよ、一人ぼっち同士だったから学園でも友達みたいな関係になれ、た…ら、いい…な」
急に恥ずかしくなってきた。
まるで物語の告白の場面みたいで…
思わず、下を向く。
何も言ってくれない。
やっぱり、私なんかとは、友達は難しいか、と思ったら、いきなりヘンリが笑い出した。
「何やってんだよ、二人して。クリスティ様真っ赤になるぐらいならお嬢様に答えてやんなよ」
とヘンリが言った。顔を上げれば真っ赤な顔したクリスティがいた。
そして、
「私で良かったら、お友達から始めてください」
と右手を差し出された。
「はい、お願いね、クリスティ様」
と言えば、
「私のことはクリスと呼んでください」
「もちろんよ、では私もリサーナとそのままで」
と言えば、顔を思い切り振る。
「公爵令嬢を呼び捨てにはできないだろう」
とヘンリから突っ込まれた。
ええ~
と不満顔をすれば二人は笑った。
クリスにヘンリ、
私の友達…
フフフ、と笑っていたらクリスがいきなり座り込んだ。
「どうしたの?クリス」
と聞くと、
「どこかでピーピーピーって鳴っているの」
と答える。
「ヘンリの椅子に座らせてもらいなさい」
耳鳴りかしら。クリスは痩せすぎだからね。
「さぁ、作業するわよ。ヘンリ」
とスコップ片手にヘンリを引っ張る。ヘンリは何か考えるような顔をしていたけど、引っ張っていく。その手の顔して作業から逃れようとは甘いぞ、ヘンリさん。
その時、私も以前このピーピーピーという異質な音を聞いていたことをすっかり忘れていた。
まぁ、子供の脳なんてこんなもの。
「一、二、一、二、エイサッ、エイサッ」
「ヘンリもクリスもうまいじゃない。やるわね、私も負けていられないわ。フフフ、公爵令嬢だからね、本気の穴掘り見せてあげるわ」
「公爵令嬢は穴掘りなんてしないよ」
とヘンリは言って、クリスは泣き笑いしている。
「あら、どうしたのよ、クリス?」
「楽しくって、こんなに笑ったの久しぶりで」
「大丈夫よクリス、きっとこれから楽しくなるわ。だって私達友達なんだから」
と言えば、またヘンリは
「お嬢様、友達っていうものを神化してませんかね、普通の事ですからね。そんな希望の光みたいな扱いしないでください」
「全く困った聖男ね。話の腰をすぐ折るわ」
と言えば、クリスに聖男のことを話したり色々忙しかった。
そんな感じで一週間、毎日参加人数が増えていく。芋の籠は3籠分が毎日なくなる。あっという間に川の横道(公爵領)と本線(男爵領)を直線で掘り、最後堰き止めていた岩を外すだけになった。繋げた本線の川水の勢いで、自然と深く掘ってもらうことになった。
すっかり私達三人は打ち解けた。
相変わらず、ザント男爵領の子供達からは小熊令嬢と呼ばれている。
嬉しい~。子供はいいね、ゴリラ令嬢なんて言わないでくれるもの。
しかしこの話、ある日、村に行商に来た商人の一人が各村でプラント公爵家の令嬢は、聖人君子の立ち振る舞い、村人と共にスコップを持ち汗をかき、困った貧民に芋を恵み、子供達とは輪になって遊び、非常に優しく心清らかな令嬢と伝わる。
それは、噂が人伝にゆっくり広がり、時間をかければかけるほど情報が削ぎ落とされ、付け足され、プラント公爵家の令嬢は、聖女のような美しい令嬢というゴールを迎える事になったのは、もっと先のこと…
*
そしてお父様が帰ってくる日を迎えた。
明日は、ヘンリも我が家に呼ばれて事情を聞かれる予定だ。
「プラント公爵令嬢、リサーナ様がまさか自ら参加していたとは、少しも知らずに大変失礼いたしました。もうおやめください」
とザント男爵に言われた。家族全員顔色悪い。
きっと食べていないんだわ、辛いでしょうね。みんな風が吹いたら飛ばされてしまいそう。
しかし、なんて言おうかしら?お母様が聖男の言うことを聞きなさいの一点張りだしね。んー、どうしましょう。
ヘンリを見るが、芋の籠を荷台から下ろして、話を聞いていないのか、男爵家と話したくないのか?
男爵と何かあったのだろうか?
「ザント男爵様、私、確かに公爵令嬢ですが、穴掘りは、私のためにやります」
と言えば、
ザント男爵一家はみんな地面に平伏して、
「令嬢自ら率先して、他領のこの地を心配して、どうにかしてくださろうとするその美徳と優しさ、公爵家からこの様な恩情をいただきありがたく存じます。そして貧民に仕事と芋を与えてくださるなんて感謝しかありません」
何言っているのかしら?
おんじょうって何?
まぁ、私のこと敬っているってことだけはわかるわ。
「いいわ、良きに計らいなさい。困った時は助け合う、私が困った時はよろしくね。ドミニオン商会には芋を頼んであるの。作業終了後、みんな自分で取りなさいね」
といつもどおりの口調で言った。
少しの間
うわぁ、と歓声と拍手が上がった。
「うぉー、芋だ、ありがとう、お嬢様」
「飯だ~、神様~」
「ありがとうございます、貴族様」
「プラント公爵家いいとこあるじゃないか、ありがたいね」
「聖人君子だよ、お嬢様は!」
「いや、そこは、太った聖女だろう」
「熊みたいなお嬢様ありがとう」
「マジ、小熊」
「さぁー、作業するか」
えっ、今子供達、小熊って言った?
ドリーをバッと見たら、目線を外した。
何だって、今、私、
アグーじゃなくて、小熊なの!
あれは平民の紳士発言じゃなかったわけ!?
まさかの小熊ちゃんになったのね。
子供達が、私を褒める必要はあるのかしら?ないわね。
これは事実よ、私は小熊ちゃん!
確かにあの重かった身体が二周も走れる様になったわ。
乗馬服がもう破けることもないのよ。
やだわ、確かに間違いないわ、私痩せてきたわ。
「大変、大変、ヘンリさんや、今の聞きましたか?小熊ですって、こ・ぐ・ま」
と言うと
「お嬢様、なんでそんな嬉しそうなんだよ、小熊ってまだ悪口だぞ。背が低いから「小」がついているだけで熊なんて表現どう考えても大男を表している」
と申し訳なさげにヘンリは言った。
「えっ、だって、アグーじゃないのよ、アグー脱却したのよ。これって魔物的な見た目からさようなら、トレーニング終了ってことじゃない!食事も以前に戻れる」
と張り切って言った。
ヘンリは残念そうに私を見た。
「まだ四足歩行から抜け出してないのに…」
そして、ドリーが、
「お嬢様、小熊令嬢も立派なイジメ発言です。小熊脱却しなきゃ人間になれません、現在公爵家からゴリラ令嬢脱却計画を頂きましたよ、今回も責任者は奥様です」
と言った。私の後ろから、笑い声がする。
それは私に比べて棒切れのように痩せている少女。
溢れ出す笑いが可愛い。
フフフ、と声を出して笑って、それに釣られるかの様に我が家の使用人、ドミニオン商会の下男、ザント男爵の村人や子供達が笑った。
何故笑うのかわからないけど、みんな漏れ出すかの様に笑いながら作業し始めた。
ゴリラ、ゴリラ、と言いながら。
「突然笑ってしまい、失礼しました」
と笑って少し頬に赤みが出た少女。続けて、
「知りませんでした。リサーナ様がこんなに気の良い人だなんて。他領の村人まで世話をしてくださるなんて…先日のお茶会では怖がってしまい申し訳ありませんでした。せっかく話しかけてくださったのに。もしかして、このような恩情をあの時提案しようとなさっていたのですか?私、自分のことで精一杯で周りの声が聞こえてなくて…」
とクリスティが謝罪をしてきた。
また恩情?
「違うわよ、一人ぼっち同士だったから学園でも友達みたいな関係になれ、た…ら、いい…な」
急に恥ずかしくなってきた。
まるで物語の告白の場面みたいで…
思わず、下を向く。
何も言ってくれない。
やっぱり、私なんかとは、友達は難しいか、と思ったら、いきなりヘンリが笑い出した。
「何やってんだよ、二人して。クリスティ様真っ赤になるぐらいならお嬢様に答えてやんなよ」
とヘンリが言った。顔を上げれば真っ赤な顔したクリスティがいた。
そして、
「私で良かったら、お友達から始めてください」
と右手を差し出された。
「はい、お願いね、クリスティ様」
と言えば、
「私のことはクリスと呼んでください」
「もちろんよ、では私もリサーナとそのままで」
と言えば、顔を思い切り振る。
「公爵令嬢を呼び捨てにはできないだろう」
とヘンリから突っ込まれた。
ええ~
と不満顔をすれば二人は笑った。
クリスにヘンリ、
私の友達…
フフフ、と笑っていたらクリスがいきなり座り込んだ。
「どうしたの?クリス」
と聞くと、
「どこかでピーピーピーって鳴っているの」
と答える。
「ヘンリの椅子に座らせてもらいなさい」
耳鳴りかしら。クリスは痩せすぎだからね。
「さぁ、作業するわよ。ヘンリ」
とスコップ片手にヘンリを引っ張る。ヘンリは何か考えるような顔をしていたけど、引っ張っていく。その手の顔して作業から逃れようとは甘いぞ、ヘンリさん。
その時、私も以前このピーピーピーという異質な音を聞いていたことをすっかり忘れていた。
まぁ、子供の脳なんてこんなもの。
「一、二、一、二、エイサッ、エイサッ」
「ヘンリもクリスもうまいじゃない。やるわね、私も負けていられないわ。フフフ、公爵令嬢だからね、本気の穴掘り見せてあげるわ」
「公爵令嬢は穴掘りなんてしないよ」
とヘンリは言って、クリスは泣き笑いしている。
「あら、どうしたのよ、クリス?」
「楽しくって、こんなに笑ったの久しぶりで」
「大丈夫よクリス、きっとこれから楽しくなるわ。だって私達友達なんだから」
と言えば、またヘンリは
「お嬢様、友達っていうものを神化してませんかね、普通の事ですからね。そんな希望の光みたいな扱いしないでください」
「全く困った聖男ね。話の腰をすぐ折るわ」
と言えば、クリスに聖男のことを話したり色々忙しかった。
そんな感じで一週間、毎日参加人数が増えていく。芋の籠は3籠分が毎日なくなる。あっという間に川の横道(公爵領)と本線(男爵領)を直線で掘り、最後堰き止めていた岩を外すだけになった。繋げた本線の川水の勢いで、自然と深く掘ってもらうことになった。
すっかり私達三人は打ち解けた。
相変わらず、ザント男爵領の子供達からは小熊令嬢と呼ばれている。
嬉しい~。子供はいいね、ゴリラ令嬢なんて言わないでくれるもの。
しかしこの話、ある日、村に行商に来た商人の一人が各村でプラント公爵家の令嬢は、聖人君子の立ち振る舞い、村人と共にスコップを持ち汗をかき、困った貧民に芋を恵み、子供達とは輪になって遊び、非常に優しく心清らかな令嬢と伝わる。
それは、噂が人伝にゆっくり広がり、時間をかければかけるほど情報が削ぎ落とされ、付け足され、プラント公爵家の令嬢は、聖女のような美しい令嬢というゴールを迎える事になったのは、もっと先のこと…
*
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