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46一戦目

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私もあんな風だと思われていたら…
目眩がする。

本当にフラッとしてしまった。

「オッ、と、大丈夫かな?」
肩が掴まれ、もう片方の手は、お腹に回った。

「ありがとうございます、目眩がしてしまい…」
と顔を上げ、後ろを見た。
茶色の髪、切長の目、鼻筋も口元も完璧な造形…
クランさん?

「大丈夫ですか?」
再び聞かれた。
その声は落ち着いていて、安心できるトーン。
「クランさん?」
口から出た言葉。


「二年生ですか、初めまして、クラウス・ノーマンと申します。この度学園長に就任しました」


「あっ、学園長でしたか、こんにちは」

「はい、こんにちは。では、体調に気をつけて、前を見て歩いてくださいね」
と歩いていってしまった。

クランさんに似ていた。
髪色と雰囲気がなんとなくだけども…前髪が短くなり、目が見れてかなりのイケメン。
でも、家名がノーマンなら、王族だ。
王族が警備員なんてやるわけはないだろうし。クラード殿下やシリル殿下と髪も目の色合いが違かった。
クランさんなら、もう少し話してくれたかな?

凄い若いイケメンが学園長に就任したわけなら、明日からの話題だろうなとその後ろ姿をずっと見ていた。


校内から出る扉で、またサクラさんがいた。
ウァーー、さっきの甘え声を思い出し、嫌だなぁと思わず顔を背ける。
しかし、フンフン~と鼻歌混じりのサクラさんはこちらに気にも止めてないようで、さっさと私の横を通り過ぎる。

挨拶するべきかしら…

「幸先いいわ、物語通り3階のの大きな木が見える窓の廊下…フフフ掴みはオッケー。だけど校内案内はしてくれなかったのが気になる。あっ、そうか王子じゃないからか、明日もあの場所に行けば王子と会ってあんな感じのこと言って校内案内してもらって…フフフそうすれば良いのよねフフフ。楽勝かも」

挨拶はしなくて良いわね。
この人は危険…危ない思想の持ち主だわ。
悪霊退散!!
心の中で唱えた。

これが悪かったのだろうか。やはり人の悪口は言うものではない。

「キャーーーシルベルト様!!」
声を弾ませた少し先にいる留学生。

その声を聞いた時私は後ろ歩きをしたいと本当に本気で思った。
その声に反応するかのようにもちろん見るよね。
声主を。

私も見ましたよ。
シルベルト様がいました。そして何故なのイリーネ様まで。

これは…
この留学生、はしゃいでくれるなよ、速やかにお二人の横を通り過ぎろよと心の中で祈る。

「ゲェー、イリーネ…」

あっ、言ってしまった。この人本人を目の前にしてまさかの敬称なし…
終わった。
失礼すぎるだろう…どんな精神してるのだろう?
もう穏やかな通り過ぎという選択はなし。
私だけでもさっさと通り過ぎよう!

「今何と言いましたか、そこのあなた!敬称無しの上に、私あなたに名前を呼んでいい許可しておりませんけど。失礼極まりないわよ、無礼よ」

「すみません~、私トリウミ王国からの留学生でして、そういう敬称とか疎くってごめんなさ~い」
と軽く、謝っていた。

うっ、サクラさんを追い抜けない。私も若干後ろの位置で止まる。
ここは進むべきかこの位置で留まるべきか。

「あぁ、君が留学生か、確かに今の発言は敬称有無じゃなくても先輩に対して掛けていい言葉じゃないね。イリーネ嬢が言うのもわかる。今後気を付けて。イリーネ嬢、今日の所は文化の違いということで許してあげてくれ」

「あら、シルベルト様お知り合いなの?随分とお優しいわね」

「嫌味は結構だ。先程の話、こちらとしては否定しているから誤解のないようにしてくれ」

イリーネ様が睨みながらこちらを見ている。

「あら、丁度ここに関係者がいるんだから聞いてみるわよ、フフフ、後ろにいる何某さん!あなたシルベルト様の婚約者になるって本当?」

まさかの何某さんって呼びかけられているのは私のこと?
いや、もう私しかいないよね。この状況。
でもこれでこのサクラさんを追い抜いて帰れるかも。

通り過ぎた際にサクラさんは、見ない。こちらを見ているが無視をする。

歩いて前にでる。
「お久しぶりです、イリーネ様。婚約の件初耳です。シルベルト様もお久しぶりです。皆さまご機嫌麗しく、本日も良い天気ですね。失礼いたします」
と一礼する。

「ティアラ嬢…久しぶりだね」

「はい…」
と言えば、イリーネ様が笑った。

「フフフ、そういうこと~、あぁそうなのね~何某さんって、そっち系の人におモテになるのね~」

「何を言っているイリーネ嬢。そういった誤解が彼女の迷惑になるんだ」
と慌てて言うシルベルト様。
イリーネ様は、
「フフ、シルベルト様って、もっと何考えているかわかりませんでしたのに。垢抜けていない子がお好みでしたか!そのような楽しみ方をしたい方ですのね~」
とそれはそれは、楽しいと揶揄うように言っていた。

「何を言っている、どうしてそんないやらしい言い方をするんだ。彼女は、自然体なだけだろう。垢抜けるとかそんな言い方彼女に失礼だろう」
と食い気味でツッコミを入れる。

「いえ、もう」
と言葉を終わらせようとすれば、イリーネ様が私を見て、
「侯爵令嬢なのにね、庇護欲を誘うようにあえて着飾らないのかしら?それも作戦よね、私も見習わないと」
と上から嫌味目線がきました!
が、シルベルト様が、
「彼女のビルド家は、本当に財政難なんだ。作戦なんてない、訪問しても執事もメイドも出てこない!」


あぁーーー、
もう黙ってください!
いちいち相手にしなくて良いのよ、イリーネ様の口車に乗って、ここからまた噂が発生する気がする。

「ちょっとちょっと、何三人で和気藹々と盛り上がっているのよ。シルベルト様、私、トリウミ王国の留学生のサクラ・セノーと申します。私、少々人見知りでまだクラスにも馴染めないので、一人で校内見学しているのですけど、まだ庭園もランチが出来る中庭など知らないです。もしよろしければ、案内してもらっても」
甘えた声を出している。
本日二回目のこの甘さの口調…

「すまない、現在執務が立て込んでいて、担任の先生に頼んでおくよ」
バッサリ…

「えっ?あ、はい」
一瞬、口を開けて、時が止まったように動かない。
シルベルト様とイリーネ様は無表情でサクラさんを見た。
もう何も言うことはないようだ。
それに身体を震わせて、渋々引き下がるサクラさん。

「では、私は失礼します」
と再度頭を下げた。
関わりたくないね、こんな場面。カオスになりかねない。

私を見て、ニヤニヤするイリーネ様を横目で見たあと真っ直ぐに歩いた。

ドドッドと効果音が聞こえそうな音が後ろから聞こえる。
はい、嫌な予感発動。
急いで私も早歩きをするけど、後ろの方は走っていますからね、追いつかれますよ。

「ハァハァ、待ちなさいよ、ねぇ、あなた誰なの?」

この質問二度目。

あなたとは同じクラスですけど。自己紹介しましたよ。まぁ覚えてくれてないのですね。

「ティアラ・ビルドと申しますが」
と言えば、

「やっぱり聞いたこともない。モブね…
あなたシルベルト様の婚約者なの、イリーネが言っていたわね」
サクラさんに言われた。

イリーネ様ね。
トリウミ王国って敬称なしで話す文化なのかしら?でもあの国も王族制よね。

「トリウミ王国は敬称なしのみなさん平民のような関係性なのですか?」
と聞くと
「あぁ、イリーネって言ったのが気に入らないってこと。あなたもカミューラの派閥ってことか。納得~!それでイリーネやシルベルト様と知り合いなのね。私に紹介しなさいよ!」

「知り合いじゃありません」
と言えば、

「カミューラ派閥は、意地悪はモブでもマストな言動ってことね」

何言っているのこの人、気持ち悪い。
見ていると、何故か呆れたように、手でシッシッと追い払われた。
「わかったわ、もう行って良いわ、悪役モブじゃ意地悪と言っても私に情報をくれないとか無視とかぐらいか、役に立たないわ」

何、この偉そうな態度
あの甘さの気味悪い声を出されても嫌よ、でも、最近傲慢な令嬢と会う機会が多い中でもこの方、なんか、めちゃくちゃ嫌いだわ!!!

「失礼します」
と言って前を歩いた。
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