8 / 77
8被害者の会
しおりを挟む
ハアーー、昨日の婚約者すげ替え被害者の会には、精神的にゴリゴリ削られたわ。
すげ替えなんて乱暴な言い方は、誰かに聞かれたら大変だし、特に今回の件の高位貴族には…
我が家は貧乏。勿論、ビルド侯爵家親戚みんな貧乏ですよ!
働かない者食うべからずですから、貴族だろうが朝から晩まで文官や何処かの貴族のメイドや侍従をしていて、そんなお茶会だ、パーティーだなんて参加してません。
「言えなかったわ。家族にも。誰を頼れば…どうしよう…」
「おはよう、ティア!何、暗い顔しているのよ!」
元気溌剌のミンネに話そうか言い淀んでいると、同学年だった被害者の会のサマリア様が教室の扉で覗いていた。
私を見つけると、手を振り
「すみません、ティアラ様~お話聞いて欲しいんですけど」
と言われ、ミンネに目線だけ送り、彼女に近付いた。
「あの昨日の話なんですが紹介の!ティアラ様はビルド侯爵令嬢じゃないですか。どうかお一人ぐらい紹介者の中に侯爵位か伯爵位の方を入れて頂きたいんです。私は子爵位なので、そういった方とは知り合いがおらず…
その後は自分でやりますからお願いします」
と頭を下げられた。
位だ、階級だの話ではない。
私には男性を紹介出来る術も伝手もない。
ここは素直に、言おうと決める。
「サマリア様、私、本当に知り合いがいないのですよ。昨日の話では親類も可能という事でしたが、我がビルド家、税金も払えないぐらい貧乏なんです。親戚みんな朝から晩まで働いております」
と伏し目がちに言って様子を窺えば、大きな溜息をつかれた。
は!?
溜息吐きたいのはこちらですが!
「そうなんですか?では次のお茶会って期待薄って事ですか…わかりました。もう少しクラス内の友人に頼ってみます~」
と興味を無くした表情と態度で足早に去って行った。
ハァーーー
何故こんな突然知り合いになった方に気を使わないといけないの。
そもそも被害者の会に入りたいなんて一言も言ってないのよ!勝手に仲間にされて、迷惑なのですが、こちらは!
ハァーーー
まだ朝の教室で何度目かの溜息を吐く。
「ティア、深いねぇ。溜息ばかり吐いていると幸せ逃してしまうわよ。それでどうしたのよ」
と聞かれ、恥も捨ててミンネに被害者の会を相談する。
プッハッハハハーー
笑い声が響いている。
そうでしょうとも。男友達が多いミンネにとったら私みたいな悩みなんて笑い話のネタよね。
少し捻くれながら笑っている彼女を睨む。
「アッハッハハッハハハ、今そんな風になっているの。王子様達の破棄騒動がまさか当時者外で波紋を広げているなんて予想外!
ティアだけが婚約破棄されたと思っていたのに…ハァッ凄いね、高位貴族って横取り上等ってことでしょう?セレナさんとたいして変わらないよね」
と大きな声で笑って話す。
まぁ、それも当時者がいないから、こんなに堂々と出来る話であって…
「ティアラ様、婚約破棄なさったの~!」
とクラスメイトにばっちり聞かれ、興味の的、いやただのネタ話にされてしまった。
こんな時にどんな顔をするのが正解か教えてほしいものだ。引き攣った笑顔で、
「仕方ないことですわ~」
と当たり障りなく言った。
私なんて小物の話題は昼食までもつわけもない。
「大変よ!ビッグニュース!!セレナさんが、王子様達生徒会メンバーを黒魔術で操っていたらしいわ!今その発表で色んなところで騒がれているわ~」
「嘘~!」
「詳しく教えて!」
昼食はそれどころじゃなくなって、ギャンギャンと盛り上がっていた。
少しホッとした、話題が移って…後ろから影がさした。
「ごめんなさいね、ティアラ様、お食事途中に話しかけてしまって…」
と申し訳なさせそうに小さい声で声をかけられた。
嫌な予感はビンビンする…
振り向きたくない…
だけど、
「いえ、…ブランカ先輩、ユリアーノ先輩…」
…
「「とても短い話ですぐ終わりますの」」
と二人は言った。
この二人が揃った時点で被害者の会のことだろう。
「はい、承知しました。席を外します」
とミンネに目線をやった後、二人の後について行く。
ブランカ先輩が口火を切った。
「昨日のお茶会の招待する方の話です!出来れば年上を私達希望しておりまして…」
ユリアーノ先輩も
「後妻とかは絶対嫌なんです」
「そんな先輩方そこまでいかないでしょう」
と言えば、
「昨日、ある方の後妻の話がきたのよ」
とユリアーノ先輩は言った。そしてブランカ先輩まで
「私達被害者の会だけど、思うより状況も伝聞も悪いのかもしれないの…公爵令嬢カミューラ様のお力というか御家的な圧力が強く、セレナさんをいじめたのではなく婚約者のいる殿方に近づき唆した悪女を注意しただけとして触れまわっておりますの。勿論婚約者すげ替えの話は、元婚約者がそんな浮気をしてながら、影に日向に自分達を慰め導いてくれた心優しい方々が、新たに思いをあちらから寄せてくれて恋請われて、絆されたと夫人会や派閥の方々に広めていて、私達被害者の会は、魅力がない令嬢として噂を流されておりますのよ…だから…私達に当分良縁は回って来そうに無いのですわ」
と言った。
まさか当事者達が自分に都合の良いように噂を流しているなんて驚きだった。いや、あなた達停学中ですよね?
その間に夫人会のお茶会に参加ですって?
準備が良いというか手回しが良いと言うべきか。
「そういう方々だからこそ、停学になるぐらいの虐め行為ができたのですね…私達の評判も落とされているなんて。結局被害者加害者どっちもどっちなんですね」
思わず漏らしたその言葉に先輩方も頷き、お互い溜息を吐く。
しかし私は肝心な事を話さなければいけない。
「お茶会の事ですが、我がビルド侯爵家、お恥ずかしながら税も払えないぐらい貧乏なんですよ。勿論親戚も。朝から晩まで、どこかの貴族のメイドや侍従をやりお金を稼いでおりまして、期待できる方を紹介なんて出来ない状況なのです。本当に申し訳ありません」
と詫びた。
お二人は何故かわたしの紹介者に期待していたと言ってがっかりし肩を落として去って行った。
「うーーーん。あんなに肩を落として、絶望的な顔をしなくてもいいじゃないの」
と消えゆく声で文句を言った。
「お疲れ様、ティア。私のクッキーあげるわ。疲れた時には糖分よ、それとも今仕入れたネタ聞く?」
とクッキーを差し出され食べる。
「今は結構よ…本当に関係ないはずなのになんでこんな目に合うのだろう」
と言えば、
「さすが運の悪いビルド家」
とミンネは言ったけど、突然起こったこの目まぐるしい騒動に天を仰いだのは仕方がないことだった。
本当に全然関係ないって、どうして私なのよ。
「あら、ティアの方が今日はお下品よ」
と言われてもその時間を呪わずにいられなかった。
(もう嫌だ~涙が出そう)
すげ替えなんて乱暴な言い方は、誰かに聞かれたら大変だし、特に今回の件の高位貴族には…
我が家は貧乏。勿論、ビルド侯爵家親戚みんな貧乏ですよ!
働かない者食うべからずですから、貴族だろうが朝から晩まで文官や何処かの貴族のメイドや侍従をしていて、そんなお茶会だ、パーティーだなんて参加してません。
「言えなかったわ。家族にも。誰を頼れば…どうしよう…」
「おはよう、ティア!何、暗い顔しているのよ!」
元気溌剌のミンネに話そうか言い淀んでいると、同学年だった被害者の会のサマリア様が教室の扉で覗いていた。
私を見つけると、手を振り
「すみません、ティアラ様~お話聞いて欲しいんですけど」
と言われ、ミンネに目線だけ送り、彼女に近付いた。
「あの昨日の話なんですが紹介の!ティアラ様はビルド侯爵令嬢じゃないですか。どうかお一人ぐらい紹介者の中に侯爵位か伯爵位の方を入れて頂きたいんです。私は子爵位なので、そういった方とは知り合いがおらず…
その後は自分でやりますからお願いします」
と頭を下げられた。
位だ、階級だの話ではない。
私には男性を紹介出来る術も伝手もない。
ここは素直に、言おうと決める。
「サマリア様、私、本当に知り合いがいないのですよ。昨日の話では親類も可能という事でしたが、我がビルド家、税金も払えないぐらい貧乏なんです。親戚みんな朝から晩まで働いております」
と伏し目がちに言って様子を窺えば、大きな溜息をつかれた。
は!?
溜息吐きたいのはこちらですが!
「そうなんですか?では次のお茶会って期待薄って事ですか…わかりました。もう少しクラス内の友人に頼ってみます~」
と興味を無くした表情と態度で足早に去って行った。
ハァーーー
何故こんな突然知り合いになった方に気を使わないといけないの。
そもそも被害者の会に入りたいなんて一言も言ってないのよ!勝手に仲間にされて、迷惑なのですが、こちらは!
ハァーーー
まだ朝の教室で何度目かの溜息を吐く。
「ティア、深いねぇ。溜息ばかり吐いていると幸せ逃してしまうわよ。それでどうしたのよ」
と聞かれ、恥も捨ててミンネに被害者の会を相談する。
プッハッハハハーー
笑い声が響いている。
そうでしょうとも。男友達が多いミンネにとったら私みたいな悩みなんて笑い話のネタよね。
少し捻くれながら笑っている彼女を睨む。
「アッハッハハッハハハ、今そんな風になっているの。王子様達の破棄騒動がまさか当時者外で波紋を広げているなんて予想外!
ティアだけが婚約破棄されたと思っていたのに…ハァッ凄いね、高位貴族って横取り上等ってことでしょう?セレナさんとたいして変わらないよね」
と大きな声で笑って話す。
まぁ、それも当時者がいないから、こんなに堂々と出来る話であって…
「ティアラ様、婚約破棄なさったの~!」
とクラスメイトにばっちり聞かれ、興味の的、いやただのネタ話にされてしまった。
こんな時にどんな顔をするのが正解か教えてほしいものだ。引き攣った笑顔で、
「仕方ないことですわ~」
と当たり障りなく言った。
私なんて小物の話題は昼食までもつわけもない。
「大変よ!ビッグニュース!!セレナさんが、王子様達生徒会メンバーを黒魔術で操っていたらしいわ!今その発表で色んなところで騒がれているわ~」
「嘘~!」
「詳しく教えて!」
昼食はそれどころじゃなくなって、ギャンギャンと盛り上がっていた。
少しホッとした、話題が移って…後ろから影がさした。
「ごめんなさいね、ティアラ様、お食事途中に話しかけてしまって…」
と申し訳なさせそうに小さい声で声をかけられた。
嫌な予感はビンビンする…
振り向きたくない…
だけど、
「いえ、…ブランカ先輩、ユリアーノ先輩…」
…
「「とても短い話ですぐ終わりますの」」
と二人は言った。
この二人が揃った時点で被害者の会のことだろう。
「はい、承知しました。席を外します」
とミンネに目線をやった後、二人の後について行く。
ブランカ先輩が口火を切った。
「昨日のお茶会の招待する方の話です!出来れば年上を私達希望しておりまして…」
ユリアーノ先輩も
「後妻とかは絶対嫌なんです」
「そんな先輩方そこまでいかないでしょう」
と言えば、
「昨日、ある方の後妻の話がきたのよ」
とユリアーノ先輩は言った。そしてブランカ先輩まで
「私達被害者の会だけど、思うより状況も伝聞も悪いのかもしれないの…公爵令嬢カミューラ様のお力というか御家的な圧力が強く、セレナさんをいじめたのではなく婚約者のいる殿方に近づき唆した悪女を注意しただけとして触れまわっておりますの。勿論婚約者すげ替えの話は、元婚約者がそんな浮気をしてながら、影に日向に自分達を慰め導いてくれた心優しい方々が、新たに思いをあちらから寄せてくれて恋請われて、絆されたと夫人会や派閥の方々に広めていて、私達被害者の会は、魅力がない令嬢として噂を流されておりますのよ…だから…私達に当分良縁は回って来そうに無いのですわ」
と言った。
まさか当事者達が自分に都合の良いように噂を流しているなんて驚きだった。いや、あなた達停学中ですよね?
その間に夫人会のお茶会に参加ですって?
準備が良いというか手回しが良いと言うべきか。
「そういう方々だからこそ、停学になるぐらいの虐め行為ができたのですね…私達の評判も落とされているなんて。結局被害者加害者どっちもどっちなんですね」
思わず漏らしたその言葉に先輩方も頷き、お互い溜息を吐く。
しかし私は肝心な事を話さなければいけない。
「お茶会の事ですが、我がビルド侯爵家、お恥ずかしながら税も払えないぐらい貧乏なんですよ。勿論親戚も。朝から晩まで、どこかの貴族のメイドや侍従をやりお金を稼いでおりまして、期待できる方を紹介なんて出来ない状況なのです。本当に申し訳ありません」
と詫びた。
お二人は何故かわたしの紹介者に期待していたと言ってがっかりし肩を落として去って行った。
「うーーーん。あんなに肩を落として、絶望的な顔をしなくてもいいじゃないの」
と消えゆく声で文句を言った。
「お疲れ様、ティア。私のクッキーあげるわ。疲れた時には糖分よ、それとも今仕入れたネタ聞く?」
とクッキーを差し出され食べる。
「今は結構よ…本当に関係ないはずなのになんでこんな目に合うのだろう」
と言えば、
「さすが運の悪いビルド家」
とミンネは言ったけど、突然起こったこの目まぐるしい騒動に天を仰いだのは仕方がないことだった。
本当に全然関係ないって、どうして私なのよ。
「あら、ティアの方が今日はお下品よ」
と言われてもその時間を呪わずにいられなかった。
(もう嫌だ~涙が出そう)
20
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
愛するオトコと愛されないオンナ~面食いだってイイじゃない!?
ルカ(聖夜月ルカ)
恋愛
並外れた面食いの芹香に舞い込んだ訳ありの見合い話…
女性に興味がないなんて、そんな人絶対無理!と思ったけれど、その相手は超イケメンで…
【完結】フェリシアの誤算
伽羅
恋愛
前世の記憶を持つフェリシアはルームメイトのジェシカと細々と暮らしていた。流行り病でジェシカを亡くしたフェリシアは、彼女を探しに来た人物に彼女と間違えられたのをいい事にジェシカになりすましてついて行くが、なんと彼女は公爵家の孫だった。
正体を明かして迷惑料としてお金をせびろうと考えていたフェリシアだったが、それを言い出す事も出来ないままズルズルと公爵家で暮らしていく事になり…。
すいれん
右川史也
恋愛
植物しか愛せない大学生の慎太郎は、大学で、蓮のような傷を持つ明日香に出会う。
植物しか愛せない――それでも人間を愛したい慎太郎は、明日香に話しかける。
しかし、蓮のような傷がコンプレックスで明日香は他人と接するのに強い抵抗を感じていた。
想いがずれる二人。しかし、それでも互いは次第に惹かれ合う。
二人が出会い、本当の愛を見つける恋愛物語。
※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』にも掲載しています。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
初恋の還る路
みん
恋愛
女神によって異世界から2人の男女が召喚された。それによって、魔導師ミューの置き忘れた時間が動き出した。
初めて投稿します。メンタルが木綿豆腐以下なので、暖かい気持ちで読んでもらえるとうれしいです。
毎日更新できるように頑張ります。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる