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120[完結]今日も楽しくいきましょう
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「……ミランダ様のご入場です」
教会の扉の向こうから聞こえ、静かに扉が開く。
「本当に私で良かったのかい?」
義父に昨日の食事の時も言われた台詞。急に、マリングレーの国王(父)が兄達に変わり、王妃(母)と予定変更で来たものだから、酷く遠慮している。
「お義父様じゃないと困ります。二人で歩く練習もしたじゃないですか!」
「でも、国王陛下がおられる訳で…御仁の目が見れない…」
「ほら、行きますよ」
と付き添いのイズリー家の使用人達にも心配されている。
歩いてしまえば、もう直線に待ち構えている王子様まで一直線だから問題ない。
…とチラッと横を見ると、リリエットが祈るようなポーズでこちらを見ているし、騎士が水色のドレスの方を抱えて扉に歩いていた。
「何かありましたかね、お義父様?」
「みんな私達に注目している。具合が悪くなったのではないか」
確かに随分と貴族の皆様が参加している。私達に視線が集まっている中…
…
前を見ると、アンドル様がボォーとしているし、ここにきてまだ新しい表情を見せるのかと驚いた。
全くこの人は、なんて表情豊かなんだ。
いや、いいのかあの気の抜けた顔は!
この国の王子様が!
「アンドル王子は、幸せ者だ」
と義父が小さく呟いた。
あの顔が幸せ顔?
それならいいのかしら?
私の習った公務の作法や表情とは違うような…ふふふ、どんな顔をしてもいいのね。
誰も怒っていない。
みんなニコニコしているし。
「今日も楽しいわ、お義父様」
「それが一番だよ、では、ね」
引き渡された白い手袋の彼の手に、自分の手を重ねた。
僅かに震えてしまう。
その様子を私の目を見て、また表情を変える。
エスコートされ、予め決まった文言を宣誓する。私の手を握る、その力に少し驚き、私しか見ていないアンドル様が、熱に浮かされたように、
「美しすぎるよ、ミランダ…言葉が見つからない」
と言うから、何か嫌な予感がした。周りを見ていないような。…危険を感じた。
「この場のキスは短いのですからね、練習通りで」
と警告をしたにも関わらず…濃厚な方のキスを頂き、思わず全力で彼の胸を叩いた。
振り返れば、拍手しながら笑われているし。
「絶対反省案件ですからね」
と言っても喜びが上回って、全く反省している様子がないまま、笑顔で手を振っていた。そして国民が、待つ場所に行く。
「ミランダ、みんな笑顔だね。私一人では、こんな沢山の人を笑顔に出来なかった。君に出会えてから見れる光景なんだね。なんか感動しちゃってさ。もう何をするのも喜びがいっぱいで、こんな事自分に起こるなんて思いも寄らなかった…ありがとう」
「御礼なんて。今、ここにどれぐらいの人達が私達をお祝いに来てくれたのでしょう…凄い景色ね。本当にみんな笑顔なのね。…注目されるのは、苦手だなと思うのに、私を知ってくれてありがとうという承認欲求みたいなのもあるの、おかしいでしょう?」
「いや、全然。私なんて、始め君に自分を知ってもらいたかったけど、次に私達の事を他者に知ってもらいたくなった。いや、見せつけたくて、ミランダは、私の隣という風に思って欲しかったのかな。全て願いが叶ってしまった…
でも、不思議に願いは次から次に生まれてきて我儘なものだね」
「あら、全部を、叶えようとするからではないかしら?そこは、希望にすれば、自由な感じしません?王宮は確かに窮屈な面が多々ありますけど、先日の温室にソファを入れたり本棚を入れたりと、中々充実した希望が叶いましたし…アンドル様が、植物を愛でている近くで、私は読書をする。素敵でしょう。私はこれからもお互い自由で気の向くままお喋りして、時間を過ごすような、楽しくいきたいわ。だから次から次に願いや希望を出し合いましょう、叶っても叶わなくても、ずっと口に出していきましょう」
と言えば、アンドル様は優しく私を見つめ、握った手を空に向けて上げた。
「皆さん、本日は、アンドル・クリネットとミランダ・クリネットの婚姻の祝いにお越し下さりありがとうございます。この国をより良く住みやすく、安心できる国にしたいと思います。我々だけじゃ叶いませんので、これからも皆さんのご協力お願いします」
と声を張り上げ、二人で大袈裟なほど手を大きく振った。なんでかそれが、とても面白かった。
叶っても叶わなくても、続く時間がある限り、みんなでいきましょう…一人の時も不幸せではなかったのは、結局どこかに人の手や干渉があったから…
そう簡単に本当の意味で孤独にはなれないと、みんなに教えてもらった。
「ハァ、希望を言わせて。このまま部屋に行きたい」
突然そんな我儘を言うアンドル様。笑顔が眩しい。
「あぁ、それは無理です。この後、婚姻の祝いの夜会でしょう?」
「希望を言っていいって言った」
少し不貞腐れた。
コロコロ表情を変えている。
急にどうしたのかしら?後ろに控えていたラナがガザリと包みを私にアピールしていたので、受け取ってから、アンドル様に差し出した。
「叶っても叶わなくてもと申し上げたはずです。これから私は、侍女達が待つ衣装チェンジを…私もあの時間をもっと短縮出来ないものかと思うのですけど…そう、このブーケの御礼として、ハンカチに刺繍をしたのですが、受けとって下さいますか?」
「忙しい合間に時間を作ってくれたのか!あぁ、もちろん。ミランダの刺繍久しぶりだな。文化祭の三年間のバザーハンカチは全て購入したけれど、今回もオリジナル?」
「ええ、一応…」
と差し出すとゆっくり包みを開ける。
「これは…私とミランダ!金髪の王子と水色髪のお姫様…何故三頭身?フッハハハ、可愛い、すっごい可愛いよ~」
「馬鹿にしてます?結構な自信作なのに!頭を書いたら後は身体だけど下に入らないから!」
「では、顔だけでも良かったのでは?でもこれがいい。可愛いし、また宝物だ」
と機嫌が直ったらしい。ハンカチを見て喜ぶ姿は、誰がみても微笑ましい。
流石ラナだ。
伊達に図書館からの付き合いではないわ、すでにアンドル様を把握している。
「さぁ、まだまだ今日は続きますね。頑張っていきましょう!」
「そうだね、今日はまだまだ続く。その意味わからないで言っているんじゃないかなぁ~。ちゃんと最後まで頑張ってね?」
とアンドル様はそれは妖艶に私の頭を撫でながら言った。
…私は、背中がぞわぞわしたのは、気のせいではなくて…
この日初めてアンドル様を暴君だと思った。まだまだ彼は色んな表情を私に見せる…
私達の毎日は、やってきてこなして、振り返れば思い出になる。
喜怒哀楽とは大変よく出来た言葉で、毎日が全部嬉しいだけじゃない。明日に希望を持ってもいいし、明日を適当に過ごしてもいい。人の為とか私の為とかあなたの為とか、時間の使い方も自分の感情も全部自由で我儘。
そんなことをあなたは教えてくれたから…
「アンドル様、私、今日も楽しいわ。ありがとう」
と最後の日まで言えたら、
それは、最良の幸せだなと思います。
~fin~
教会の扉の向こうから聞こえ、静かに扉が開く。
「本当に私で良かったのかい?」
義父に昨日の食事の時も言われた台詞。急に、マリングレーの国王(父)が兄達に変わり、王妃(母)と予定変更で来たものだから、酷く遠慮している。
「お義父様じゃないと困ります。二人で歩く練習もしたじゃないですか!」
「でも、国王陛下がおられる訳で…御仁の目が見れない…」
「ほら、行きますよ」
と付き添いのイズリー家の使用人達にも心配されている。
歩いてしまえば、もう直線に待ち構えている王子様まで一直線だから問題ない。
…とチラッと横を見ると、リリエットが祈るようなポーズでこちらを見ているし、騎士が水色のドレスの方を抱えて扉に歩いていた。
「何かありましたかね、お義父様?」
「みんな私達に注目している。具合が悪くなったのではないか」
確かに随分と貴族の皆様が参加している。私達に視線が集まっている中…
…
前を見ると、アンドル様がボォーとしているし、ここにきてまだ新しい表情を見せるのかと驚いた。
全くこの人は、なんて表情豊かなんだ。
いや、いいのかあの気の抜けた顔は!
この国の王子様が!
「アンドル王子は、幸せ者だ」
と義父が小さく呟いた。
あの顔が幸せ顔?
それならいいのかしら?
私の習った公務の作法や表情とは違うような…ふふふ、どんな顔をしてもいいのね。
誰も怒っていない。
みんなニコニコしているし。
「今日も楽しいわ、お義父様」
「それが一番だよ、では、ね」
引き渡された白い手袋の彼の手に、自分の手を重ねた。
僅かに震えてしまう。
その様子を私の目を見て、また表情を変える。
エスコートされ、予め決まった文言を宣誓する。私の手を握る、その力に少し驚き、私しか見ていないアンドル様が、熱に浮かされたように、
「美しすぎるよ、ミランダ…言葉が見つからない」
と言うから、何か嫌な予感がした。周りを見ていないような。…危険を感じた。
「この場のキスは短いのですからね、練習通りで」
と警告をしたにも関わらず…濃厚な方のキスを頂き、思わず全力で彼の胸を叩いた。
振り返れば、拍手しながら笑われているし。
「絶対反省案件ですからね」
と言っても喜びが上回って、全く反省している様子がないまま、笑顔で手を振っていた。そして国民が、待つ場所に行く。
「ミランダ、みんな笑顔だね。私一人では、こんな沢山の人を笑顔に出来なかった。君に出会えてから見れる光景なんだね。なんか感動しちゃってさ。もう何をするのも喜びがいっぱいで、こんな事自分に起こるなんて思いも寄らなかった…ありがとう」
「御礼なんて。今、ここにどれぐらいの人達が私達をお祝いに来てくれたのでしょう…凄い景色ね。本当にみんな笑顔なのね。…注目されるのは、苦手だなと思うのに、私を知ってくれてありがとうという承認欲求みたいなのもあるの、おかしいでしょう?」
「いや、全然。私なんて、始め君に自分を知ってもらいたかったけど、次に私達の事を他者に知ってもらいたくなった。いや、見せつけたくて、ミランダは、私の隣という風に思って欲しかったのかな。全て願いが叶ってしまった…
でも、不思議に願いは次から次に生まれてきて我儘なものだね」
「あら、全部を、叶えようとするからではないかしら?そこは、希望にすれば、自由な感じしません?王宮は確かに窮屈な面が多々ありますけど、先日の温室にソファを入れたり本棚を入れたりと、中々充実した希望が叶いましたし…アンドル様が、植物を愛でている近くで、私は読書をする。素敵でしょう。私はこれからもお互い自由で気の向くままお喋りして、時間を過ごすような、楽しくいきたいわ。だから次から次に願いや希望を出し合いましょう、叶っても叶わなくても、ずっと口に出していきましょう」
と言えば、アンドル様は優しく私を見つめ、握った手を空に向けて上げた。
「皆さん、本日は、アンドル・クリネットとミランダ・クリネットの婚姻の祝いにお越し下さりありがとうございます。この国をより良く住みやすく、安心できる国にしたいと思います。我々だけじゃ叶いませんので、これからも皆さんのご協力お願いします」
と声を張り上げ、二人で大袈裟なほど手を大きく振った。なんでかそれが、とても面白かった。
叶っても叶わなくても、続く時間がある限り、みんなでいきましょう…一人の時も不幸せではなかったのは、結局どこかに人の手や干渉があったから…
そう簡単に本当の意味で孤独にはなれないと、みんなに教えてもらった。
「ハァ、希望を言わせて。このまま部屋に行きたい」
突然そんな我儘を言うアンドル様。笑顔が眩しい。
「あぁ、それは無理です。この後、婚姻の祝いの夜会でしょう?」
「希望を言っていいって言った」
少し不貞腐れた。
コロコロ表情を変えている。
急にどうしたのかしら?後ろに控えていたラナがガザリと包みを私にアピールしていたので、受け取ってから、アンドル様に差し出した。
「叶っても叶わなくてもと申し上げたはずです。これから私は、侍女達が待つ衣装チェンジを…私もあの時間をもっと短縮出来ないものかと思うのですけど…そう、このブーケの御礼として、ハンカチに刺繍をしたのですが、受けとって下さいますか?」
「忙しい合間に時間を作ってくれたのか!あぁ、もちろん。ミランダの刺繍久しぶりだな。文化祭の三年間のバザーハンカチは全て購入したけれど、今回もオリジナル?」
「ええ、一応…」
と差し出すとゆっくり包みを開ける。
「これは…私とミランダ!金髪の王子と水色髪のお姫様…何故三頭身?フッハハハ、可愛い、すっごい可愛いよ~」
「馬鹿にしてます?結構な自信作なのに!頭を書いたら後は身体だけど下に入らないから!」
「では、顔だけでも良かったのでは?でもこれがいい。可愛いし、また宝物だ」
と機嫌が直ったらしい。ハンカチを見て喜ぶ姿は、誰がみても微笑ましい。
流石ラナだ。
伊達に図書館からの付き合いではないわ、すでにアンドル様を把握している。
「さぁ、まだまだ今日は続きますね。頑張っていきましょう!」
「そうだね、今日はまだまだ続く。その意味わからないで言っているんじゃないかなぁ~。ちゃんと最後まで頑張ってね?」
とアンドル様はそれは妖艶に私の頭を撫でながら言った。
…私は、背中がぞわぞわしたのは、気のせいではなくて…
この日初めてアンドル様を暴君だと思った。まだまだ彼は色んな表情を私に見せる…
私達の毎日は、やってきてこなして、振り返れば思い出になる。
喜怒哀楽とは大変よく出来た言葉で、毎日が全部嬉しいだけじゃない。明日に希望を持ってもいいし、明日を適当に過ごしてもいい。人の為とか私の為とかあなたの為とか、時間の使い方も自分の感情も全部自由で我儘。
そんなことをあなたは教えてくれたから…
「アンドル様、私、今日も楽しいわ。ありがとう」
と最後の日まで言えたら、
それは、最良の幸せだなと思います。
~fin~
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いつもありがとうございます。
あれっ?111話が 読めません?
教えて下さり、ありがとうございます。
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