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111 私は色々甘くみてました

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「リリエット、久しぶり!」

新学期を迎えました。夜会終了後から色々あって、少しのんびりしたら、もう月初め!

「良かったわ、リリエット、二年生も同じクラスで安心したわ」

と言えば、

「私もよ!あ、こんな風に気軽に話しては駄目よね。ミランダ様は王女様なんだから」

「やめてよ!手紙でも書いた通りそのままでお願い。ミランダ・イズリーのままで。確かに正式な養子縁組ではなかったけど、預かりという形でイズリー家では、少し気を遣われたけど、ようやく今まで通りを意識してくれているのだから。それにしてもリリエット、私、休みに会いに来てくれると思ったのに…」

話したい事が沢山あったので、イズリー家でお茶を誘ったのだけど…

「もちろん、会いたかったわ、だって知りたいことが盛り沢山だったもの。実は私とスタンルート…アンドル王子様の側近候補になって…夜会後から…働かされていた、のよ。王子が、あんな方とは思わなかった…でもミランダ、笑っているのね、良かったわ」

「リリエットは大丈夫?薄く目元に隈が出来てるわよ」

その後リリエットは、私を見つめ、しばらく無言だった。

「その間は何?何なの!」

「あ、私は、忙しいかったけどそのミランダも大変でしょう!そう、決定事項として、ダイアナさんは、進級試験にも落ちて、ウランダル王国の提案を受けマユリカ王女の侍女になり、マリングレー王国に一緒に行くそうよ」

「もうお会いすることがないの?マリングレー王国か、あの三人夜会でとても仲良しだったものね。あちらで楽しく過ごせたらいいわよね」

と言うに留めた。彼女が来たらすぐに私の前に現れて、文句を言うと思っていたけど。
私とアンドル様の賭け事は、冷静に考えて何故婚約者決めなんてものを決めてしまったのだろうと、非常に後悔した。
あの時の私、普通ではなかった。

「ハァー、リリエット、私、朝から遠巻きにされて挨拶しか教室でしてないの…嫌われてしまったのかな」

せっかく仲良くなった令嬢も教室内にいるのに!

「うーん、」

リリエットが遠慮がちに私にコソっと教えてくれた。

「ミランダ、あなた同学年の男子生徒から、絶対近づいてはいけない女生徒、第一位らしいわよ…」

あぁ、とうとう私も噂ランキングに入ってしまったのね。
ハァーーー

「あの夜会騒動が男子生徒を怖がらせたのね…確かに私もやってやると意気込んでいたもの…」

何故かリリエットが私を見て申し訳無さそうにし始めた。

「ごめんね、ミランダ…でも王女様なのだから気軽に近寄られて、被害にあったら困ると思うし…何事も距離感が大事だと思うの。私はこれは良いと思うわ」

頑張ってというポーズをされた。こんなリリエットは見た事がない。怪~し~い。

「…リリエットがこんな力説するなんて、噂の操作元…スタンルートさん?」

「ち、違うわ、ほら、ミランダは今は超取り扱い注意人物だから!」

これは、間違いなさそうだわ。

「酷い言われようね」

アンドル王子は、本当に私と勝負…婚約したいと思っている…という事?
花や手紙、本が届いてもどこか勝負という遊び、暇つぶしみたいな風に考えていた。友達の延長みたいな…

「リリエット、なんか私、凄く逃げ場がなくなっていくような?」

「やっと気づいたの、ミランダ。アンドル王子様は、非常にやり手よ。ディライド様に劣らずね。ディライド様は大丈夫なの?色々と…」

「確かに現在気まずいわ、夜会後にすぐイズリー領に視察に行ってしまったから…きちんと話は出来てないというか、当たり障りない対応をされているというか、難しいところ」

義兄とは登校の馬車でも話そうと考えていたのに、義兄から話題を振られ、王子様との賭け事について話せていない。でも義父や義母には伝えてあるから、知っているはずなのに…

協力してくれないのかなと、寂しい気持ちではいた。


新入生も入学してきて、とても賑やかになった。
でもまだ私に言いがかりを言ってくる者はいない…賭け期日まで残り三日。

「ねぇ、ミランダ、今年の一年生は騒がしくない?」

「そうかしら?」

「私達の時よりうるさいわよ」

とリリエットは言うけど、それはどうかしら?私としては、ダイアナさんやマリアーノ様のような勢いのある方を求めているのだけど…

朝、毎日お義兄様と登校する私は、相変わらずだ。

新入生の黄色い声…噂話…視線…は感じる。

そして、教室の入り口の側を居城にしているマリアーノ様と取り巻き令嬢が、無言で通る度に、ジッと見つめられ圧力をかけられている。

どうせなら、私の元に来て言いがかりをつけて欲しいのに!


帰りの馬車の義兄は、ポツリと話し始めた。

「ミランダちゃん…王族復帰したし身分的にアンドルと釣り合いが取れているし、あいつは、伯爵令嬢でもミランダちゃんに婚約者の打診をしたよ」

「ええ、夜会の時に聞きました。賭け事という勝負を持ちかけられ、あの場の雰囲気に流されてしまって後悔はしてます。お義兄様ならすぐ私に協力してくれると思ってましたのに、その件に全く触れないので、アンドル様側かと思っておりました」

と私も本音を話す。

「ミランダちゃんは、アンドルの婚約者になりたいの?」

と聞かれ、

「婚約者なんて、私には無理です。この国のお姫様になるって事ですよね?私では相応しくありません」

「王女なのに?」

「生まれはそうであっても、何も知らないのですから…」

私は、本当に色んなことを知らなかった。義母のお茶会に呼んでもらって、貴族の事を知ってばかり…
みんなに驚かれて、その度に恥ずかしさが増す。無知の自分、学ぶことは楽しいけど、王女達やマリアーノ様達、貴族令嬢は人の揚げ足取りや蔑める事が、当たり前みたいで、そういうのは知りたくなかった。
義母の真似も出来ない。

「王子の婚約者になりたくないけど、アンドルは好きなの?」

「アンドル様を好き?友達として楽しいですし、ドキドキもします、怒ったり悲しかった事もあります。あの方といると知らなかった世界が広がる感じがします…でも好きかどうかはわからない…です」



「そうか、アンドルはミランダちゃんにとって特別なのか…ずっと考えていた事があるんだ。私にとってミランダちゃんは特別だよ、気づいていたのに誤魔化していた。隣にいてくれたから、それが続くってその関係を守りたくて…王子の婚約者になりたくないなら、私の婚約者になってイズリー領で、いっぱい好きな事して楽しい事して生きていけばいい。貴族のしがらみなんて伯爵領には、それほど関係ない!」

「お義兄様…」

ガタンと馬車が止まった。

「アンドルとの賭け事は三日後だよね。同じ日に返事を聞かせて。ミランダちゃんには、選択肢があることを忘れないで欲しい」

何も答える事が出来なかった。
義兄の真剣な表情と声が、私の考え無しの甘さを引き裂いた。

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