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100 ダイアナ・ガトルーシー 5

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ダイアナside

年が明けて学校に行けるようになって、絶望的状況から抜け出せた。

「とにかく、学校で問題を起こさない条件で、再び通えるのだから真面目に勉強をした方が良い」

とサイファ様は口煩く注意する。遠くにアンドル王子様やディライド様、グレゴリー様がいるのに、追いかけては行けないなんて…歯痒いわ。

「サイファ様、偶然会ったなら挨拶しても良いでしょう?」

と聞くと物凄く嫌な顔をされた。
馬車留に行けば、必ず誰かには会える。うちの馬車なんて兄の仕事ついでに来てもらうのだから、時間なんて決まっていない。

ふふっふふふ

「あ、ディライド様だわ、ディライドさーまー」

と絶対聞こえているはずなのに!

「ダイアナ嬢、君さ、また村人Aだっけ、それになりたいの?」

ゔ!?

サイファ様からキツいお咎めを食らった。

「偶然会ったから、謝罪をしたくて」

「過剰に関わらないって約束の元にファンド侯爵家とイズリー家に許可を得て、学校に通えているんだよ。男爵家は現在懐事情が厳しいと男爵も嘆いている、来年も学校に通いたいなら、特待生を目指すべきだと忠告を受けているはずだよ。ダイアナ嬢、アンドル王子にもこんな状態を知られたら、夜会の招待状が無くなる可能性もあるよ」

とサイファ様は私に脅しを言う。

「ゔぅ、サイファ様のいじわる~」

勉強よりもディライド様に、謝罪を受け入れてもらった方が、私の立場は安定するのにーーー

サイファ様と私の関係は、ずっとこんな感じで続いていた。私に関わってくれるのはこの人だけ…

「まるで母親か小姑みたいだわ、見張られているし!」

私が望んでいる関係性とは全く違うけど。

「何が村人Aよ。それモブだし。夢見の乙女って何よ!少しも面白くない。最悪、最低な世界よ。同郷の転生者がいた事が二人って、こうなるわよ、ハァー最悪。唯一があの偽物が、王女様なのにアンドル様に好かれてないのが救いね。結局ヒロイン渋滞で分からなくなって、悪役がヒロインになったりするのよ。ザマァ」

でも、マリアーノは絶対にヒロインはないな…
今、ヒロインの座は空席?
ヒロインからモブに落ちて、再びヒロインってあるのかなぁ…

「…ダイアナ嬢、一人言が漏れているよ。みんな今では、君から離れているから聞いている者はいないかもしれないが」

「ああ、サイファ様、一つ聞いていいですか?あの偽物がアンドル様の婚約者になりたがっていて、私はそれに対抗すれば良いのですよね?王女を婚約者にしたくないというアンドル様の意思ですよね」

「夢見の乙女同士、同郷で転生者だっけ、その立場で話合って欲しい、王女様が危険思想の持ち主らしくてね、立場上、対等で対抗出来るのがダイアナ嬢だけだから」

なんか小難しい事を、相変わらずサイファ様は話す。

「ん~、アンドル様はお好きな方がいるって事ですか?」

と聞くと少しだけ表情が動いた。


「相手は誰ですか?そのぐらい教えて下さいよ。私邪魔しませんから!」

「馬鹿な事を言わないでくれ、決まったお相手がいるなら、発表されているのでは?あぁ、マユリカ王女も参加されると返事がきたよ。ダイアナ嬢、気を付けた方がいいよ」

「え?マユリカ王女?」

何故退場した悪役王女が、戻ってくるのよ!絶対変でしょ…

アンドル様の相手が決まってないなら、物語は、二周目って事?

…私は、小説の物語だと思っていたけど、まさかゲームみたいな感じ?


「なんだぁーーー」

「えっ、急に大きな声出さないでくれよ」

ふふふっふふふっ



それは、突然私に天啓が降りたかのような衝撃だった。

学校の周りで、マリングレー王国の神官が女生徒に声をかけているという話題。
私はその話を翌日知った。

「これが、始まりよ!」

絶対間違いないわ。一周目の始まりは、ウランダル王国の人攫いの事件だった。二周目は、マリングレー王国の不審者に捕まる…これがヒロインの始まり。

すぐに校門の前で待機するけど、全然現れない。
もしかして、昨日不審者に捕まった女生徒が、ヒロインとして歩き出したの!?

聞いて回ったら、すぐにアンドル様が警備隊に捕縛させたと聞き、女生徒もヒロインになり得る素材はいなかった。

数日、校門を張っていると以前見た事のある神官服の男性。自ら近づき、話しかけた。

早く攫ってよ!

「変わった事件はありませんでしたか?この学校に突然現れた令嬢はいませんか?」

はぁ!?
意味がわからない…

「発見、捕まえろ」

との声で神官達はまた捕まった。早いわ!主要キャラが助けに来ないなんて!

まぁ、いっか。
きっかけは作ったし。

「アンドル様~、私が神官に狙われているんです~」



まさかの無視!
何でよ、サイファ様に聞いても、鼻で笑われたし、頭のおかしい女みたいな位置じゃない!

全くわからない。
…あの偽物は、二周目は完全な悪役王女なのはわかる。

「なんか、聖女様の命令で動いているって言っていたよ。アンドル王子様の婚約者の座を狙っているって本当なんだ」

「でも、聖女様って王女なのに嫉妬深くて怖いね」

学校中の噂になっている。最近サイファ様も私の見張りに来ないで、マリングレー王国の対策みたいだし…つまらない。

全くヒロイン感がしない。モブなの私?

物語の進め方がわからない、今度こそ間違えたくないのに。
そもそも、どこで違くなったのか…
あの偽物が出しゃばったから?

「ダイアナさん、試験に集中して下さい。あなたは前回受けていないので、この進級試験にかかっていますよ」

みんな煩い。
試験が終わって、周りを見渡してもサイファ様もアンドル様もディライド様もいない…
つまらない。

私を追い抜いて行った仲良さげな二人…
ケッ!

あ、れ、は、入学式後から苦労して近づいた子爵家の嫡男、名前は…スタンルート。隣にいるのは、いつも野暮地味眼鏡女の隣にいる女…

「あれ!?」

二人は一緒に帰っている。どうして?


物語の最初、マリアーノの取り巻きと人攫いに会って、モブが死ぬはずだった。
思わず、

「ねぇ、ちょっと、あなた達!マリアーノ様の取り巻きよね?」

話しかけに行った。顔を見るとはっきり思い出した。私はこいつをターゲットにしていた。

「は!?失礼ね、違うわよ。行きましょう、スタンルート」

「婚約者?」

と聞くと、女の方が、

「そうよ」

と言った。



私は、スタンルートに手を出してマリアーノの取り巻きを誘き寄せた。
…ミランダ・イズリーは、マリアーノの取り巻きじゃない?
では、なんで一緒に捕まったの?



ずっと考えてもわからなかった。

「ダイアナ嬢、君、夜会のドレスないだろう。王宮に予備のドレスを貸し出してもらえる許可を得たよ。その代わりある王子様が夢見の乙女について聞きたい事があるそうだから、招集に応じてくれるかな、秘密だよ」

とサイファ様が言った。ドレスがなかったから都合が良いし、王子様って事はアンドル様にも会える!更に新しい王子!二周目の新キャラ!

「もちろん行きます~」

急に希望が見えて、疑問が消えた。



「初めまして、夢見の乙女さん」

と声をかけてくれたのは、クール系王子を体現しているような王子様で終始見惚れてしまった。水色の髪がまたセクシーーー

「では、ティアも君の話す物語を知っていて、君の邪魔をした偽物。それで二人ともニホンという国の同郷で前世の知識を持ったテンセイシャという存在なんだね」

声までイケメン…

「はい、そうです、リウム王子様~」

「ありがとう、疑問に思っていた事が解決したよ」

と言われると、サイファ様に夜会のドレスを選んで来なよと促された。
嫌よ。まだこのハーレムに居たいわ!

結局、両脇を王宮侍女に抱えられ、衣装部屋に入れられた。

「何よ、もう~」



選び終わり、部屋から出て歩いていると、

「あら、久しぶりじゃない?ダイアナ」

と馴れ馴れしい声に振り向けば、マユリカ王女がいた。

「…お久しぶりです、マユリカ王女様…」

「そんな怖がらないでよ、私も反省しているの。ハァ、もう私の未来も決まってしまったし、悔しさはあるけど、それよりもあの高飛車聖女気取りよ。アンドル様の婚約者になりたがっているですって…こんな屈辱ないわ…協力しなさいダイアナ」

えっ?

私は、マユリカ王女の側近に再び両脇を抱えられた。
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