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71 友達になりました

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王宮の花壇が見えるサロン。
まぁ~可愛い!

そんなに広くない。テーブルセットは、二脚に、手触りの良さげなソファー。(触ってない)良質なものだらけだと分かる室内。
そして私は、椅子に座っていた。

「これは、東方の国の炒った豆を茶にしたもので、こっちは、団子というモチモチの食感で…今日の為に考えてくれたレシピなんだ」

おぉ~、新作ということ?
誰が考えたか聞いた方がいいのかな?

「甘くて滑らか、もちもちしていて、何でしょうか!?これは!幸せな感じがします!初めて食べました」

「やっぱり、南のイズリー領でも知らなかったか?これは、先日、東方から来た商人が届けてくれた豆の商品なんだ。随分と変わっているらしくて、聞いたことのない話をするらしい。料理長がいくつもレシピをプレゼントされて喜んでいるよ。一度王宮に呼ぼうと思っていて、商隊だから旅や東国の珍しい話が聞けると思うのだけど、一緒にどうかな?先程の本の話で、ミランダ嬢は、旅の話とか興味あると感じたが?」

確かに商隊の話なんて聞いたことはない。
興味はあるけど、王子様とご一緒にというのはどうなの?
…まるで、友達に誘われているみたい…

まさか!王子様は、さっきから私と友達になりたいと言っていたの!?確かに言っていた…
それはちょっと身分が違うわ、畏れ多いでしょう!

身分が…
あぁ、もしかして、こうやってみんな断っているのかも。
グレゴリー様もサイファ様も友達というより、今は、側近、王子様という立場を優先しているのかもしれない。
もちろん、お義兄様も。
もしかして、最近お義兄様がイライラしていたのは、友達と側近という立場の狭間が辛くて…
昔のように付き合えないとか?

誰かが、間を取り持つしかないわね。
ラナを見た。
目が、泳いでいる?何故なの?私しかいないってこと?

王子様を見た。
笑っているのに、物凄く不安な目と空気を出している。話す話題を探している?少し落ち着きがないわ。
まるで、待てを言われた犬みたいだわ。

この雰囲気は溜息の船乗りだわ。

私の答えは…

「…もちろん、聞きたいです。面白そうという興味本位ですが。勇気を持って私も言います。(身分がありますが)お友達になりましょう(必ず、お義兄様との友達として仲を取り持つわ)」

手を差し出した。

「えっ?何、これは?」

慌てたアンドル王子を見て、握手というのも知らないとは、驚いた。物語の中でこういった行動が、友達を作るきっかけだと読んでいたので、私も初めてだけど、王子様も初めてなんて…
一人で塔にいた私と一緒。

私もリリエットとこんなやり取りはした事なかったけれど。
自信を持って、

「あぁ、知りませんか、絵本で見ていた場面なんです。これからよろしくという行動です。握手と言います」

ここは、友達作りの先輩として、教えてあげるべきだわ。
王子様なのに、知らなかったら、後々恥をかくもの。
こういう場面はきっと増えると思うわ、他国の人達にも会うでしょうし、友達作りをお互い頑張りましょう!!

「…よろしく…(握手は知っているよ)」

「はい、お任せ下さい。(次回は必ず王宮にお義兄様を連れてきますね)」

軽く手を握りあった。

「プッフフフ、やっぱり温かいな、ミランダ嬢は。そして不思議だな楽しいんだ、君といると!」

何だか、変な感じだわ。
これは、友情の証のはず…。物語上で面白い扱いはされてない。
…何か違うのかな?

「このお茶が温まるからでしょうか?これを冬の農村のみなさんにも飲んで欲しいですね」

「それはいいね。実は、この豆、荒地や冬場にも強いらしいから、各地方の村に配ろうかなんて考えていたんだよ…レシピや知らない豆だって、『無料』だったらみんな受け入れてくれるだろう。育った豆を種にしてもらったり…建国祭の時に配る…絶対国民が喜んでくれる。商隊に話を聞くのが、楽しみだよ」

無料でくれるなら、みんな喜ぶわよね。
建国祭…お祭りはみんなが笑顔でいて欲しいもの。

「とても良い考えですね」

相槌を打つ。
その関係もあってか東西南北の領地の話をした。現在、クリネット王国としては、安定期に入っていて、新たな発見や展開がなく、それは国として勢いもなく、経済が回らないと話してくれる。
自分達の領地しか目が行き届かないけれど、特産物をかけ合わせたら、新たな経済発展が生み出せるのではないかなど。

「だから、一年生の文化祭の出し物は、東西南北の領地を扱っていたのですね。確かに安定というのは、聞こえは良いことですけど、何か面白味や期待、驚きがあると、人が動く原動力になりますよね、アンドル王子様の話はよくわかりますね」

「つい、仕事の話をして…本当に面白いかい?合わせていないか、何を話していいかわからなかったから、つい、自分のことを知ってもらいたくて。
今、取り掛かっている執務の話をしたのだけど…」

「いえ、大変勉強になりました。こうやって、国が発展していき、経済が回るなんて、話が面白いのでスラスラ頭に入ります。是非クラスメイトにも紹介したいですね」

すると、照れたような顔してから、

「ミランダ嬢は、今、一番興味あることは何かな?」

「興味ですか…」

今、私の机の上に置いてあるのは、薬草園の話、ね。
そう言えば、月下美人はあの後どうなったのかしら?
出来れば、ここまで来たのだから後日談が、欲しいわ。

「月下美人、出来れば、月下美人が現在どうなったか知りたいです」

と言えば、テーブルマナーを無視して、ティーカップがガタガタと揺れながら、目の前の王子様は、立ち上がる。

どうしたの?突然?
月下美人は絶対君主さんだから、私個人なんて見せれないものだったかしら?不敬罪?

「アンドル王子様、あの、ご迷惑をかけた発言…」

「興味を持ってくれたのか、一緒に見てくれるのかい!」

どうしたの?凄い喜んでいるような?大丈夫かしら?

「出来れば、その後が気になりまして…」
「さぁ、行こう。王宮の個人の温室にあるんだよ」

「ええ…」

またエスコートらしい?
廊下を歩くと、誰にも会わない。
そう言えば、図書館からこちらにくる道も誰にも会ってない。…ラナとベテラン侍女の二名のみ。

「あの、誰ともすれ違いませんね」

人手不足だからかな?

「あぁ、ここは、王族のプライベート居住区だから」

えっ!?
私勝手に王宮から、王族のお宅訪問に場所替えしていたの?
図書館から…確かに狭いサロンだとは思っだけど!

あの場所は、王族の家の一室!?だからラナの目が、泳いでいたの?

普通に座ってお茶しちゃったわ。こんなこと他の令嬢に知られたら…!

…なんて考えていたら、温室の中にいた。

「これ、ほら、大きく蕾が膨らんできたでしょう。夜にしか花が咲かないんだよね。本当は見せたいのだけどね」

「いや、いや、相変わらず、絶対君主!」

「えっ!?」

王子に驚かれた。

「えっ?あぁ、ドンと迫力が胸に打ち響いて。考えられない、今、ここ!」

「大丈夫かい?どうした?」

「失礼しました。色々と動揺をしてしまいまして。また意識が彼方に行っておりました!本日のことって秘密に出来たりしますか?」

「秘密?」

「その~、今、大変なことに気づいてしまったのですが、他の令嬢に知られたら大騒ぎになるのではないかと…一応髪色を変えてますが」

ただの友達なのに、これがあるから王子様は友達がいないんだわ~

「確かに、そうだね。一応気づかれはしないはず。図書館のあの部屋から廊下はすでに王族の居住区、入れるのは館長もあの部屋のみ。だから今もミランダ嬢は図書館にいることになっているよ」

それはご配慮ありがとうございます?かしら。

私、初めから館長に、あの部屋に行けと言われていなかったかしら?
初めから、王族の居住区へ…

「ほら、ミランダ嬢、ここを見て、真っ直ぐ伸びている茎が頑張っている感じで元気をもらえるんだ」

隣の王子様は、月下美人さんを友達のように私に紹介してくれる。
嬉しいのか…
友達紹介って恥ずかしいけど自慢しちゃうよね。

「もうすぐきっと大きな花が咲くんでしょうね。楽しみですね」

まぁ、今日は、入ってしまったのは仕方がない。内緒の友達記念ということにしてみよう。
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