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55 お義兄様の様子が変です

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お義兄様が、最近ずっと一緒にいる。居るのは、普通なのだけど、明らかに動き、立ち位置がおかしい…
私は、立ち寄りたい所もないのだけど、お義兄様は私の護衛じゃない、偶には、羽をのばした方がいいと思う。

「お義兄様、最近どうしたのですか?私、何かに狙われていますか?」

一応これは冗談で言ったのだけど…
校内を歩く時も、周りを警戒している様子がある。
いつも通り表面上は、笑っているけど…

「うん、何かよくない。凄くよくない雰囲気なんだよ、ミランダちゃん」

やはり意味不明です。

「私がですか?それとも学校、クラスの雰囲気?みんな仲良く話していますが、問題がありますかね?」

考える。情報通のお義兄様なら、私の知らない噂とか知っていそうだし。

「いや、クラスに問題は全くない。問題は、別だよ。まさかあいつが本質を見抜いたというのか?ありえない。あんなお子様に…いや、外面を見ずに性格に惹かれた?ありえない。出会いがない。関わりがない。一緒にいた事実がない…どこで会ったというんだ…」

最近のお義兄様は、いつもこうなってしまう。ぶつぶつと独り言が多くなっている。
やっぱり、悩みごと!

お、これは!きっとそう。
聞くだけなら私も出来るし、少しはスッキリ出来るのではないかしら?

「お義兄様、次の休日…時間がありましたら、一緒に街に行きませんか?」

誘ってみる。

「えっ!行くよ。最後に一緒に出かけたのは、イズリー領の祭り後の教会にお金の計算と書類のやり取り。フルーツジュースを飲んで帰って来た」

私も日誌を見れば分かるけど、記憶力の差でしょうか、驚きです。

「お義兄様、とりあえず薬草園に行く時にお友達とお菓子を交換したりするそうなんですよ。(リリエット情報、本日入荷)あの出来れば、みなさんが、好きそうなものをお義兄様にも見てもらいたくて…」

私には、お友達と何かするなんて経験もなくて、実は年齢の近い令嬢とのお茶会とかも経験はない。少しずつお義母様が作法を教えてくれて、ご自分の友人などに紹介してくれている。
年上の貴婦人は、所作も丁寧で、会話運びなど失敗しても流してくれて勉強になっている。
でも、やっぱり同年代の好みも知りたいからお義兄様に頼る。

「もちろん、菓子屋や雑貨店、書店にも行こう。荷物持ちは任せて欲しいし。最近人気のお店にも行こうか、調べることが出来たね、楽しみだな」

あぁ、良かった。
お義兄様の心からの笑顔だわ。
楽しみが伝わってくる。
最近様子が変だったから、リリエットに相談して良かった。やっぱり悩み事のようだったし。自然とお義兄様を誘えたわ。
リリエットに感謝ね。お菓子とは別に何か買ってこようかしら?

「お義兄様、リリエットに日頃の感謝を込めて贈り物をしたいのだけど、何がいいかしら?」

「年頃のご令嬢だからね、髪を結ぶリボンとか髪留めなんかどうかな?ミランダちゃんも買ってお揃いにしたり」

「お揃い!まぁ、それは、私、物語で読んだことあります。仲良しの証だったり、姉妹でつけたり、恋人との絆だったりする品物ですよね!私なんかが、リリエットとそんな大事な証を送って怒られないかしら?」

「大丈夫だよ。リリエット嬢は、ミランダちゃんをとても大事に思っているから、喜ぶと思うな」

お義兄様に背中を後押しされた。
私もお出かけが、凄く楽しみになった。
馬車留の前方から、

「やぁ、久しぶりだね。ミランダ嬢、ディライドはいつも会っているけど。今、帰りなんて、少し遅いね」

アンドル王子様から話しかけられ、驚きつつもクラッときた。食堂で美味しいと言っていた笑顔だわ。眩しいわ。
目が眩みそう…

「アンドル王子様、こんにちは(久しぶりではないよね、食堂から一週間も経ってないし)本日は、図書室に立ち寄りました。もしかして、お義兄様をお待ちしておりましたか?」

またお義兄様関連でしょう。

「いや、全然。最近ディライドが睨むから。それより随分と楽しそうだったね、(羨ましい!)」

ん?最後ゴニョって言ってわからなかったけど。違ったの?

「はい、お義兄様とお出かけの」

と言うと義兄様が、私の言葉に被せるように、

「うぅん!これはアンドル様には関係ない話ですから!早く王宮に戻られて執務を行った方が良いと思いますよ。こんな目立つ所で立ち話なんて、また、ミランダちゃんが誤解されたくありませんから、ね!」

王子様にまるで啖呵を切るように言う。

あぁ、まだお義兄様はマユリカ王女様の件を怒っているのね。
そしてアンドル王子様の悲しそうな顔。本当に表情豊かになって…
この場所、外だというのにグッと感じる重さ…
グレゴリー様は、難しそうな顔をしているし、早く馬車に乗ってしまいたいわ。
またなんか居た堪れない空気というか、ピリピリする空気、お義兄様のツンケンした言動が良くないのだけどね。

この場、この話を終わらせて、早く帰りましょう。

「では、アンドル王子様、グレゴリー様、ご機嫌よう。また明日」

と言えば、

「お久しぶりです~ディライド様ーーー
私です。ハァ、ハァ、ダイアナです。今日から学校に復帰したのですけど、ディライド様に全然お会い出来なくて悲しかったです」

この甘えるように鼻にかけた声は、本当にお久しぶりですね、ダイアナさん。
相変わらず、私は無視ですね。
走って来たようで、息が荒い。


「もう体調は良くなったんですね。元気がいいね。アンドル様達がいるよ、話があるのだろう?」

とお義兄様が言うと、

「はい!元気が自慢ですから。あとこれから王宮に行くんですけど、ディライド様もご一緒ですか?アンドル様とも話したい事が沢山あったので、ようやく話せて、私、凄い嬉しいんです。さぁ、ディライド様行きましょう!」

「いや、私はミランダと一緒に帰るから、ダイアナ嬢は、王子様と楽しいお茶を飲んで来て下さい」

すかさずお義兄様が拒否した。 

「えぇー、ご一緒出来ないのですか、残念です。せっかく会えたのに…
ミランダ様いらっしゃったんですね。陰で見えませんでしたわ。まぁ今日は、そうですよね、アンドル様にじっくりお話を聞いてもらいたかったので、今度是非に、ね。ディライド様」

とダイアナさんが手を差し伸ばした所を身体を横にずらして、私を引っ張るように前に一歩進み、

「では、失礼します。長話になりお手数おかけしました」

お義兄様が一言言って、私を押すようにまた一歩進んだ。

アンドル王子様が下を向いていた。どうしたのかしら?
何か会話の中で、暗くなる事あったかしら?
大丈夫かしら?

歩くと離れるのはもちろんなんだけど、表情が見えないと不安になった。
もうすれ違ってしまって、後ろを向くわけにはいかないけど。

「月下美人、楽しみです」

と声をかけてみた。不敬かもしれないけど。たぶん、顔を上げてくれた。そんな気がした。
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