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44 頭の中から離れません
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こんにちは、ミランダです。
事件後二日です。現在、学校に通っていません。先程、お義母様達とのお茶会を終えて、自部屋に帰ってきたところです。
…まぁ、あの日は、書く暇がなかったと言うべきか、次から次に質問されましたから…。
王宮から、医師まで派遣され、大丈夫ですという言葉は無視されて、調べられ、結果どこも傷無しと診断されました。
だから、言いましたよね、なんて野暮なことは言いません。
だがしかし、
全治二日という謎の結果を言い渡されました。
そして、お義父様もお義母様も侍女達も当然です、という顔をしました。
あの結果は何だったのでしょう?
貴族の常識というやつなんでしょうか?
まだまだ私には知らない常識があります。
まずは、事件のことですね。
ウランダル王国のマユリカ王女様からの呼び出し事件と言いましょうか、黒鞭事件と言えばいいでしょうか…
私的には、黒鞭が印象的でして、後ろの側近が、刃物を取り出した所まで見て、鞄を前に出し盾にして…実は、その前に言われた言葉や注意は、髪を切れ忠誠を誓えぐらいで、残りは忘れてしまって、イズリー家の家族からも聞かれたのですが、黒鞭をどこから取り出したかが、気になってしまって、忘れましたと言ったら呆れてました。
後はもう一つ、気になっているのですが、どうも考えることを頭が拒否しているようです。
それでと言いますか、まぁ、私からでは、話の詳細がわからないと(事件関係者なのに)お義父様が、夕食前だというのに王宮に行って、まだ帰ってこないイズリー家です。
「お嬢様、また彼方に!お着替えをしますよ」
ラナが、私の服を脱がせにかかっていたわ。
屋敷内のお茶会だったけど、お義母様のお友達がいらしたから、デイドレスを着て出席。
お義母様のお友達も大変綺麗で、二人並ぶと、ここが学校かなと勘違いをしてしまいそうですと言えば、二人は大層喜んでくれました。
ふふっ、私も中々やりますよ。貴族の嗜み話芸を磨いてます!
デイドレスを脱ぎ、モスグリーンのワンピースを選択した。
やはり私には、飾りが何もついてないスポーンと私一人で着替えられるワンピースが落ち着く。
「もう、お嬢様はずっとぼんやりしているじゃないですか?肉体的だけじゃなくて、精神的に王女様に意地悪されたんじゃありませんか?」
「えっ?マユリカ王女様の事は考えてないわ」
と言えば、
「では、一体誰のことを考えていたのですか?」
「それは、王宮の…
お義父様よ、だってもう、二日帰ってきていないのよ。心配じゃないの?」
私は、今、何て言おうとしたのだろう?
…言葉が、出すのを躊躇った。
私ごときが、心配する必要はない…
でもあの顔が、あの言葉が、心をザワザワさせる。
「あぁ、旦那様ですか!大丈夫ですよ、お嬢様。ウランダル王国とやり合ってくると意気揚々とお出かけになったそうですから!きっと、交渉を念入りにされているだけです。それに…」
ラナの話も聞いているのに、頭の中に入ってこない。あの人の顔や言葉ばかりが浮かぶ。
確かに心配して助けた令嬢に笑われて、気分悪くなったのだろうな、申し訳ないわ。
謝った方がいい。
…急いで来てくれたのに…国同士の揉め事に発展したらまずいもの…
あんな乱れて…
あの人は何故あんなに辛そうに怖い顔をしていたのだろう。
あの人は、何故あんなに自分のせいだと怒っていたのだろう。
何故あの人が、一番泣きそうだったのだろう。
マユリカ王女様が婚約者候補だから?
考えてもわからない。本人に直接聞かないとわからない。
私にはどうすることも出来ない?
今もなんとなく、あの人は苦しんでいるような気がする。自分を責めているような気がする。
「…ラナ、あの事件で助けて下さった方なのだけど、とても辛い顔をしていたの。その顔が頭から離れないの…」
と言えば、ラナは、凄い苦い顔をした。
「お嬢様、誰かを聞いてもよろしいですか?」
相手、そう、相手ね。
あの人は…
まずいわね、よく考えてみると、とてもよろしくない気がするわ。
私が心配なんてする必要はないわ。
色んな方があの人を支えているのだから。
何を偉そうに、話を聞きたいなんて思ったのかしら?
…あの人には、話を聞いてくれる方なら沢山いるに決まっているじゃない。私ったら…
「お嬢様?」
「ああ、いいの。気にしないで、学校に行った際に御礼を言うから!」
「…お嬢様、大丈夫ですか?」
「もちろんよ。みんなに御礼を言わなきゃいけないわね。明日から登校できるのよね。少し早く行って、ご挨拶したいと思うのだけど良いかしら?」
「そうでしたね、クラスメイトの方が、マユリカ王女様の側近の方に断固抗議したり、お嬢様が忘れてしまった話を扉越しにきちんと聞いてくださったり、助けを呼びに行って下さったのですからね。全く、ご自分の話なのに、すっかり忘れてしまうなんて、どういうことですか。呆れてしまいますよ。事情聴取もその方達が、協力してくれたと王宮からの医師が言うんですから、お嬢様のその物忘れ、一時的に、記憶喪失を疑われたのですからね」
ラナは呆れ顔だわ。
「そうだったのね。みなさんには感謝します」
深く頷く。
「そうですよ。本当に。いつもなら冒険譚書くために、相手の言葉もご自分の言葉も忘れないお嬢様が、珍しすぎです。あと、新しい鞄は来ていますから。本当にディライド様様ですね。あの黒い防犯板のおかげで無傷だったのですから~」
「そうね。お義兄様にも感謝しているわ」
そう、鞭を弾いたのは、防犯板だし…。
菓子折りは綺麗な状態のまま鞄に入っていたと思う…
気にする必要はない、私にはない。
事件後二日です。現在、学校に通っていません。先程、お義母様達とのお茶会を終えて、自部屋に帰ってきたところです。
…まぁ、あの日は、書く暇がなかったと言うべきか、次から次に質問されましたから…。
王宮から、医師まで派遣され、大丈夫ですという言葉は無視されて、調べられ、結果どこも傷無しと診断されました。
だから、言いましたよね、なんて野暮なことは言いません。
だがしかし、
全治二日という謎の結果を言い渡されました。
そして、お義父様もお義母様も侍女達も当然です、という顔をしました。
あの結果は何だったのでしょう?
貴族の常識というやつなんでしょうか?
まだまだ私には知らない常識があります。
まずは、事件のことですね。
ウランダル王国のマユリカ王女様からの呼び出し事件と言いましょうか、黒鞭事件と言えばいいでしょうか…
私的には、黒鞭が印象的でして、後ろの側近が、刃物を取り出した所まで見て、鞄を前に出し盾にして…実は、その前に言われた言葉や注意は、髪を切れ忠誠を誓えぐらいで、残りは忘れてしまって、イズリー家の家族からも聞かれたのですが、黒鞭をどこから取り出したかが、気になってしまって、忘れましたと言ったら呆れてました。
後はもう一つ、気になっているのですが、どうも考えることを頭が拒否しているようです。
それでと言いますか、まぁ、私からでは、話の詳細がわからないと(事件関係者なのに)お義父様が、夕食前だというのに王宮に行って、まだ帰ってこないイズリー家です。
「お嬢様、また彼方に!お着替えをしますよ」
ラナが、私の服を脱がせにかかっていたわ。
屋敷内のお茶会だったけど、お義母様のお友達がいらしたから、デイドレスを着て出席。
お義母様のお友達も大変綺麗で、二人並ぶと、ここが学校かなと勘違いをしてしまいそうですと言えば、二人は大層喜んでくれました。
ふふっ、私も中々やりますよ。貴族の嗜み話芸を磨いてます!
デイドレスを脱ぎ、モスグリーンのワンピースを選択した。
やはり私には、飾りが何もついてないスポーンと私一人で着替えられるワンピースが落ち着く。
「もう、お嬢様はずっとぼんやりしているじゃないですか?肉体的だけじゃなくて、精神的に王女様に意地悪されたんじゃありませんか?」
「えっ?マユリカ王女様の事は考えてないわ」
と言えば、
「では、一体誰のことを考えていたのですか?」
「それは、王宮の…
お義父様よ、だってもう、二日帰ってきていないのよ。心配じゃないの?」
私は、今、何て言おうとしたのだろう?
…言葉が、出すのを躊躇った。
私ごときが、心配する必要はない…
でもあの顔が、あの言葉が、心をザワザワさせる。
「あぁ、旦那様ですか!大丈夫ですよ、お嬢様。ウランダル王国とやり合ってくると意気揚々とお出かけになったそうですから!きっと、交渉を念入りにされているだけです。それに…」
ラナの話も聞いているのに、頭の中に入ってこない。あの人の顔や言葉ばかりが浮かぶ。
確かに心配して助けた令嬢に笑われて、気分悪くなったのだろうな、申し訳ないわ。
謝った方がいい。
…急いで来てくれたのに…国同士の揉め事に発展したらまずいもの…
あんな乱れて…
あの人は何故あんなに辛そうに怖い顔をしていたのだろう。
あの人は、何故あんなに自分のせいだと怒っていたのだろう。
何故あの人が、一番泣きそうだったのだろう。
マユリカ王女様が婚約者候補だから?
考えてもわからない。本人に直接聞かないとわからない。
私にはどうすることも出来ない?
今もなんとなく、あの人は苦しんでいるような気がする。自分を責めているような気がする。
「…ラナ、あの事件で助けて下さった方なのだけど、とても辛い顔をしていたの。その顔が頭から離れないの…」
と言えば、ラナは、凄い苦い顔をした。
「お嬢様、誰かを聞いてもよろしいですか?」
相手、そう、相手ね。
あの人は…
まずいわね、よく考えてみると、とてもよろしくない気がするわ。
私が心配なんてする必要はないわ。
色んな方があの人を支えているのだから。
何を偉そうに、話を聞きたいなんて思ったのかしら?
…あの人には、話を聞いてくれる方なら沢山いるに決まっているじゃない。私ったら…
「お嬢様?」
「ああ、いいの。気にしないで、学校に行った際に御礼を言うから!」
「…お嬢様、大丈夫ですか?」
「もちろんよ。みんなに御礼を言わなきゃいけないわね。明日から登校できるのよね。少し早く行って、ご挨拶したいと思うのだけど良いかしら?」
「そうでしたね、クラスメイトの方が、マユリカ王女様の側近の方に断固抗議したり、お嬢様が忘れてしまった話を扉越しにきちんと聞いてくださったり、助けを呼びに行って下さったのですからね。全く、ご自分の話なのに、すっかり忘れてしまうなんて、どういうことですか。呆れてしまいますよ。事情聴取もその方達が、協力してくれたと王宮からの医師が言うんですから、お嬢様のその物忘れ、一時的に、記憶喪失を疑われたのですからね」
ラナは呆れ顔だわ。
「そうだったのね。みなさんには感謝します」
深く頷く。
「そうですよ。本当に。いつもなら冒険譚書くために、相手の言葉もご自分の言葉も忘れないお嬢様が、珍しすぎです。あと、新しい鞄は来ていますから。本当にディライド様様ですね。あの黒い防犯板のおかげで無傷だったのですから~」
「そうね。お義兄様にも感謝しているわ」
そう、鞭を弾いたのは、防犯板だし…。
菓子折りは綺麗な状態のまま鞄に入っていたと思う…
気にする必要はない、私にはない。
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