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37 学校が始まりました

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改めまして、夏季休暇終了しました。

そして、学校です!

本日は、イズリー領のお祭りで買ったスノードームと海藻の粉入り石鹸(サタンクロス商店のおすすめ商品)を夏季休暇のお土産として、鞄に詰めてきました。

リリエットの分だけ?まさか!
一応、結構な数を入れてきたけど…渡せるかしら?

この馬車の中は、残念ながら、私一人です。お義兄様は、転入したというに、まだ二日しか学校に通えず、現在、ウランダル王国へ。

お義父様が、心配ないと言っていたけれど、あのひまわりの花から出てきたマユリカ王女様のお国です。
グレゴリー様も大変そうでしたし、王女様が、アンドル王子様の婚約者と言ってましたし、気性の荒い方のようにお見受けしましたから、お義兄様が、何か使命を持って動いているのしょうか?



「おはようございます、ミランダ、休暇は楽しめたかしら?」

リリエットが、以前よりも声に張りがあり活発だわ。きっと良いことがあったのね。

「おはようございます、リリエット。朝から随分とご機嫌ね、あのこれね、領地のお土産なの…貰ってくれる?」

鞄からいそいそと取り出し、渡す。

中身を確認してから、笑ってくれたわ!

「ありがとう!可愛いくて嬉しいわ。あ!これは、最近の流行りグッズに入っていたアミノ酸入り石鹸じゃない!凄く欲しかったの。値段もお手軽だから、王都の店では、いつも売り切れで、ありがとうミランダ!」


「そんなに喜んでもらえて、良かったわ」

流石商人だわ。若い令嬢への目利き…
私のスノードームより、石鹸を喜んでいる…
敗北感があるのは、何故でしょう。
いえ、スノードームも可愛くて嬉しいと言ってくれたわ…

あぁ急に頭が揺れる。
と思ったら、リリエットが私の肩を揺らしていた。
いつのまにか彼方に行っていたのね。

「聞いてくれる?あのね私達、スタンルートと私、ちゃんと婚約者として上手くやっているの。悲しかったと感じたこととか素直に言ったら、誤解させてごめんって。もう、あぁいうタイプの振り回してくる自己中心的な女の子は、懲り懲りで、紛らわし行動はしないと約束もしてくれたのよ。幼馴染だけど、お互いに意識が向いて、何だか前よりも距離が近くなったというか、ドキドキして、何を話しても、どこに出かけてもとても楽しくて嬉しいの」

それは、とても良いわね。笑顔で笑うリリエットは可愛い。羨ましいと素直に思った。
でもね、朝から惚気は中々重いわね。しかし私も心が広く大きくなったのよ。

「良かったわね。私は、リリエットが嬉しいなら、何もいうことはないわ。東部地方のボスじゃなくて纏め役のマリアーノ様には報告したの?」

と言えば、少しだけ頭を振ってから、

「私からは特に。ただ父様は、私達が上手くやっていけそうだとは、ファンド侯爵様に伝えたそうだけど。ほら、アンドル王子様の婚約者決めの夜会があったでしょう。とても気合いが入っていたようで、私達のことなど眼中になかったのよね」

確かにみなさん、気合い十分でした。早く会場を出たから、マリアーノ様のドレス姿見れなかったわ。
きっと素敵だったのね。

「そう言えば、アンドル王子様、婚約者の発表してないわね。やっぱり今は、王宮が忙しいのね、きっと」

私が言うと、リリエットは少し考える仕草をした。

確かに、マユリカ王女様、ご本人がご自分だと言っていたけど、未発表。何かあったのかしら?お義兄様も大変そうだもの。

「ええ、そうね、夜会はどうだったのミランダ?」

「王宮の夜会会場は、それは立派だったわ。どれもこれも素敵だったの!
沢山の騎士様がいて、王子様、お姫様がいて、音楽隊に、眩しいほどのキラキラした世界だったし、まるで絵本の世界に紛れてしまったみたいだったわ。でもね、私、マリアーノ様の取り巻きの…名前を忘れてしまったのだけどその方に、香水のスプレーを目の前で吹き掛けられて大変だったのよ。口の中と喉がイガイガして声枯れしてね、怒りっぽい人もいたし。やっぱり夜会って戦いと聞かされたけど、本当に恐ろしい所でもあるのね。実感したわ。私の体験談、夜会編を書いたの。伯爵家のみんなが読み終えたら、貸しましょうか?」

「体験談を呑気に書いている場合じゃない!取り巻きの令嬢に意地悪されたの?酷い事するわね。アンドル王子様の前に立てなくしようとしたのかしら…ミランダも、そういう時はもっと怒らないと!絶対に、調子に乗っているのよ!ディライド様に言ったわよね?」

「そんな大丈夫よ、リリエット。うがいをしたら元に戻ったし、それに怒りっぽいのも王女様で言葉をぶつけられたぐらいだし」

「王女様って!また巻き込まれたの?ミランダ」

「違うわよ、偶々庭園で散歩中にあっただけよ…」

「そう、もうミランダは左に歩いても右に歩いてもトラブルにぶつかる印象があるのよね~」

「そんな事は…ないと思うわ」

これはイズリー領の祭りで迷子になった事や漁港近くの村でアンドル王子様に会った事など言わない方がいいな。

「それもちゃんと、ディライド様に報告したのよね?」

「えっ?そんな大袈裟な。
特に何もなかったし、取り巻きの方は、お義父様が何かされて男性に叱られていたから…王女様の件は、大したことないわ。アンドル王子様の婚約者だと名乗っていたし…グレゴリー様が迎えに来て、お義兄様も夜会では役割があったから」

「駄目よ!ミランダの事は全て情報共有しないと、何かあった時ディライド様が困るわ」

情報共有って…困るなんて大袈裟ね。

「お義兄様は、今お仕事でいないのよ」

「そう…でも良かったわ、無事で。王女様と絡むなんて一令嬢じゃ、立ち向かえないから。気をつけてね。
夜会に参加したと聞いて安心したのに、もう!ミランダって行動力はあるのに、失敗しやすいし、なんていうか遠慮?違うわね、前に出ようとしないじゃない?勉強も淑女の嗜みも、作法も優秀で真面目で、一生懸命なのに。私は、たまたま席が隣同士で、ミランダに迷惑をかけて仲良くなれたけど、あなたなら、もっと多くの人達と仲良くなれると思っていたから、…余計なお世話よね」

「まさか!嬉しいわ、リリエットにそんな風に思ってもらえて!」

他人が私の事を気にかけてくれる。
心配してくれる。喜んでくれる。

そんな奇跡みたいなことが、日常で私にあるなんて。
この素晴らしい気持ちを誰に感謝すれば良いのでしょう。
陽が上って、パンを食べ、本をめくり、小さな窓から見えていた空が、こんなに広いと知りませんでした。
先生、毎日はこんなにも豊なんですね。

「ありがとう、感謝します」

「えっ、何か言った?」

「何でもないわ、今日は宿題の提出よ、リリエット」

教室から見える窓からの景色は、限りがなくて、木々と空と雲が広がってまた始まるのだなと、顔がにやけた。
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