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18 漁港に着き、釣りをしました

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漁港は賑やかで魚がポンポンと空中に投げ合って、

「ラナ、魚が生きているみたいね、そして空飛ぶ魚…読んだことのある物語だわ」

その光景にワクワクする。

「全く漁師は、魚を落とさないという自信はどこから来るんでしょう?あんな無意味なことをして、箱に魚を入れて運べばいいのに」

「先生が言っていたわ、楽しくパフォーマンスをするのも食事が楽しく幸せに感じる催しだって。見ていたら本当にお腹が空いたわ。早く食べたいな」

言った後、漁師のトマト煮込みスープを買い、非常に美味しかった。私のお手製チーズがあれば、更に幸せだっただろう。



漁港の町、サタンクロス商店

「こんにちは~」

と声を掛けるとサァーと従業員が並び挨拶をしてくれた。
店の中に入ったというのに、通り沿いの活気ある声や話し声に、これからが楽しみでならない。

「初めまして、ミランダ様。ディライド様より手紙にて連絡が来ております。数日の予定との事ですが、客室でおくつろぎ下さい。所望の品もすぐにご用意します」

と言って、この場所を取り仕切る店長ケトルさんが挨拶をしてくれた。

「ご丁寧な挨拶を頂きましてありがとうございます。今日は、休憩後、釣りをやってみたいですが、ご協力願えますか?」

「もちろんです、ミランダ様」

みんないい人です。



「お嬢様、用意出来ました。丁稚さんが餌をつけてくれるそうです」

あらら、いたせり尽せりね。

「皆さん、お仕事中なのに、私の我儘に付き合わせてごめんなさい」

謝るが、やめるとは言わない…だって釣りしたかったのですもの!
しかし、現実は、物語のようには行かない。

「どうしてかしら?遠くに投げるのが難しい…牛のロープかけとどこが違うのかしら?」

すぐに、チャッポンと桟橋の手前に落ちる。
もちろん一匹も釣れない。
丁稚さんも、夕方は配達仕事があるのでソワソワし始めて解散。

しかし私は諦められない。釣った魚を串に刺して火で炙って食べるのよ。
実際は漁港で沢山売っていた。焼き魚として、それはどこの屋台でも。
釣れなければ買えば良いのよ、
なんて、私は言いたくない!やってみたい我儘なんです~

「いい加減にしてください、お嬢様。残念ながらお嬢様に釣りの才能は皆無です。食べたいなら買いましょう。明日の昼は、貝焼きにイカ焼きに魚の塩焼きです」

ラナ~

「魅力的なお誘いだけど、もう一度私にチャンスを下さい!」

ハァーーー
深い溜息が聞こえた。

「午前中のみですからね!」

「はい」

結局、私のお願いを聞いてくれるラナが私は大好きなんです。



「今日も上手くいかないわね~」
と言えば、

「まぁ、コツは気長にだそうです」
ラナが答え、

「お嬢様、桟橋の下に魚の群れが~」
丁稚さんが教えてくれて、その場を見に行く。

「小さな魚達ね。癒されるわ~」
と言えば、

「私はお嬢様の日焼けの方が気になってしまいます」
ラナが答える。

「大丈夫よこのマントに帽子、スーパー眼鏡よ、暑い暑い」

竿を置いて、片手で仰ぐフリをしていると

「お嬢様の釣竿が動いてまーす」

丁稚さんが教えてくれて、慌て置いた釣竿を持ち上げた。私が竿を放した途端に魚が食いつくなんてあるの!?

「うわぁ~、えっ、重い、海に落ちそうなぐらいに引っ張りが強いわ。これは、かなりの大物よ!」

それは大変とラナが、私と一緒に釣竿を持ってくれる。丁稚さんは、令嬢に触るのを躊躇って右往左往している。

先生、以前読んだ絵本に似てますよ~。
やっぱり外の世界は面白い!しかも楽しい~。海が光って、キラキラしています。

「うわぁーーー、力いっぱい行くわよ、ラナ。そぅれぇーーー」

と引き上げれば、手の平より小さい魚…

「意外ね…小さいわ」

「あんなに重かったのに?」

とラナと笑いあった。無人島の船乗りみたいな魚は釣れなかった。これは炙って食べれないわね。

ブォーン

汽笛の音が響いた。
マリングレー王国の旗が風の中を泳いでいる。
深呼吸をする、大丈夫。私は、落ち着いている。

「フゥ、着いたようね。丁稚さん、この魚を海に返せるかしら?」

まだまだ元気いっぱいの魚が、あっという間に見えなくなった。

「では、私達はお昼ご飯にしましょうよ」

とラナを促した。ラナは大きな客船を睨んでいた。

「ほら」
と声を掛ける。私達には関係ない。

「「わぁー」」

人の歓声が聞こえた。船が着いたことを喜んでいる。

「クリネット国でも人気ですね、先見の王女、聖女ティア様は」

私の呟いた声は、嫌味を言った訳でも私自身を卑下したわけでもないのだけど、ラナには堪えたらしく、

「あの方は大嫌いです。ミランダ様を悪者に仕立てて、国民に有る事無い事話して、もっともらしい説法をいうんです…教会の信者達も、全部悪い事が起きれば忌み子のせいにして煽るのです。
何が不幸の象徴、忌み子は呪いの子ですか?私は信じません、そんな迷信!あの方の言葉の方が呪詛に思えましたから!ある日突然現れた話ですよ。何故こんな迷信が国全体に広がったのか、いつと聞いても昔からと言うし、私には信じられないのです。だって、私達家族は。知りませんでしたから」

悔しそうに顔を背けたラナ。
ラナ達家族は、旅行から戻ってきたら、突然忌み子の迷信が国中に浸透して、驚いたという、何故か迷信を知らない家族…異物扱いされたらしい。
私は、お義父様からマリングレー王国の『忌み子』の迷信や呪いについて教えてもらい、先生からは王族は、呪われているから国を出ろと言われた。マリングレー国の『忌み子』は私で悪い存在、それを打ち消す存在が、聖女ティア様。実際にはティア王女と会った記憶がない。

私という存在が悪の象徴と聞かされても、今まで、決められた人間以外、人に会ったことが無いので、わからなかった。
今は、クリネット国でこんなに幸せな日常を知ると、人の目も感情も怖い。
もし、またあの国で別塔に入れられたら…
私一人になったら。

啜り泣く声がした。

「ラナったら、泣かないで。先程の私みたいに動揺しすぎよ。確か貴女のお兄さん王女の護衛じゃなかった?もし会いたかったら、見に行ってもいいわよ。見張り塔をどっちが階段を早く登れるかとか毎日競争していたじゃない…私、小窓から覗いていたもの」

「申し訳ございません、ミランダ様に過去を忘れるように、進言しておきながら私から、話題にしました。国旗を見たぐらいで、感情を乱してお嬢様に不快な思いをさせてしまいました。あんな人達は、無視して私達は、買い食いをしましょう!」

「うふふ、そうね、楽しいも面白いも私達の方が多いし、今は本当に幸せだから関係ないわよね。ではでは、護衛のラナ殿先導頼みます」

私の不用意な言葉で、思い出させてしまったわね。

そんな会話は、大きな船を見に来た人達の騒音と一緒に、海と風に流されて、ただ綺麗な景色だけを二人で見て歩いた。
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