上 下
11 / 120

11 義兄と話すと大変でした

しおりを挟む
「本当にあと二日なのに学校に行くんですか?」

「本当なら月初めに帰れたのに、あの工房の奴らが、アレを押し付けたから遅くなったんだ」

口調が荒れているわ。
確かに重い箱で重量の問題がありそうだけど…
お義兄様の留学話は、マリングレー王国を調査していたと聞いたけど、殆どがマジックアイテムの工房にいたのではないかしら?
とても仲が良いように聞こえる。

「遅いって、五日程度の話では?」

冷静に返したつもりだったのに、前のめりで食いつかれた。

「何を言うのか、五日だよ!全く、私がいなかった半年の間に、誘拐されたミランダちゃんには、わからないよ!五日!この期間に何回アンドル達と話した?」

それを言われると辛辛~。

「えっと、一回挨拶したかな?」

廊下でみんな頭を下げた程度よ。

「私がいたら、0回だったよ、間違いなく!」

それ、もう先輩後輩とか身分とか、色々不敬だから。
この話題はもうしない方がいいね。
あー、私の冒険譚、今、誰が持っているのかしら、早く回収しなきゃいけないわね。あんな事情聴取読まれたら…義兄、噛みつきに行ってしまいそう。

それに、やたらアンドル王子様達と関わりたくないらしいし。

喧嘩でもしたのかな?

「お義兄様は、皆様と仲良しじゃないの、幼少期を共に過ごしたとお義母様が、話されましたし、側近にも誘われているし」

と聞くと、

「心配しているような喧嘩はしていないけど、私は彼らのような野蛮人とは気性が合わない」

野蛮人って、自国の王子様に向かって言ってはいけないでしょう。
絶対に不敬罪で、ドーンだわ。

まぁ、こんな風になった義兄に何を言っても無駄だな。

「では、また帰りに同じ馬車で帰りましょう」

「えっ?お昼ご飯は?」
と当たり前と言う感じで聞かれた。

「学年が違いますから、私はリリエットさんと食べますし…」

「えっ?ミランダちゃんは、久しぶりの学校転入初日の兄を放置するのか…
離れていた兄を!」

ええー!
捲し立てないで下さいな。兄、兄、面倒くさいよ。
それこそ、入学した時の友達と一緒に食べればいいのに。
久しぶりで、会話も弾みそうだし。
スタイルも面構えもあの方達に負けていない義兄だもの、初日から騒がれるに決まっているし…目立つのは必然。

だからこそ、私が入学前に『野蛮』的な何かがあったとか…

ふふっ、目眩くる人気者達の世界…
友情あり、喧嘩あり、肩を組み仲直りしたり、方向性の違いでライバル関係になったり、アレやコレ…

それで顔を合わせ辛いとか…

「また彼方に行っているの~?」

「あ、いや!違います。あちらは彼方ではなくて、私の思い出の記憶の一片、ロマンスの派生話といいますか…
まぁ、私のことは良いんです。
お義兄様は、友達作りなら幼少期から、この国で上手くやってそうだなと思ったのに意外です」

平然と、

「友達、話す相手ならいるけど。損得もあるな。まぁ、今日は、特に嫌な感じがするから一緒にいたいだけかな」

と私を見つめる。
無駄に顔がいいから、見つめ合うのは無理な話です。負けます。
すぐに視線を逸らし、

「正直でよろしい!」

ドキドキするから~例の人気者達にはしなかったけど、義兄に見つめられたら、無理だったわ。

ということは、義兄の方が美青年ということ!?
まかさ、この国一番は義兄の顔にあるのかしら?

ふざけた会話を終え校舎に入る。
目立つこと、この上なし。

あちこちで「あの方は誰?」の視線と会話。
「では後でね」
「ええ、お義兄様」

これで満足ですか?教室に入れば、療養明けにはなかった囲み質問がきて、

「彼は、私の義兄のディライド・イズリーです」

まぁこれで最終的に収まった。

「大変でしたわね、囲まれるなんて」

とリリエットさんが苦笑いをして、私は何度も頷いた。
勢いのある人間怖い。

「ミランダ様、ディライド様がご帰国されたなら、私に一番に報告してくれても良いんじゃないのかしら?」

バサッと羽の扇子を口元に出したマリアーノ様。
何故あなたに?
と言う疑問は顔に出たらしく、取り巻きの一人が、

「マリアーノ様は、いずれ王子妃になるお方。王子の側近の把握は必要不可欠なんですわ」

と。教室内が静かになって、その後ザワついた。

バシッ

羽扇子の風を切る音。

「そろそろ年齢的にその時期でしょう。私自身の将来としての一つの可能性ね。下世話な誤解はしないで欲しいわ、あなたもね」

と取り巻きの一人に注意した。
しかし嬉しそう。随分と機嫌が良さそうです。王子妃を夢見ているのか、まぁ、頑張ってください。

「義兄とお知り合いでしたら、本日は昼食を食堂で取る予定になってますので、本人に色々聞いて下されば、(私は)助かります」

「そうなのですね、もう一つ、婚約者は決まったのかしら?」

何故に?王子妃とかなんとかはどうしたのかな?もしかして、一つの可能性って話。
それだけは、絶対に嫌だわ!!

「私は存じあげません!」

わざわざ私に、そんなことを確認にくるなんて、ご両親に聞きなさいよ。侯爵令嬢として、もう少し厳しい礼儀作法を受けた方が良いわ。
マリアーノ様以外の高位貴族のご令嬢に会ったことなかったわね。養子縁組で半年前だったから、色々とこの国の人間関係が疎いわ。

「聞いてますか?ミランダ様!」

「はい?」

「もうあなたは、その野暮ったい眼鏡でどこを見ているかわからないけど、呆けるのはやめなさい」

とマリアーノ様から注意された。ハァー、

「そうですね」

「あなたは、またそうやって私の助言を流して!失礼ですのよ」

あら、またマリアーノ様が怒ってしまったかしら?何を言っていたのかしら?

「聞いていますわ、マリアーノ様。もうすぐ予鈴ですね、お教室に戻られた方が良いのではないですか?」

「まぁ!急ぎますわよ、みなさん」

御一行を連れて出て行った。その間リリエットさんは、教室の前の方に移動していた。マリアーノ様との交流は避けているみたいで、

「ごめんなさいね、リリエットさん。座っていたあなたに動いてもらって。今日は食堂にマリアーノ様来そうだけど、どうする?」

「ええ、もう戻ってきて良いと言われているのだけど…」

人間関係は複雑だわ。輪に入ったり出たり…知らなかった世界。
面倒という言葉は絶対に言ってはいけないと習ったので、

「大変ね」

と言うと、

「まぁ東部地方は特に派閥主義だから。南部のイズリー伯爵領は海が近くて貿易の街なんでしょう?楽しそうよね~」

確かに何日間か寄ってみて楽しかったわ。商人の街、貿易の街、物が豊かにあったなぁ~。本も沢山~

「そうね、リリエットさんも一度きて欲しいわ。お祭りもあるわよ」

今年の夏季休暇の最大の楽しみ!

「あの、ミランダ様、もしよろしければ私のことは、リリエットとお呼び下さい」

これって、親しい友達になりましょうっていう意味よね!?

「私も、ミランダと呼んで下さい!」

朝から面倒の押し売り状態で、お腹いっぱいでしたが、人生初の快挙!!仲良し友達を獲得しました!!

あぁ、私、今、胸いっぱいです!



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました  乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。  これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。  もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。  魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。  私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

執事が〇〇だなんて聞いてない!

一花八華
恋愛
テンプレ悪役令嬢であるセリーナは、乙女ゲームの舞台から穏便に退場する為、処女を散らそうと決意する。そのお相手に選んだのは能面執事のクラウスで…… ちょっとお馬鹿なお嬢様が、色気だだ漏れな狼執事や、ヤンデレなお義兄様に迫られあわあわするお話。 ※ギャグとシリアスとホラーの混じったラブコメです。寸止め。生殺し。 完結感謝。後日続編投稿予定です。 ※ちょっとえっちな表現を含みますので、苦手な方はお気をつけ下さい。 表紙は、綾切なお先生にいただきました!

令嬢はうたた寝中

コトイアオイ
恋愛
前世でプレイしていた乙女ゲーム、『花結びのセレナーデ』の世界に生まれた私は気付いた。これがゲームの世界だと。そして、私は悪役令嬢、藤峰織花になっていると。悪役令嬢ってヒロイン虐めるんだよなぁ…めんどくさいなぁ。思えば、織花ってあんなに働いてるのにバッドエンドって可哀想だ。どうせ報われない運命なら、役目を放棄しよう。私は本能に従って…寝ることにした。 睡眠大好きな令嬢が、色々振り回していく物語。 節のタイトルがですます調でないところは第三者の視点になります。 15章くらいで完結させたいという野望のもと頑張ります。

悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~

平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。 しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。 このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。 教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

私と離婚して、貴方が王太子のままでいれるとでも?

光子
恋愛
「お前なんかと結婚したことが俺様の人生の最大の汚点だ!」 ――それはこちらの台詞ですけど? グレゴリー国の第一王子であり、現王太子であるアシュレイ殿下。そんなお方が、私の夫。そして私は彼の妻で王太子妃。 アシュレイ殿下の母君……第一王妃様に頼み込まれ、この男と結婚して丁度一年目の結婚記念日。まさかこんな仕打ちを受けるとは思っていませんでした。 「クイナが俺様の子を妊娠したんだ。しかも、男の子だ!グレゴリー王家の跡継ぎを宿したんだ!これでお前は用なしだ!さっさとこの王城から出て行け!」 夫の隣には、見知らぬ若い女の姿。 舐めてんの?誰のおかげで王太子になれたか分かっていないのね。 追い出せるものなら追い出してみれば? 国の頭脳、国を支えている支柱である私を追い出せるものなら――どうぞお好きになさって下さい。 どんな手を使っても……貴方なんかを王太子のままにはいさせませんよ。 不定期更新。 この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

処理中です...