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5 怒られました

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穏やかな一週間。
イズリー伯爵、お義父様が迎えに来てくれ、めでたく退院。

「ミランダ嬢、もう余計なことに首を突っ込んではいけないよ~。しかし治りが早かったね。もう痣のみだね」

と医師。

「ありがとうございます、先生のおかげです。良いお薬をベタベタと大量に貼り付けてグルングルンに包帯を巻きつけてくれたおかげでほぼ一週間動けず、破廉恥な姿を見せて、なんとも羞恥に晒された一週間でしたわ」

「おい、おい、
感謝の言葉ではなく、文句?苦言?を言われているのかい。そもそもここは、騎士団病院だよ。若いご令嬢なんて対応しないのに…
何故かこちらに運ばれて、私もてんやわんやだったんだよ」

「いえ、いえ、先生、苦情なんて申し上げておりません。先生が優秀なおかげで立てます、歩けます、感謝です、感謝。一生分の羞恥心を使いましたので、今後は楽しみしかないはずです。私の結婚式には先生を名医として、ご招待致しますので、そのぐらい感謝しております」

「ハハハ、相変わらず、変わったご令嬢だよ、ミランダ嬢は。まぁ、楽しみに待っているよ」



「ミランダ困りますよ、怪我なんてされたら」

「ええ、お義父様。申し訳ございません。ご心配をおかけして。しかし本当におかしな体験ができました。まぁ、物凄く痛かったですけど。目から火花が出るなんて体験初めてでしたし、真っ暗な牢屋は、臭いし、身体中がガタガタ震えて…
本能なんでしょうか、死にたくないって思うものですね。
本当にイズリー家には感謝をしております。改めて、私が出来ることなら何でもしたいのですが、またしても迷惑ばかりかけてしまって申し訳ないですわ」

「そうですね、ミランダ、あなたはもう少し落ちついてください。全く外が楽しくて仕方がない子犬みたいだ。でも良かったよ、無事で、本当に」

私を心配してくれて、私に笑いかけてくれて。
私の恩人のお義父様…

私は、マリングレー王国の別塔からある日突然、外に出た。
暗い石のトンネルを潜って…
案内してくれたのは、私の家庭教師、出口にいたのが、イズリー伯爵とディライド様。

そのまま海を渡りクリネット国に。
王都のイズリー家で、この国の事、礼儀作法をこの家の養女として教わった。

「うっふふ、お義父様ったらお上手な例えだわ。外の世界を知らなかった私にとって、危険がいっぱいと教わりましたけど、まさかこんな事件を体験するなんて思いもよりませんでした。痛くて怖くて、…恥ずかしくて、顔もあげられないなんてなるんですのよ。でも翌日になると普通にお食事も出来るし、頭の中で再生も出来て恥ずかしいのに、何故でしょうね、本当に楽しいの、不思議ですわ」

「ハァーーー
それが、体験とか経験と言うんでしょうね。少しは怖くて動けないを全面に出しなさい!そろそろミランダに首輪をつけなければいけないな…ディライドに手紙を送ったよ、すぐに帰ってくるだろうね」

「まぁ!なんて恐ろしいの、フッフッフ、お義兄様が帰ってくるのね!」

「あぁ、満身創痍の怪我をしたなんて聞いたら、血の涙を流しそうだよ…恐ろしいな…」

「あら、ではすぐに回復して良かったですわ、擦り傷も酷かったですから、まぁ、ラナに叱られましたわ、毎日、毎日…
お義兄様に、バレなきゃいいのですわ、きっと!みんなで内緒にしましょうって言わなきゃいけませんね、なんか悪巧みしているみたいでワクワクしますわ!」

「全く…
本当に顔に傷もなく髪も無事で良かったよ」

「はい、お義兄様のこのスーパー眼鏡で顔は守られておりますから」

「ハァーーーそれだけは褒めないとな。良い品を仕入れてきたなと。最近は、わからない道具や情報を高値で仕入れて…商店を使って売買しているし、勉強はちゃんとしていたのだろうか。不安でいっぱいだ、早く伯爵領の経営も学んで欲しいものだよ。一応来月からディライドの転入手続きはしたが、すぐに夏季休暇だろう、通学するかは本人に任せてあるが…着いたな…
ハァーーー、我が家には犬だらけだな」


馬車を降りるとお義母様や弟のレオン、使用人達みんなが出迎えてくれた。

「何をなさっているの?ミランダ~」

お義母様泣きつかないでくださいまし。めっちゃ注目の的ですし、

「申し訳ありません、お義母様。私、失敗しちゃいました。あんなにお義母様に令嬢同士のやり取りは、気をつけなさいと言われていたのに」

「ハァー、ミランダ義姉様、どれだけ心配したか!全く!みんな駆けつけたかったんですよ病院に。ただ目立ってしまうからという点で、みんな我慢したんです」

「そうね、本当にごめんなさい。まさか攫われるなんてね。巻き込まれ注意だわ!」

「もう、義姉様~、そこじゃなく!そもそも関係ないのに、ご令嬢の後なんて尾けないでください」

「本当にそうね、反省しているわ!でもね。ラナ、すぐに紙を用意して!私の冒険譚を書かなければ!」

「えっ、義姉様?」
レオンが驚いているけど、今は時間がない。

「忘れないうちに、この体験を残しておかないと…貴重な経験になったわ。色々抜けてきそうだから、書き残すわ。みんな後で読んでね~。
読者がいないと私の物語を共有出来ないもの!」

その場を勢いで捩じ伏せ、早歩きで自部屋に着く。
歩けて良かった!
骨が丈夫だったのが幸いでした。



イズリー家の家族の団欒、お茶を飲みながら、義父は肩を震わせながら、発言した。

「このグレゴリー様は耳を癒す声で、アンドル王子様は人間か疑う程の絵本の中の王子とは何かな?ミランダ…」

と言ったのは、一人じゃない。
私の冒険譚より学校の人気者の話の方が、義母も使用人もみんなが食いついた。
いついかなる時も読者の感想は嬉しいけど。

フゥ~ン、少しばかり面白くない。
とんでもない経験をしたのにね。
冒険譚の方が力作だったのに、何故か病院に入院していた取り調べの方が、感想を多く聞く。

先生が、言っていたカッコ良い人気者の若い男性は、入れ食い状態って話は、本当なのね、と一人納得して、やっぱり輪になって話すって楽しくて…
結局、使用人達とキャーキャー言いながら盛り上がって、派生話を妄想で日記に綴ったりして、私も中々のロマンスを書けたりと思って、ラナに見せたら、怒られて、綴った日記のページが切り取られた。

クゥー
せっかく使用人達の中で私の読者がつくか否かだったのに~


更に一週間後、あの満身創痍の負傷から完全復帰をしました。

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