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16 サマーパーティーのパートナー

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サマーパーティー当日、何故こんな良い天気なのでしょうか?

「お嬢様、こちらの去年のドレスで良いのですか?」

「そうね、そのドレスが一番良い物ね。多少成長した分、サイズがピッタリだけど、ショールを羽織れば、大丈夫よ」

きっと、誰も私なんか見てないし。


大雨で、ドレスがグッチャグッチャ、強い風で、髪型がボッサボサ、ハハハ、ザマァミロ、私は行く必要がないからな、病欠よ、ドレスも髪も汚れないわ、ハハハ

と毎日空を見て、呪詛と雨乞い(焚き火と祈祷)をしていたのに、空に私の願いは届かなかった。
徳を積まなかった私への仕返しかな。

私は本日、頭が痛く、お腹も痛い予定になるはずだった…

昨日の放課後まで。

まさか図書室で、返却した後、またしてもばったりと生徒会の一団に会うなんて。

「げっ」

と声が思わず出たのを、誤魔化すように、喉を鳴らして、もう一度図書室に退避しようとした。
これは、サマーパーティーという行事で、これ以上精神的に疲労を軽減する為、抉られる心が、もうギブアップ宣言して耐えられないからだ。
大っ嫌いだ、こいつら、イベント主催者め!

「あれ?リディアさんじゃなーいーかなー」

かくれんぼで見ぃーつーけたーと言う感じで暴かれる。
この声はセルジオ!もっとも嫌な角度で心を抉る嫌な奴だわ。
必要以上に絡まれている。クロエの友達のというモテない存在の私を。
あなたが、何故生徒会にいるんだ。
ずっと避けてきた相手に最後見つかるなんて。クロエには悪いが、カルロスがいたなら、私は教室から出るし、その集団に近づかない。
いつのまにか名前を覚えられてしまったし。

「ほら、やっぱり!兄者ー、やっぱり、リディアさんだったでしょうー。あの金色の髪は間違いないと思ったんだー。なんか『いる』って感じたんだよー。こっちの道を通って、大ー正ー解。ほら、見て見て」

「うるさい、セル!グレドも知り合いなのか?あれ、あの子確か」

他の生徒会の人にも気づかれた。

「別に」

もう嫌だ、廊下走ろうか?毎日の特訓の成果をここで出そうか!

「グレリュード様、お待ち下さい。もう一度お話しさせて下さい」

今度は女子生徒の声だ。思わず振り返って驚いた。アンネリーネ様がいたから。酷く真剣な顔をして…

「時間を下さい」

と言った。生徒会の一団は、この状況を知っているようで、気まづそうにしたり、黙ったり、落ち着かない様子が見てわかった。この隙に逃げよう。
そう思った。

「アンネリーネ嬢、何度言われてもパートナーにはなれないし、何度も言っているがやめて欲しい、こういう言動は」

ええ~!?スキャンダルだわ。私の件なんて、すぐに風に吹き飛ばざれるぐらいの情報価値!

「何故ですか?グレリュード様、あなた様には、婚約者はいませんよね?最後のサマーパーティーだから!私は真摯に思いを伝えているだけです。出会った時から好きなんです、グレリュード様」

嘘っ!声が出ないように手で自分の口を押さえた。

「…前からサマーパーティーの件は、約束がある…」

「そのような噂は聞いておりませんわ」

怖っ、王子様との三角関係だったの?関わったら不味いやつじゃないの。
これ言ったら、即バレするよね、私って。生徒会みんな知ってて黙っているの?取り巻き一団はどうしたの?疑問符だらけが襲ってくる~
こんな秘密、誰が知って誰が知らないのよ~!?

「そこにいるリディア嬢とは、ポスターを掲示した日には、約束を取り付けた、そうだなセルジオ…」

えっ?

「そうでーす、間違いありません。リディア嬢の友達のクロエ嬢が、私の友達のパートナーになったので、リディア嬢とグレリュード様の組み合わせを提案しましたー」

セルジオ、あんた、何、言ってんの?……私、了承してないが?

「提案されたから、受託した。わかりましたか?アンネリーネ嬢。あなたは、トリスタン王子様の婚約者候補の筆頭ではありませんか?ずっとあなたは表と裏の顔を使い分けていたが、流石にトリスタン王子も気分が悪いと思います。私には構わないで頂きたい」

えっ!?婚約者じゃなくて、婚約者候補の筆頭?
全然、話が、ついていけない。
図書室に向かった足が完全に止まった。
耳が大きくなってしまったよ。全く知らない話(こんな大きな秘密)バレないなんて、どんだけ口が固いんだよ、生徒会!トリスタン王子の立場ないじゃない?

「失礼しますわ!」

誰に向かった棘かはわからないが、キツイ言い方の失礼しますだった。私に対してじゃなければ良いな。
巻き込まれただけの被害者だからね、私も。

「おい、派手色、わかっているな、逃げるなよ、会場前集合、開始時刻の一時間前。出来るな」

オワタ
私、明日、休むつもり、
オワタ
アンネリーネ様の秘密知った、
オワタ
生徒会の人、パートナー、オワタ。

ここからどのように家に着いたかはわからない。
明日はパーティーだと伝え、朝から磨かれて、去年のドレスを着る。

馬車に乗って気づいた。私のドレス青じゃない。何、このあなたの瞳に合わせましたみたいな怖っ。
無意識が怖い。
私の金ピカの髪は高い位置に結い、クルクルと綺麗に巻かれ広がる。中々ゴージャス。光り輝いているね!
侯爵令嬢出しているわ、完璧よ?
怖っ、なんか頑張ってる感出てない?
言われちゃうパターンじゃない、これ?

「お嬢様、着きました」

御者よ…

「ねぇ、時間より早くないかしら?道、混んでる所を通ってくれて良かったのに」

「お相手は、時間厳守の方ですよね?早い到着の方が、気持ちいいですからね」

と爽やか笑顔で言われた。
無駄に優秀、我が家の御者。
もう嫌だ。気合い入って、早く準備して来ましたみたいな人に映らないかしら?
歩くのも嫌なのに、会場の前に夕陽色の髪が見えた。
何故か顔がふにゃりとしてくる感覚。
もういたよ。生徒会だもの準備があるでしょうとも、先にいるのは当然よ。

待っていてくれてるわけじゃないのよ。
ニヤニヤしちゃダメ。


だって仕方がないじゃない。
サマーパーティーのパートナー、私だけ決まらなかったのよ。あの地獄のような惚気やピンクの雰囲気を飛ばす空気の中に、ずっといたのよ。耐えたのよ。
私に、パートナーが出来たのよ、
私もこれで堂々と参加できるのよ。

そして、何より、グレリュード様がめちゃくちゃかっこいいのよ!!!
少し離れた所でもわかるってどれだけよ!

友達のパートナーの誰よりも!!
トリスタン王子様よりも!!
アンネリーネ様なんて振られたのよ!!

かっこいいーーー

「おい、ニヤニヤするな、怖い」

「はい!」

「…時間通りだ」

「はい!」

「怖い」

「はい!」

「生徒会の仕事がある、派手色、中に入れ」

…お前じゃなくて、派手色に進化していたわ。なんか嬉しい。どっちとかじゃなくて、『私』を見て言っているから。

「ニヤニヤするな」

「はい!」

私のサマーパーティーは、始まった。

普通が一番?安らぐ安全な人が一番?違う、違う、パーティは、やっぱり見目が良いのが一番に決まっているじゃない!!

オッホッホッホッホーーー

完全なる私の勝利ーーーー
早く自慢したーい!
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