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12 イベントとフラグ

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平和な日常というのは、あっという間に崩れる。

「サマーパーティーですって」

ドンと貼られた掲示板に大きく書かれた文字を見た時から嫌な予感はあった。

教室内で、やたらイチャイチャラブラブな会話が飛び交う。
ピンクな雰囲気は、空気感染を引き起こしていた。これは流行病だ。

「仕方ないから、お前を誘ってやる」
「仕方ないから、付き合ってあげるわ」

「良ければ俺もパートナー候補にしてくれないかな」
「うーん、まだ決めかねているから、少し待っててね。すぐ返事するから」

「前から良いなって思っていたんだ。これをきっかけに友達として一緒に参加しないか?」
「友達?まぁ、そういうことならオッケーよ」

「どうせあなたにパートナーなんて出来ないだろうから、今回は、私がなってあげる」
「別に、困ってないけど、今回は様子見として引き受けよう」

はい、これが教室内で、至る所で行われている会話ですよ。陰でコソコソ誘うのではなくて、堂々とみんなに見えるように!
それって牽制し合っているって事ですか?
誰にも話しかけてもらえない私は、ポツンと孤島になっているんだけど!

「早くクロエ来ないかしら?」

こんな遅いのが、逆に嫌な予感を感じさせる。クロエよ、人の不幸をお腹を抱えて笑うクロエよ、まさかね?

なんかニマニマしているクロエが教室に入ってきた。これは、絶対嬉しい事があったのね。聞きたくない。嫌だ。

「おはよう、リディ」

「ええ、おはようクロエ…」

「ねぇ、知っている、サマーパーティーが行われるんだって。…私、今日公布日だって全然知らなくて、知らない人から教えてもらちゃったわ」

「そう、知らない人ね。顔がニマニマしてうるさいんだけど」

「ええ?私、笑ってないわよ。話し声だって小声でしょう。リディ、私、誘われちゃったんだよね~、知らない人だから困るよね。パーティーのパートナーって言ったら、会場内ではずっと一緒にいなくてはいけないでしょう?」

「クロエ、知らない人なら、あなたの兄弟に探りを入れて、どんな人物か調査したら。…パーティーに誘われて良かったじゃない」

こんな風に言われたかったんでしょう?わかるわよ!言ってあげるわよ!あぁ悔しいわ。ニヤニヤするんじゃないわよ。
一体どこで出会ったのかしら?ほとんど一緒にいる私達は、駄目で、クロエだけって複雑だわ。

「ハァ、いいわねクロエ、後で返事しますなんて、モテる女の台詞ぽい」

と言えば、

「あ!私、驚いてつい、オッケーしちゃった!」

ええー、

「知らない人って言ってなかった?」

「そう。三組の人。でもパーティーなんて知らない人との出会いを求めているわけでしょう、だからこれも出会いよ」

とクロエは言った。

「その通りだよ。これは新たに沢山の人との出会いに、仲良くなりましょうという会だよー。こいつが、クロエ嬢にオッケーもらったって言うから、見に来ちゃったー。俺は、三組のセルジオよろしくー。君の金髪綺麗ー」

「セル、オッケーだったろう。俺の話を信じないで、クロエ嬢の顔を見たいってしつこくてさ。君は、例の…怖い顔しないでよー、俺はカルロス。たまに君達に話しかけると思うけど、許してねー、よろしくー。じゃあまたね、クロエ嬢ー」

「ええ」

クロエは一言に対して、去っていく彼らはうるさかった。何かノリが軽いし、何あの感じ、例のだって、嫌だわ。

「クロエ、あなたあんな感じの雰囲気でパートナーに誘われたの?カルロスさんだっけ。どちらの方なの?話し方が個性的な人達だったわね」

と聞くと、クロエは、驚いた顔をしていた。

「家名は聞いてないわ」

「そう、彼、私に自己紹介する時も言ってないもの、仕方ないわ。勢いが凄かったからね」

と言えば、クロエも納得していた。
私なんて、例のなんて言われているよ。馬糞は匂いが強烈だったもの。そんな簡単に忘れないよね。

そして、いつも通り四人で食事を取る。初日から誘われたのは、クロエのみ。

「「「良かったわね」」」

と言った後に、クロエからは、返事が返って来ない。

「キャロライン、あなたの問題が私にも現実に降りかかってきたわ。何を話していいかわからないわ」

知らない人だものね。

「難しいわね。今度趣味とか聞いてみたらどう?」

とマリーダもキャロラインも私もアイデアは出すけど、難しい顔をされた。クロエが、何を求めているのか分からず解散した。

借りていた本を返しに図書室に向かっていれば、とてもベタな出会い、

「おい、お前、元婚約者に報復された人」

と呼ばれた。馬糞と言われなかっただけ良かったが。

「あー、先日は、大変お世話になりました。ありがとうございます。生徒会の人」

としっかりしたお辞儀をして感謝を述べた。
私の方はしっかり名前を覚えているけど、何か悔しくて、つい生徒会の人なんて言ってしまった。
生意気だったかな?

あれ、もしかして!?

あ、気づいてしまった。こんな突然声をかけられるなんて、まさかのーーークロエパターン!!
これってパートナーの誘い?

「おい、急にニヤニヤすんな。怖い、お前。そういや、前もニヤニヤしてしたな…なんか顔がうるさい」

「そんな言い方しなくても、前もそんなやり取りでしたね。入学説明会ですよね。よく覚えてくれていますね」

まさか、前から目をつけられてたのかな、私。
生徒会の人ならきっと身元は確かだし、顔は大変良い、むしろ学園一ではないかな?断る理由はないな、これは!

ついでに、いつぞやの街での盗人から鞄を拾ってもらった御礼も言うべきかな。

「おい、今日は司書の人が、体調を崩して図書室は閉めた。返却ならまた今度にしろ。きちんと返却期間は守れよ」

とスタスタ歩いて遠くに行ってしまった。
あれ?

サマーパーティーは?
軽い感じで、パートナーどうせいないんだろう?面倒かけんなよって感じで誘われちゃう予定ではなかったっけ?

「あれ?」

と後ろ姿を見送っていると、さらに私の後ろからカタと音がして、そちらを見た。

年上の女性が、じっとこちらを見ていた。軽く会釈をした。
何も言わず、こちらを見ていたので、怖くて生徒会の人を追うように、廊下を走る。あの人が、どちらに行ったかはわからない。もう後ろ姿も見えないし。

気づいたら、校舎から出ていた。ホッとして、校舎の上の方の窓を見ると、その女性が窓から私を見ていた。


ヒッ


声にならずに息を吸って出た音は、耳に残った。
誰でもいいから、あの見ている人を止めて欲しくて、近くにいた人の腕を引っ張って

「すみません、あの上の窓から女性が見ているのですけど」

と言えば、

「どこかな?よくわからないけど?」

と金色の髪はゆっくり揺れ、青い目は私を見た。
何故、トリスタン王子の腕を掴むかな私ってば!

「失礼しました。私の勘違いです」

と言った先に、アンネリーネ様達と取り巻きではなく、その一団という関わりたくない先輩方と上手く挟まれてしまった。

「何をやっているのかしら?リディア様」

おお~
こーわーいーよー
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