66 / 70
ナルアポッドの族長たち
衝撃的な出会い
しおりを挟む
「狼笛なんて鳴らすから誰かと思えば、アザムんとこの嬢ちゃん達でねぇか」
「エボン様、お久しぶりです」
突如として現れた、自分の倍はゆうにある背丈の男達。
その中でも更に重厚な肉体を持つ男。
多部族国家ナルアポッドで最も有力とされる氏族……コクダン族の族長、エボンに挨拶をして蜂蜜酒を渡す。
「ごれは……魔界さ行ぐだか?」
エボンは酒を側近に持たせ、地面にどっかりと座った。
「はい。人界にて新たな魔王が覚醒し、その件でお兄様に呼ばれまして……」
「あぁ、そんじゃあ魔族だってのがバレちまっただな……。その新しい魔王は何処さいる?」
「それが……」
追跡者が龍王国の騎士団長であることを説明し、追っ手を振り切るために二手に分かれたことを告げた。
「紅の騎士相手に殿? 勇気あるなぁ」
エボンは自身の顎をポリポリと掻く。
「ナルアポッドに入りさえすれば如何に龍王国と言えど手出しできません……。あとは二人が無事に来てくれるのを信じ、ここで待ちます」
「本気のアレを相手に逃げてさ来られるなら大したもんだでな……お?」
サーラの遥か向こう側から、何かがもうもうと土煙を上げて近づいて来ている。
「お前さ達、武器持てぇ。なんか来るぞ」
エボンの言葉で男達がそれぞれ武器を構える。
「いえ、あれは……」
振り向いたサーラが目をこらす。
その目にはユウと灯花とよく分からない何かが映っていた。
「拙者の勝ちぃぃぃ!!!」
走り抜ける勢いのまま、サーラの肩に手を置いて背後に周りユウに笑顔を向ける灯花。
「い……聖法無しの灯花に負けた……」
ユウは地面に座り込み、倒れないように両手を後ろにつく。
「お二人とも無事でなによりです」
「大丈夫?ケガしてない?」
安心した顔のサーラと心配した顔のアルネリアが二人に声をかけた。
「うん、大丈夫。ちょっと喉が乾いたから水飲む……」
ユウが水筒を取り出そうと鞄に手を突っ込むと。
「ん?」
謎の感触と共に、中から一人の子供が引っ張り出された。
「うわっ!? なんだなんだ??」
驚いたユウが手を離すと、フラフラしながら子供は立ち上がり……。
「お……」
「"お"?」
灯花が興味津々で次の言葉を待つ。
「お主ら……もう少しゆっくり……」
その場にいる全員の注目が、かなり辛そうな様子の子供へと向けられた次の瞬間。
「ゆっくおろろろろろろろろろろろろ」
子供は言葉ではないものを盛大に吐き出した。
「エボン様、お久しぶりです」
突如として現れた、自分の倍はゆうにある背丈の男達。
その中でも更に重厚な肉体を持つ男。
多部族国家ナルアポッドで最も有力とされる氏族……コクダン族の族長、エボンに挨拶をして蜂蜜酒を渡す。
「ごれは……魔界さ行ぐだか?」
エボンは酒を側近に持たせ、地面にどっかりと座った。
「はい。人界にて新たな魔王が覚醒し、その件でお兄様に呼ばれまして……」
「あぁ、そんじゃあ魔族だってのがバレちまっただな……。その新しい魔王は何処さいる?」
「それが……」
追跡者が龍王国の騎士団長であることを説明し、追っ手を振り切るために二手に分かれたことを告げた。
「紅の騎士相手に殿? 勇気あるなぁ」
エボンは自身の顎をポリポリと掻く。
「ナルアポッドに入りさえすれば如何に龍王国と言えど手出しできません……。あとは二人が無事に来てくれるのを信じ、ここで待ちます」
「本気のアレを相手に逃げてさ来られるなら大したもんだでな……お?」
サーラの遥か向こう側から、何かがもうもうと土煙を上げて近づいて来ている。
「お前さ達、武器持てぇ。なんか来るぞ」
エボンの言葉で男達がそれぞれ武器を構える。
「いえ、あれは……」
振り向いたサーラが目をこらす。
その目にはユウと灯花とよく分からない何かが映っていた。
「拙者の勝ちぃぃぃ!!!」
走り抜ける勢いのまま、サーラの肩に手を置いて背後に周りユウに笑顔を向ける灯花。
「い……聖法無しの灯花に負けた……」
ユウは地面に座り込み、倒れないように両手を後ろにつく。
「お二人とも無事でなによりです」
「大丈夫?ケガしてない?」
安心した顔のサーラと心配した顔のアルネリアが二人に声をかけた。
「うん、大丈夫。ちょっと喉が乾いたから水飲む……」
ユウが水筒を取り出そうと鞄に手を突っ込むと。
「ん?」
謎の感触と共に、中から一人の子供が引っ張り出された。
「うわっ!? なんだなんだ??」
驚いたユウが手を離すと、フラフラしながら子供は立ち上がり……。
「お……」
「"お"?」
灯花が興味津々で次の言葉を待つ。
「お主ら……もう少しゆっくり……」
その場にいる全員の注目が、かなり辛そうな様子の子供へと向けられた次の瞬間。
「ゆっくおろろろろろろろろろろろろ」
子供は言葉ではないものを盛大に吐き出した。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる