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第二章
94 キャッチアンドオーダー
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今回はなんと! 魚料理に挑戦するぜ! イエーイ!
魚はもちろん釣ってきた……わけじゃない。やっぱり水辺には水棲の魔物が多く集まるので非常に危険だ。見たことのない蟹と亀の中間みたいな謎生物などまだまだオレの知らない魔物がたくさんいた。
よって水辺に長時間張り付いていなければならない川釣りは危険すぎる。というわけでお手軽に魚が獲れる方法、魚キラーを使ってみた。要するに罠だ。かご網漁とか言うのかな?
釣りが好きな人なら知ってるかもしれないけど、魚をペットボトルで捕らえる罠がある。それと同じようなものだ。
まず<錬土>で型を作る。そしてそこに生じゃない蜘蛛糸で網を作って籠に取り付ける。生の蜘蛛糸は水にぬれるとべたべたするので使えない。その籠の内に向かって狭くなる魚の入り口を作る。
魚の性質上この罠からは逃げられないらしい。エサは死んだ小型昆虫とか肉を適当に放り込んだ。警戒心の強い魚は引っかからないらしいけど運が良ければ何匹かかかるだろう。
ちなみに真似はするなよ? 密漁になっても知らないぞ。
結果としては十匹ほどの川魚がゲットできた! まあコストに見合う程度の成果は発揮したんじゃないかな。
地球と違って攻撃力の高い魔法を使える魔物ならこんな篭簡単に壊せるからな。あまりでかいと魔物を引き寄せる可能性があるから、欲張らずにちまちま釣っていこう。
主食は豪雪うどんに挑戦しよう
ジャガイモと片栗粉をメインに使う北海道の郷土料理らしい。漫画で見ただけだから適当だけどやってみよう。
はい無理でした。
瞬殺かよ! その通りです!
おっかしいなあ。何間違ったんだろ?
ジャガオを茹でて皮剝いてマッシュにする。そこに片栗粉を入れて混ぜ合わせる。……だけど上手くまとまらずばらばらになってしまう。片栗粉の量が少ないのかなあ。うーん?
まあいいや。料理変更。
「小春。この練ったもの団子状にしてから鍋でゆがいてくれ」
「はーい」
デンプン団子ってところか。うどんを丸めたようなもんだけど……さてどうなることやら。
しかしオレの心配とは裏腹に小春は機嫌よくこねた団子を鍋に入れていく。
「とーん、とーん、とんとんとん」
「とーんととーんとん、とん」
さらに千尋も加わって仲良くこねこね。千尋は手先がそれほど器用ではない代わりに糸を指よりも器用に動かしながら、小春よりもやや調子外れになってしまった歌を歌っている。仲良くなったよなあ。
魚の方は適当にさばいて、さば……あの……内臓を取り除くとですね……うねうねと動く奴がいるわけですよ。はい、寄生虫です。
ふー。
「てめえの居場所なんざこの巣の中にはねえんだよ! のっけから食欲下げるもん見せてんじゃねー!」
部下を呼んで即刻排除!
決定! これから川魚は絶対に生では食べない! 寄生虫怖い。
川魚は陸に近いせいか海魚の寄生虫より危険だって聞くから絶っっっっ対に食べない!
「念のために聞くけど、小春も千尋もこいつは食べないよな?」
「「食べたくない」」
あの蟻や蜘蛛でさえ寄生虫には嫌悪感を感じるのか。ますます食いたくねえ。幸い魚の寄生虫は温度変化に弱いから加熱調理すれば問題ないはずだ。
……異世界限定超高熱耐性寄生虫とかがいない限り。あれだ、炎無効スキルとかがない世界でよかった。そんなもんがあった日には加熱したもんでさえ碌に食えない。寄生虫だってれっきとした生命体なんだから魔法やらなんやらが使えるかもしれないからな。今のところ魔物は一定以上の大きさがないといけないみたいだから微生物が魔法を使うことはないはず。
それにしても燃やしても死なないってチートだよな。あーでも地球にもいるわそんな奴。クマムシとか。
おっと、今は料理に集中しよう。
魚はきちんと捌いたことがないから形がぐちゃぐちゃの三枚おろし? になっちゃったけど……練習しないとだな。でも小魚を上手く捌くのって難しいよな。おしえてジョンな万ちゃん!
捌いた魚に片栗粉をつけて油で揚げていく。揚げるといっても油は貴重なので片面ずつ焼いていくっていう言い方が正しいかな。
ムニエルが一番近いかな。バターがあればムニエルモドキじゃないんだけどなあ。
というわけで料理完成。デンプン団子と川魚のムニエルモドキ。
「美味しいよ?」
ありがとよ小春。ちょっと失敗が多かった料理でもほめてくれて。
実際に不味くはない。魚はカリっと上手く焼けたし、団子もモチモチしてていい食感だ。のどに詰まらせないように注意しないとな。そんなことで死んだら笑うに笑えん。まじで多いらしいよな、喉にお餅を詰まらせて亡くなるご老人。
ただやっぱり味気が無い。醤油とかカツオだしとかがあればいい感じに料理らしくなると思うんだけどな。
「紫水」
「何だ」
やや緊迫した通信が入ってきた。川に新しい罠を仕掛けに行った部隊に何かがあったようだ。
「見たことない虫に襲われてる」
「わかった映像を寄越せ」
このやり取りも慣れたもんだ。いちいち焦ったり慌てたりしていた昔のオレではない。
合計で四枚の羽根に数えきれないほどの目、細長い体。
「トンボか? それにしてもでかいな」
大きさは1m近い。史上最大のトンボであるメガネウラが70cmぐらいらしいのでこいつはまさしく規格外の大きさだ。それと触角の形が普通じゃないような気がする。やっぱり何か別の生物が混じっているのか?
こいつの魔法は……周囲に青緑色の光が風のように纏わりついているから風の操作かな? それであの巨体でさえ飛行可能になっているようだ。
トンボは昆虫の中でも優れた飛翔能力を持ち、その姿は2億年前から大きく変動していないほど完成されているとか。
なるほど。確かにこいつは捉えきれない。
速い。早い。迅い。
単に最高速度が速いのではなく、ある時は鋭角に、ある時はホバリングして、とにかく緩急のつけ方が人間の兵器や動きでは追い付かない。以前鷲の動きを炎や舞のように例えたけど、こいつはむしろ逆。
凍った稲妻のような硬さと鋭さがある。
今襲われていないのは多分弓矢を警戒しているんだろう。距離をとってそれ以上近づこうとしない。
倒せと言われると難しいけど現実にはもっとたくさんの選択肢がある。
「よし、逃げろ」
三十六計逃げるに如かず。巣に戻れば数の差でどうとでもなる。川沿いだからちょっと時間はかかるけどトンボが無理に襲ってこなければどうにかなる。
だが、その予想は裏切られた。
川から何かが飛び出てきた。それは牙。口から牙が飛び出していた。
青虫などの地球と違い幼虫だけでその生を終える魔物を見ていたからだろうか。忘れてしまっていた。トンボの幼虫がなんであるかを。
「こいつヤゴか!」
ヤゴはトンボの幼虫で、獰猛な水中のハンターだ。特徴は素早く伸びる下唇で小魚を傷つけることもあるとか。まさか親子で狩りをしているのか!?
こいつには青緑色の水が纏わりついて、それが蟻に締め付けるように絡んでいる。
わかったぞ! こいつらの魔法は正確には流体操作だ! もしくは幼虫のヤゴだと液体を操り、成虫のトンボだと気体を操る、成長によって使う魔法が変化するのか!?
わかったけどもう遅い。空中と水中という明らかに蟻の苦手とするフィールドから迫る敵を同時に相手しなければならないプレッシャーは相当だ。
(いっそのこと一人捨て駒にするか?)
しかし、オレの打算もトンボとヤゴの知略も、そのすべては打ち砕かれた。
不意に空が暗くなる。大空に影がよぎると、トンボはもうすでに消えていた。
漁夫の利を得たのは大空の王者、鷲だった。
トンボの機動力さえものともせずに比喩ではなく鷲掴みにして悠々と飛び去って行った。
言葉を紡ぐ暇さえない。ヤゴは一目散に水中へと逃げ込んだ。
「ねえ、紫水」
「何だ、小春」
「あれ、欲しい?」
流石我が娘。オレの思考を容易く読むとは。オレがわかりやすいだけかもしれないけど。
地球の歴史において、飛行する兵器が戦闘の常識を覆したのは否定できない。
しかし、そこに至るまでの努力は並大抵のものではなかった。あの兄弟が空を飛んだ日までどれほどの人間が涙を呑んだのかは窺い知ることはできない。
しかし、しかしだ。
ここにはもうすでに答えがある。わざわざ科学文明を発展させるまでもなく、すでに人を捕えて空を舞う魔物がいる。
「あいつを捕えるぞ」
我がことながら欲深いな。ま、人間ってそういうもんだろう?
魚はもちろん釣ってきた……わけじゃない。やっぱり水辺には水棲の魔物が多く集まるので非常に危険だ。見たことのない蟹と亀の中間みたいな謎生物などまだまだオレの知らない魔物がたくさんいた。
よって水辺に長時間張り付いていなければならない川釣りは危険すぎる。というわけでお手軽に魚が獲れる方法、魚キラーを使ってみた。要するに罠だ。かご網漁とか言うのかな?
釣りが好きな人なら知ってるかもしれないけど、魚をペットボトルで捕らえる罠がある。それと同じようなものだ。
まず<錬土>で型を作る。そしてそこに生じゃない蜘蛛糸で網を作って籠に取り付ける。生の蜘蛛糸は水にぬれるとべたべたするので使えない。その籠の内に向かって狭くなる魚の入り口を作る。
魚の性質上この罠からは逃げられないらしい。エサは死んだ小型昆虫とか肉を適当に放り込んだ。警戒心の強い魚は引っかからないらしいけど運が良ければ何匹かかかるだろう。
ちなみに真似はするなよ? 密漁になっても知らないぞ。
結果としては十匹ほどの川魚がゲットできた! まあコストに見合う程度の成果は発揮したんじゃないかな。
地球と違って攻撃力の高い魔法を使える魔物ならこんな篭簡単に壊せるからな。あまりでかいと魔物を引き寄せる可能性があるから、欲張らずにちまちま釣っていこう。
主食は豪雪うどんに挑戦しよう
ジャガイモと片栗粉をメインに使う北海道の郷土料理らしい。漫画で見ただけだから適当だけどやってみよう。
はい無理でした。
瞬殺かよ! その通りです!
おっかしいなあ。何間違ったんだろ?
ジャガオを茹でて皮剝いてマッシュにする。そこに片栗粉を入れて混ぜ合わせる。……だけど上手くまとまらずばらばらになってしまう。片栗粉の量が少ないのかなあ。うーん?
まあいいや。料理変更。
「小春。この練ったもの団子状にしてから鍋でゆがいてくれ」
「はーい」
デンプン団子ってところか。うどんを丸めたようなもんだけど……さてどうなることやら。
しかしオレの心配とは裏腹に小春は機嫌よくこねた団子を鍋に入れていく。
「とーん、とーん、とんとんとん」
「とーんととーんとん、とん」
さらに千尋も加わって仲良くこねこね。千尋は手先がそれほど器用ではない代わりに糸を指よりも器用に動かしながら、小春よりもやや調子外れになってしまった歌を歌っている。仲良くなったよなあ。
魚の方は適当にさばいて、さば……あの……内臓を取り除くとですね……うねうねと動く奴がいるわけですよ。はい、寄生虫です。
ふー。
「てめえの居場所なんざこの巣の中にはねえんだよ! のっけから食欲下げるもん見せてんじゃねー!」
部下を呼んで即刻排除!
決定! これから川魚は絶対に生では食べない! 寄生虫怖い。
川魚は陸に近いせいか海魚の寄生虫より危険だって聞くから絶っっっっ対に食べない!
「念のために聞くけど、小春も千尋もこいつは食べないよな?」
「「食べたくない」」
あの蟻や蜘蛛でさえ寄生虫には嫌悪感を感じるのか。ますます食いたくねえ。幸い魚の寄生虫は温度変化に弱いから加熱調理すれば問題ないはずだ。
……異世界限定超高熱耐性寄生虫とかがいない限り。あれだ、炎無効スキルとかがない世界でよかった。そんなもんがあった日には加熱したもんでさえ碌に食えない。寄生虫だってれっきとした生命体なんだから魔法やらなんやらが使えるかもしれないからな。今のところ魔物は一定以上の大きさがないといけないみたいだから微生物が魔法を使うことはないはず。
それにしても燃やしても死なないってチートだよな。あーでも地球にもいるわそんな奴。クマムシとか。
おっと、今は料理に集中しよう。
魚はきちんと捌いたことがないから形がぐちゃぐちゃの三枚おろし? になっちゃったけど……練習しないとだな。でも小魚を上手く捌くのって難しいよな。おしえてジョンな万ちゃん!
捌いた魚に片栗粉をつけて油で揚げていく。揚げるといっても油は貴重なので片面ずつ焼いていくっていう言い方が正しいかな。
ムニエルが一番近いかな。バターがあればムニエルモドキじゃないんだけどなあ。
というわけで料理完成。デンプン団子と川魚のムニエルモドキ。
「美味しいよ?」
ありがとよ小春。ちょっと失敗が多かった料理でもほめてくれて。
実際に不味くはない。魚はカリっと上手く焼けたし、団子もモチモチしてていい食感だ。のどに詰まらせないように注意しないとな。そんなことで死んだら笑うに笑えん。まじで多いらしいよな、喉にお餅を詰まらせて亡くなるご老人。
ただやっぱり味気が無い。醤油とかカツオだしとかがあればいい感じに料理らしくなると思うんだけどな。
「紫水」
「何だ」
やや緊迫した通信が入ってきた。川に新しい罠を仕掛けに行った部隊に何かがあったようだ。
「見たことない虫に襲われてる」
「わかった映像を寄越せ」
このやり取りも慣れたもんだ。いちいち焦ったり慌てたりしていた昔のオレではない。
合計で四枚の羽根に数えきれないほどの目、細長い体。
「トンボか? それにしてもでかいな」
大きさは1m近い。史上最大のトンボであるメガネウラが70cmぐらいらしいのでこいつはまさしく規格外の大きさだ。それと触角の形が普通じゃないような気がする。やっぱり何か別の生物が混じっているのか?
こいつの魔法は……周囲に青緑色の光が風のように纏わりついているから風の操作かな? それであの巨体でさえ飛行可能になっているようだ。
トンボは昆虫の中でも優れた飛翔能力を持ち、その姿は2億年前から大きく変動していないほど完成されているとか。
なるほど。確かにこいつは捉えきれない。
速い。早い。迅い。
単に最高速度が速いのではなく、ある時は鋭角に、ある時はホバリングして、とにかく緩急のつけ方が人間の兵器や動きでは追い付かない。以前鷲の動きを炎や舞のように例えたけど、こいつはむしろ逆。
凍った稲妻のような硬さと鋭さがある。
今襲われていないのは多分弓矢を警戒しているんだろう。距離をとってそれ以上近づこうとしない。
倒せと言われると難しいけど現実にはもっとたくさんの選択肢がある。
「よし、逃げろ」
三十六計逃げるに如かず。巣に戻れば数の差でどうとでもなる。川沿いだからちょっと時間はかかるけどトンボが無理に襲ってこなければどうにかなる。
だが、その予想は裏切られた。
川から何かが飛び出てきた。それは牙。口から牙が飛び出していた。
青虫などの地球と違い幼虫だけでその生を終える魔物を見ていたからだろうか。忘れてしまっていた。トンボの幼虫がなんであるかを。
「こいつヤゴか!」
ヤゴはトンボの幼虫で、獰猛な水中のハンターだ。特徴は素早く伸びる下唇で小魚を傷つけることもあるとか。まさか親子で狩りをしているのか!?
こいつには青緑色の水が纏わりついて、それが蟻に締め付けるように絡んでいる。
わかったぞ! こいつらの魔法は正確には流体操作だ! もしくは幼虫のヤゴだと液体を操り、成虫のトンボだと気体を操る、成長によって使う魔法が変化するのか!?
わかったけどもう遅い。空中と水中という明らかに蟻の苦手とするフィールドから迫る敵を同時に相手しなければならないプレッシャーは相当だ。
(いっそのこと一人捨て駒にするか?)
しかし、オレの打算もトンボとヤゴの知略も、そのすべては打ち砕かれた。
不意に空が暗くなる。大空に影がよぎると、トンボはもうすでに消えていた。
漁夫の利を得たのは大空の王者、鷲だった。
トンボの機動力さえものともせずに比喩ではなく鷲掴みにして悠々と飛び去って行った。
言葉を紡ぐ暇さえない。ヤゴは一目散に水中へと逃げ込んだ。
「ねえ、紫水」
「何だ、小春」
「あれ、欲しい?」
流石我が娘。オレの思考を容易く読むとは。オレがわかりやすいだけかもしれないけど。
地球の歴史において、飛行する兵器が戦闘の常識を覆したのは否定できない。
しかし、そこに至るまでの努力は並大抵のものではなかった。あの兄弟が空を飛んだ日までどれほどの人間が涙を呑んだのかは窺い知ることはできない。
しかし、しかしだ。
ここにはもうすでに答えがある。わざわざ科学文明を発展させるまでもなく、すでに人を捕えて空を舞う魔物がいる。
「あいつを捕えるぞ」
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