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友人

話し合いをしましょう3

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 食堂で赤くなっていた小鳥は、午後の講義もやたらとそわそわしていた。そわそわしている、と薄羽の目から見てもわかるくらいのそわそわぶり。部屋に誘ったくらいでこんなに浮かれるものかな。薄羽は首を捻る。
 小鳥は歩いているだけで人目を集めるし、やたらと話しかけられる。友人や知人というわけでもないのか、スルーしてしまうことが多いがそれでも向こうが接触を図ってきているくらいは認識しているはずだ。本当のところは薄羽にもわからないが、それでも前に立ち塞がれればスッと爪先が外に向いたり、ズンズン向かってくる人がいればそちら側の肩にリュックを背負ってみたり、避けようとする行動は見られる。だが今日は、それがなかった。
 そわそわと空を見たり、地面を見たり、薄羽を見たり。その間話しかけてくる人が前に立てばぶつかるし、横から腕を組まれたりしている。乱暴でない程度に振りほどいてから驚いた顔をしているので、本当に気づいていない。薄羽は話しかけられても返事をしないのはどうか、と思っているところがあるが、過剰に関心を集めてしまうので仕方のないことなのだろうと納得している。それだけに、無防備すぎて逆に心配になってきた。

「小鳥、あの、フツーの部屋だからな」
「ん? うん?」

 薄羽との会話さえぽやぽやしている。満面の笑みではない。それでもいつにも増して目がきらきらしている小鳥は話しかけやすいのだろう、人の接触が多い。
 現にいまも、「いまなら」「ね」とひそひそと相談し合った女子ふたりが、あの、と勇気を振り絞った様子で話しかけてきた。

「鷲崎くんって、動画配信してますよね?」
「えっ? マジ!?」

 薄羽のほうが目を剥いてしまった。大きい声だったからだろう、女子たちは薄羽のほうに顔を向け、うんうん、と頷いて見せた。薄羽は女子の肯定を確認後、ぽかっと口を開けて小鳥を見上げてしまった。薄羽は弟と一緒にゲーム配信動画を見るくらいだが、顔を出して配信する人たちがいることは知っている。小鳥はあまり自分から口を開くタイプではない。どういう配信をしているのか。
 と思っていたら小鳥がまた口に指を差し入れてきたので、おわ、と身体をのけぞらした。

「昨日上げてた動画楽しかったです!」
「えっ昨日なの!?」

 結構頻繁に配信するタイプ? 薄羽は今度は口を手で隠しながら小鳥を見上げた。完全に女子たちと同じ首の角度になっていた。

「俺じゃない」
「えっ」
「俺そういうのやらないから」
「でっでも……」

 小鳥は怒っているわけではないのだろうが、淡々とした声に女子たちは萎縮してしまったようだった。薄羽の手を掴み、行こう、とぐいぐい引いてくる。目の前で女子が意気消沈してしまう様子を見て、薄羽は焦った。やっぱり噂が、とか、怖い、とかが細々と聞こえてくる。はっと薄羽は我に返った。そういえば、小鳥は誤解されやすい。別に怒っていないのに怒っていると思われたり。冷たくないのに冷たいと思われたり。
 やなやつじゃないのに。
 そんな誤解をされてほしくない。薄羽は手を引いてくる小鳥の手を逆に掴み、その場に仁王立ちになった。

「怖くないよ!」
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