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第二章 革命児編
第16話 長経
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長経と片倉は陣中で待機していると息をきらしながら一人の男が長経の目の前に現れた。
男は慌てながら
「長経様、も、も、申し上げますわっわっ若松情が討ち取られました」
長経と片倉は男のいっていることが理解できなくて長経は恐い顔で
「嘘だろ、何言ってんだ、戦でのそういう冗談はわしは好まんぞ」
「長経様、本当です。若松情討ち取られました。萬崎勢は若松を討ち取った勢いでこちらに攻めて来ております」
長経は家来の胸倉を掴んで
「おい嘘だろ、嘘だろ、嘘だと言えー」
長経は叫んだ。片倉は動揺している長経を抑えて
「長経様落ち着いてください、ここは逃げるしか道はありません」
「皆、見苦しいまねしてすまん、ここはなりふり構わず逃げるぞ」
「はい」
天羽軍は退却を開始した。
長経は退却しながら
まさかまさか若松情が討ち取られるとは、世の中わからないものだ、とにかくわしら無事に逃げられればよいが。
長経は焦りながら馬を走らせていた。
片倉は今までにないくらい動揺している長経を見て
自分だけでも冷静でいなきゃ天羽軍は壊滅しかねぬ。
「長経様、ご安心くだされ、もう戦は決まったのでここまで相手が追ってくる可能性は少ないかと」
長経は片倉の言葉を聞いて
確かにそうかもしれない、奴らが倒したかったのは若松情だ、その若松を討ち取ったのならばもはや戦は終わりなのだろう。
「そうだな片倉、わしらは逃げ延びれるな」
「そうです」
長経達が安心したその時だった。
ドドドドド
「何の音だ」
天河の旗が向かってきた。
「天河の旗です、奴ら援軍に来たんですかね?」
「違う、よく見ろ片倉、奴ら裏切ったんだ」
天河軍は勢いよく長経達に向かってきた。
「皆の者、長経を討ち取れー‼」
天河鷲雪の号令で霜河軍はいっそう勢いを増した。
「殿、ここは我らに任せてください我らが必ず食い止めます」
「お前達」
「片倉、殿を頼むぞ」
「はい」
「さらば殿、今までありがとうございました」
家来達は皆天河軍に飛び込んで行った。
長経は目頭を押さえながら
すまぬ、我の為に
長経と経丸は逃げて行った。
天羽軍は粘るが疲労と戦力の差により
徐々に追い詰められ遂に壊滅した。
「長経の首だ、必ずや長経の首を取れ」
天河鷲雪は必死だった。
若松を裏切って萬崎に付くには手土産として何としてでも長経の首が必要だと思ったからだ。
「どんどん追ってが近づいております」
「ああ」
もう覚悟を決めなければな。
長経は腹をくくった。
「やっと追いついたぞ」
「ほーどうなされた、わしらは共に若松様についていたのではないのか?」
長経はわざとぼけた質問をした。
「そんなものとっくに終わってるは、お主の首を頂戴しに来た」
「卑怯者だなお主は、わしらを裏切りおって」
「裏切りなど我らはしておらぬぞ、若松様が亡くなった、同盟者がいなくなったから別の方に同盟を持ちかけようと
してるだけだ」
片倉は怒った声で
「口だけは達者な奴めこの場で刺し違えてやる」
長経は刀を抜こうとする片倉を止めた。
「もう覚悟はできている、おぬしにわしの首を差し出す」
「ほーいい心構えだ」
「長経様、何を、何を言っておられるのですか‼」
「ただしこの若者には危害をくわえないでいただきたい」
「はっは、そやつの首などなんの価値にもならんからいらん」
長経は小さく優しい声で
「去れ、片倉」
「長経様は我が恩人、その恩人を見捨てて去ることなぞできません」
長経は片倉の顔を両手で包み込んで
「片倉、わしがお主の恩人なのなら最後まで恩人でいさせてくれぬか」
「殿」
長経は片倉を抱きしめ
「あの時お主を助けて本当によかった」
片倉は悲しい感情がこみあげてきた。
「お主がいるから安心して死ねる」
「経丸を頼んだ」
「殿」
「さぁいけ、達者でな片倉」
長経は笑顔で片倉を突き放した。
片倉は目に涙を浮かべながらその場を去って行った。
長経は片倉の去る背中を見て
もう少し経丸が大きくなるのを見たかったな
天河は長経に
『感傷に浸ってるところ悪いな』
長経はおとなしい静かな声で
「さぁどうぞはじめてくれ」
「すまぬな、これも世の習いだからな」
天河は高笑いした。
天河は煽るように
「最後に辞世の句でもどうぞ」
「羽はえて天へ向かうこの身かな一人娘をこの世において」
これにて長経は処刑された。
片倉は馬に乗って逃げながら
「くそー、くそー、くそー」
片倉は悔しさを叫びながら逃げることしか出来なかった。
長経を失った天羽家はどうやって立て直しこの戦国を生き抜くのだろうか、小さな家への大きな試練であった。
男は慌てながら
「長経様、も、も、申し上げますわっわっ若松情が討ち取られました」
長経と片倉は男のいっていることが理解できなくて長経は恐い顔で
「嘘だろ、何言ってんだ、戦でのそういう冗談はわしは好まんぞ」
「長経様、本当です。若松情討ち取られました。萬崎勢は若松を討ち取った勢いでこちらに攻めて来ております」
長経は家来の胸倉を掴んで
「おい嘘だろ、嘘だろ、嘘だと言えー」
長経は叫んだ。片倉は動揺している長経を抑えて
「長経様落ち着いてください、ここは逃げるしか道はありません」
「皆、見苦しいまねしてすまん、ここはなりふり構わず逃げるぞ」
「はい」
天羽軍は退却を開始した。
長経は退却しながら
まさかまさか若松情が討ち取られるとは、世の中わからないものだ、とにかくわしら無事に逃げられればよいが。
長経は焦りながら馬を走らせていた。
片倉は今までにないくらい動揺している長経を見て
自分だけでも冷静でいなきゃ天羽軍は壊滅しかねぬ。
「長経様、ご安心くだされ、もう戦は決まったのでここまで相手が追ってくる可能性は少ないかと」
長経は片倉の言葉を聞いて
確かにそうかもしれない、奴らが倒したかったのは若松情だ、その若松を討ち取ったのならばもはや戦は終わりなのだろう。
「そうだな片倉、わしらは逃げ延びれるな」
「そうです」
長経達が安心したその時だった。
ドドドドド
「何の音だ」
天河の旗が向かってきた。
「天河の旗です、奴ら援軍に来たんですかね?」
「違う、よく見ろ片倉、奴ら裏切ったんだ」
天河軍は勢いよく長経達に向かってきた。
「皆の者、長経を討ち取れー‼」
天河鷲雪の号令で霜河軍はいっそう勢いを増した。
「殿、ここは我らに任せてください我らが必ず食い止めます」
「お前達」
「片倉、殿を頼むぞ」
「はい」
「さらば殿、今までありがとうございました」
家来達は皆天河軍に飛び込んで行った。
長経は目頭を押さえながら
すまぬ、我の為に
長経と経丸は逃げて行った。
天羽軍は粘るが疲労と戦力の差により
徐々に追い詰められ遂に壊滅した。
「長経の首だ、必ずや長経の首を取れ」
天河鷲雪は必死だった。
若松を裏切って萬崎に付くには手土産として何としてでも長経の首が必要だと思ったからだ。
「どんどん追ってが近づいております」
「ああ」
もう覚悟を決めなければな。
長経は腹をくくった。
「やっと追いついたぞ」
「ほーどうなされた、わしらは共に若松様についていたのではないのか?」
長経はわざとぼけた質問をした。
「そんなものとっくに終わってるは、お主の首を頂戴しに来た」
「卑怯者だなお主は、わしらを裏切りおって」
「裏切りなど我らはしておらぬぞ、若松様が亡くなった、同盟者がいなくなったから別の方に同盟を持ちかけようと
してるだけだ」
片倉は怒った声で
「口だけは達者な奴めこの場で刺し違えてやる」
長経は刀を抜こうとする片倉を止めた。
「もう覚悟はできている、おぬしにわしの首を差し出す」
「ほーいい心構えだ」
「長経様、何を、何を言っておられるのですか‼」
「ただしこの若者には危害をくわえないでいただきたい」
「はっは、そやつの首などなんの価値にもならんからいらん」
長経は小さく優しい声で
「去れ、片倉」
「長経様は我が恩人、その恩人を見捨てて去ることなぞできません」
長経は片倉の顔を両手で包み込んで
「片倉、わしがお主の恩人なのなら最後まで恩人でいさせてくれぬか」
「殿」
長経は片倉を抱きしめ
「あの時お主を助けて本当によかった」
片倉は悲しい感情がこみあげてきた。
「お主がいるから安心して死ねる」
「経丸を頼んだ」
「殿」
「さぁいけ、達者でな片倉」
長経は笑顔で片倉を突き放した。
片倉は目に涙を浮かべながらその場を去って行った。
長経は片倉の去る背中を見て
もう少し経丸が大きくなるのを見たかったな
天河は長経に
『感傷に浸ってるところ悪いな』
長経はおとなしい静かな声で
「さぁどうぞはじめてくれ」
「すまぬな、これも世の習いだからな」
天河は高笑いした。
天河は煽るように
「最後に辞世の句でもどうぞ」
「羽はえて天へ向かうこの身かな一人娘をこの世において」
これにて長経は処刑された。
片倉は馬に乗って逃げながら
「くそー、くそー、くそー」
片倉は悔しさを叫びながら逃げることしか出来なかった。
長経を失った天羽家はどうやって立て直しこの戦国を生き抜くのだろうか、小さな家への大きな試練であった。
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