8 / 11
本編
これからの俺たちの関係
しおりを挟む
もともと物が少ないイザリくんの部屋。
今では俺の心情も相まってガランとして見える。
緊張で足も手も震える。でも。だけど。これは大事なことだから。
気まずい内容だけど、俺たちはこの話題について真剣に話さなければならない。
「イザリくん、いつの間に真波と別れてたの?」
いけないことが親にバレてしまった子供のように、俺の言葉にビクッと肩を揺らすイザリくん。
「ちょっと前…」
嘘だ。マカミくんにその話を聞いてから、勇気を出して真波に事実確認をしたところ、俺がイザリくんに処女を奪われた頃には既に別れていたらしかった。
「真波は半年以上前って言ってたよ?それって結構前じゃない?」
バツが悪そうに顔をそらすイザリくん。
「俺は真波の代わりでしょ?だから真波と別れた時点で用済みのはずなのに。イザリくんならもっと可愛くてふわふわで柔らかい女の子といくらでも付き合えるはずなのに。ねえ、どうして黙ってたの?」
「…。」
別に俺はイザリくんのことを責めているわけではない。だって真波も言っていた、『イザリくんはすっごい優しい彼氏だった。』って。
「イザリくんにとって、俺って都合の良いセフレだった? いつでも抱ける、都合の良いオモチャだった?」
「…ちがう。」
苦しそうに眉をひそめ、俺の言葉を否定する彼。
これは俺のケジメのために必要な儀式だ。
これからの俺たちが、新たな関係性を築くための。
「あのね、イザリくん。俺、俺はね。」
「…。」
死刑宣告を受けた囚人のように蒼白な顔。血の気の無くなった顔で、イザリくんは俺の言葉の続きじっとを待つ。
「俺は、イザリくんのことが好きみたい。」
そこで初めてイザリくんは俺と顔を合わせてくれた。
バッと勢いよく振り向いて、俺の顔を見て固まって、そして、じわじわと赤くなる顔。
「それで、もし良かったらで良いんだけど。」
そう俺はイザリくんのことが好きなんだ。やっと自分の気持ちが分かった。
最初はイヤイヤ始めた関係だったけど。でも一緒に過ごす時間が増えれば増える程、俺は湊 漁(ミナト イザリ)という人物に、その人柄に惹かれていった。乱暴なくせに、優しいところ。優しいのに、ちょっと意地悪なところ。分かった以上は、この気持ちを隠したままにしておくなんて芸当、不器用な俺にはできない。
「俺と、付き合ってください。」
ぽろり、と音がしそうなくらいの大粒の涙が一つ、イザリくんの赤みがかったアンバー色の瞳からこぼれ落ちる。一つこぼれると、あとはもう堰を切ったように次々にキラキラと光る雫がイザリくんの頬を伝う。
それがあまりにも綺麗で、もったいなくて、俺は思わず自分よりもはるかに高い位置にあるその雫に手を伸ばし、袖口で拭った。
「…しゃーなし。ホンマ…しゃーなしで付き合ったるわ。」
こうして俺たちは晴れて、“カレシ”と“カノジョ”ならぬ、正真正銘お互いの本当の恋人同士になったのだった。
今では俺の心情も相まってガランとして見える。
緊張で足も手も震える。でも。だけど。これは大事なことだから。
気まずい内容だけど、俺たちはこの話題について真剣に話さなければならない。
「イザリくん、いつの間に真波と別れてたの?」
いけないことが親にバレてしまった子供のように、俺の言葉にビクッと肩を揺らすイザリくん。
「ちょっと前…」
嘘だ。マカミくんにその話を聞いてから、勇気を出して真波に事実確認をしたところ、俺がイザリくんに処女を奪われた頃には既に別れていたらしかった。
「真波は半年以上前って言ってたよ?それって結構前じゃない?」
バツが悪そうに顔をそらすイザリくん。
「俺は真波の代わりでしょ?だから真波と別れた時点で用済みのはずなのに。イザリくんならもっと可愛くてふわふわで柔らかい女の子といくらでも付き合えるはずなのに。ねえ、どうして黙ってたの?」
「…。」
別に俺はイザリくんのことを責めているわけではない。だって真波も言っていた、『イザリくんはすっごい優しい彼氏だった。』って。
「イザリくんにとって、俺って都合の良いセフレだった? いつでも抱ける、都合の良いオモチャだった?」
「…ちがう。」
苦しそうに眉をひそめ、俺の言葉を否定する彼。
これは俺のケジメのために必要な儀式だ。
これからの俺たちが、新たな関係性を築くための。
「あのね、イザリくん。俺、俺はね。」
「…。」
死刑宣告を受けた囚人のように蒼白な顔。血の気の無くなった顔で、イザリくんは俺の言葉の続きじっとを待つ。
「俺は、イザリくんのことが好きみたい。」
そこで初めてイザリくんは俺と顔を合わせてくれた。
バッと勢いよく振り向いて、俺の顔を見て固まって、そして、じわじわと赤くなる顔。
「それで、もし良かったらで良いんだけど。」
そう俺はイザリくんのことが好きなんだ。やっと自分の気持ちが分かった。
最初はイヤイヤ始めた関係だったけど。でも一緒に過ごす時間が増えれば増える程、俺は湊 漁(ミナト イザリ)という人物に、その人柄に惹かれていった。乱暴なくせに、優しいところ。優しいのに、ちょっと意地悪なところ。分かった以上は、この気持ちを隠したままにしておくなんて芸当、不器用な俺にはできない。
「俺と、付き合ってください。」
ぽろり、と音がしそうなくらいの大粒の涙が一つ、イザリくんの赤みがかったアンバー色の瞳からこぼれ落ちる。一つこぼれると、あとはもう堰を切ったように次々にキラキラと光る雫がイザリくんの頬を伝う。
それがあまりにも綺麗で、もったいなくて、俺は思わず自分よりもはるかに高い位置にあるその雫に手を伸ばし、袖口で拭った。
「…しゃーなし。ホンマ…しゃーなしで付き合ったるわ。」
こうして俺たちは晴れて、“カレシ”と“カノジョ”ならぬ、正真正銘お互いの本当の恋人同士になったのだった。
11
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
理想の妻とやらと結婚できるといいですね。
ふまさ
恋愛
※以前短編で投稿したものを、長編に書き直したものです。
それは、突然のことだった。少なくともエミリアには、そう思えた。
「手、随分と荒れてるね。ちゃんとケアしてる?」
ある夕食の日。夫のアンガスが、エミリアの手をじっと見ていたかと思うと、そんなことを口にした。心配そうな声音ではなく、不快そうに眉を歪めていたので、エミリアは数秒、固まってしまった。
「えと……そう、ね。家事は水仕事も多いし、どうしたって荒れてしまうから。気をつけないといけないわね」
「なんだいそれ、言い訳? 女としての自覚、少し足りないんじゃない?」
エミリアは目を見張った。こんな嫌味なことを面と向かってアンガスに言われたのははじめてだったから。
どうしたらいいのかわからず、ただ哀しくて、エミリアは、ごめんなさいと謝ることしかできなかった。
それがいけなかったのか。アンガスの嫌味や小言は、日を追うごとに増していった。
「化粧してるの? いくらここが家だからって、ぼくがいること忘れてない?」
「お弁当、手抜きすぎじゃない? あまりに貧相で、みんなの前で食べられなかったよ」
「髪も肌も艶がないし、きみ、いくつ? まだ二十歳前だよね?」
などなど。
あまりに哀しく、腹が立ったので「わたしなりに頑張っているのに、どうしてそんな酷いこと言うの?」と、反論したエミリアに、アンガスは。
「ぼくを愛しているなら、もっと頑張れるはずだろ?」
と、呆れたように言い捨てた。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
箱庭
エウラ
BL
とある事故で異世界転生した主人公と、彼を番い認定した異世界人の話。
受けの主人公はポジティブでくよくよしないタイプです。呑気でマイペース。
攻めの異世界人はそこそこクールで強い人。受けを溺愛して囲っちゃうタイプです。
一応主人公視点と異世界人視点、最後に主人公視点で二人のその後の三話で終わる予定です。
↑スミマセン。三話で終わらなかったです。もうしばらくお付き合い下さいませ。
R15は保険。特に戦闘シーンとかなく、ほのぼのです。
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
元会計には首輪がついている
笹坂寧
BL
【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。
こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。
卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。
俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。
なのに。
「逃げられると思ったか?颯夏」
「ーーな、んで」
目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
Hand to Heart 【全年齢版】
亨珈
BL
チームのいざこざに巻き込まれて怪我を負ってしまった和明は、その時助けてくれた人を探して全寮制の高校へ。そこで出会う同級生や先輩たちとの賑やかな毎日をコメディタッチで書いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる