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本編

忍び寄る影と目撃者

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 確かに悲しい気持ちもある。
 だけど、俺は怒っている。めずらしく俺はイザリくんに対して怒っているのだ。


 泣いているのを誰にも見られたくなくて、夜、人気がなく街灯も一つしかない薄暗い小さな公園を探してそのサビれたベンチに腰掛ける。なぜこんなところに人気のない公園があると知っているか。それはこの間イザリくんに“お仕置き”と称してペットプレイを強要され、犬ミミと、犬の躾用の口輪、尻尾のついたバイブをケツにぶち込まれ、両手両足を折りたたんで肘と膝にプロテクターを装着された状態で散歩させられたのがこの忌まわしい公園だからだ。

 俺はイザリくんに対して怒っている。しかしこんなときでもイザリくんのことを思い出してしまった自分にも腹立つ。

 もう全て忘れたい。何もかも忘れたい。そう思えば思う程に涙は後から後から溢れてきて、目をぬぐっていた袖はびしょ濡れになる。

 そんな時だった。知らないおじさんに声をかけられたのは。


 「ねぇ、キミ。この前、この公園の木陰で彼氏とセックスしてた子だよね?」


 突如としてかけられた声は俺の全く予想だにしないセリフだった。
 一気に頭が真っ白になる。
 まさかというか、やはりというか。
 以前の“お仕置き”の際のことだ。散歩の後、ペットプレイのフィニッシュとして公園の植えこみで青姦されたのだ。だから『やめて』って言ったのに!あの鬼畜ド変態め!
 どうやらこのおじさんはその光景をばっちりとその眼に刻んでいたらしい。

「そんなえっちな子なら、どうかな?おじさんとも1回ヤろうよ。お金に困ってるんなら本番ありで援助するし。」

 おじさんはそう言って俺の腕を強い力で掴んで木々が植わっている暗い方角へ引っ張っていく。

「ひ、人違いじゃないですか?やめてください!ちょッ…!待って」

 俺はその手を振り払い、逆方向に走り出す。
 が、おじさんも俺に走りで勝る。俺はすぐに追い付かれ、またしても腕を捕えらえてしまう。

「抵抗なんかしちゃっていいの?あの時の映像、あるよ。もし拒むって言うんならネットに拡散しちゃおうかな」

 全裸の俺がばっちり映ったスマホの画面を見せながらそんなことを言われれば、俺に抵抗なんかできるはずもなかった。自分でも顔から血の気が引くのが分かる。もし拡散なんかされてみろ、大学にも行けなくなるだろうし、就職にだってマイナスに響くだろうし、うかうか外にだって出られなくなるかもしれない。これからのこと、将来のことを考えて一気に足から力が抜けた。
 そうして俺は街灯の光が届かない所に連れて行かれ、おじさんにズボンとパンツを一気にずり下げられる。

 そうしておじさんの太い指が容赦なく俺のケツに突っ込まれる。持参したであろうローションをつけてくちゅくちゅと卑猥な音を出しながら、無理矢理アナルを慣らされる。怖い。怖すぎて目の前の木に必死にしがみ付く。

「怖がってるの?意外とウブなんだね。かわいい。」

 ガクガクと震える俺の耳元で、後ろから俺にかぶさるようにしておじさんが囁く。

 よく知ったイザリくんでさえその肉棒を受け入れることに心理的なハードルがあったのに、ましてや知らないおじさんにケツにチンコを挿入されるのなんて、恐怖でしかない。しかし、そんな俺の気持ちなんかそっちのけでおじさんはギンギンに勃ち上がったちんこを俺のケツに無理矢理ぶち込んできた。

 メリメリメリ、と無遠慮に侵入してくるおじさんの太くて短いソレ。「キツマン最高。」と独り言をこぼすおじさんを無視し、『早く終われ、早く終われ。』と呪文を唱える。

 知らない奴に犯されている恐怖と不快感に、泣き腫らした目から再び涙が零れる。

「ひっ!?」
「ふふ、しょっぱいね。」

 なんとおじさんはねっとりと俺の目尻に舌を這わせその涙をすくい取り言う、「そろそろペースを上げようか。」と。
  俺が制止する間もなくやみくもに激しく腰を振ってくる。その無茶苦茶で独りよがりのピストン運動に吐き気がするのに、俺の浅ましい体は反応を示し、中心は天へ向けて頭をもたげている。
 それを目ざとく見つけたおじさんは、あろうことか躊躇いなく力任せに掴んでしごき始めた。

「良かった君もちゃんと感じてくれているんだね。」
「ぁ、んっ…ひっ、やめ、抜い…てぇ!ひぐっ、ぬ、っぁ、ぐす、…ぬいて、ぇ!

 そして俺は一切の抵抗もできずに、その凌辱をただ受け入れるしかなかった。
 知らない奴に組み敷かれ、バックで強姦されるしかない自分が、悔しくて悔しくて、たくさん涙が出て、そして俺は今一番会いたくなかったはずの人の名前を呼んでいた。

「たす、けてっ、…イザリくん!う゛、ぅぇぇ、いざ、りくんっ…!」




 すると突然ドカッという大きな音がして、後ろで腰を振っていたおじさんの重くのしかかって来ていた体が吹っ飛んで行った。何が起こったのかも分からず呆然と伸びたおじさんを見やり立ち尽くしていると、聞き慣れた声が頭上から降ってきた。

「は~。あのさあキミ、こんな誰でもに発情するようなはしたないヤツだったわけぇ?」

 イザリくんだ。本物だ。どうやらイザリくんがおじさんの股間を思い切り蹴り上げ、さらに頭部を蹴り倒して気絶させたらしい。一仕事終えた彼は不機嫌そうに呟く。

「この淫乱」

 そして、イザリくんはさっきまでおじさんのチンポがぶち込まれていた俺のナカに、自分のそれを代わりに挿入した。

「ご、ごめんなさい!ごめん…なさい、ひっ、や、やめて、」

「は?他人の粗チンで喜んどいて、彼氏の立派なコレは嫌ってか?贅沢なヤツ。」

 イザリくんから与えられる刺激は今の今まで知らないおじさんから与えられていたものとは全く質が異なっていた。さっきまではこの行為に対してさっさと終われとさえ思っていたのに、今じゃなぜかケツがきゅんきゅん疼く。なんで?先ほど知らないおじさんによってイカされたばかりなのに、イザリくんのチンポが挿入されたとたん、俺の中心は与えられる快楽を期待して再び頭をもたげる。

 『どうしてイザリくんがここに?』とか、『どうやって探し当てたのか?』とか、疑問は尽きない。しかし俺自身はそれどころではなく、急激な自分の身体の変化についていけずにあたふたしていた。なんでイザリくん相手だとこうも体のいたるところがジンジンと甘く疼くのだろう。

「なんでこんな状況んなったか、洗いざらい吐けよ。吐くまで終わらんで。」

 ついでに言うとなぜかお怒りモードのイザリくん。
 どういうこと?!こちとら被害者なんですけど?!鬼畜過ぎんか?!せめて心配してくれたって良くない?!
 当惑する俺にイザリくんはいつものようにセックスを開始する。いつものように。そうつまり、いつも通り無遠慮に、一切の容赦なく。

 本来であれば一から十まで説明するのに20分もあれば済む話なのだ。それなのに…―。

 勝手知ったる俺のナカ、イイところを完全に熟知したイザリくんのチンポにどつき回され、前を握って射精を我慢させられ、ひぃひぃ泣きながら途切れ途切れに俺が今までのことを説明し終わったときには、空は既に白んでいたのだった。
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