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6.次のパーティは上手くやれそうです?
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ふーふんふんー♪
鼻歌を歌いながら、宿屋『緑の風』の扉を開く。
「ご無沙汰してました、イブキさん!」
「あぁ、シワラちゃん。お久しぶり。またパーティから追放された……ワケでは、なさそうだね」
イブキさんは私の機嫌の良さを察したようだ。
私は、新たなパーティに加入した。今日はいくつかの仕事が片付いて、仲間たちと王都に戻ってきたところだ。
それで、イブキさんに現状報告がてらに『緑の風』に寄ってみたというわけ。
「今のパーティーでは順調ですよ。地道に仲間のみんなで仕事をこなしてます。今回は、私の『不運』が発生しませんでしたよ!」
「ふふ、そうみたいだね」
「冒険初心者ばかりが集まったパーティなんですが、それがよかったみたいで仲良くやってます。初心者だからこなせる依頼は簡単なものが多いんですけどね。地方都市の周辺で素材の採取とか、農家さんの畑の害獣駆除とか……」
「それも立派な『お仕事』だよ」
私の『座敷わらし』スキルの効果なのか、他の冒険者たちでは捕まらなかった害獣が目の前に現れて捕獲できたり、素材を探すときは天候に恵まれて、多く採取できたりした。
依頼主からは感謝されて、ちょっぴりだけどボーナス報酬も貰えている。
「えへへ。でも、目標は仲間たちと遠く離れたダンジョンのモンスター討伐なんです。今のパーティの実績だと、まだ討伐依頼は回してもらえないんですけどね」
「コツコツと実績を積んで行けば、そのうちギルドからお声が掛かるよ」
大きな依頼は報酬が高い。そして、そのかわり危険も大きい。
依頼は基本、冒険者ギルドが管理している。ギルドだって、経験不足の初心者集団に危険な仕事を回すほど愚かではない。わざわざ死地に行かせるようなものだ。
大きな仕事は、実績のあるメンバーが最低一人は居るパーティにしか回ってこない。
「あっ、でもでもイブキさん聞いてください! 今度、ウチのパーティに新しいメンバーが入るんですよ!! しかもその人、複数属性が使える凄腕の魔法使いなんです!!!」
「……そうなんだ。どうして、その『凄腕の魔法使い』は、経験の浅いシワラちゃんのパーティーに?」
「ギルドからの紹介があったんです! ほら、初心者だけだとなかなかギルドから大きな仕事は回してもらえないじゃないですか。『凄腕の魔法使い』さんは、あちこちの初心者パーティを回って討伐やダンジョン攻略の経験を積ませているんだそうですよ」
「そんな親切な人がいるんだ?」
「そうなんです! その人は、冒険者を目指す後進の助けになればって、活動しているらしいです。世の中にはそんな素晴らしい冒険者もいるんですね」
最初は詐欺かともパーティメンバーは警戒したが、ギルドでその魔法使いが初心者パーティに入り討伐をこなしたという過去の依頼実績も見せてもらった。
ギルドの公式記録なので、間違いはない。言っていることは、信頼できるだろう。
初心者パーティにとっては、追い風とも言える出会いにメンバーみんな興奮した。
これで、念願だった上級の大きな依頼を受けることもできる。
「パーティメンバーはみんな大喜びですよ。いやーこれも、私の『座敷わらし』の効果ですかねー」
ふざけて、「ふふん、どうだ」と胸を張ってみせてみる。
「…………」
「イブキさん、どうかしました?」
笑ってくれると思ったのに、イブキさんは黙ったままだ。
「シワラちゃん。今から言うことは頭のスミに置いておいて欲しいんだけど」
「え? 何ですか?」
「たとえ仲間が優秀でも信頼関係に傷をつけるような所だったら、すぐに逃げるんだよ。シワラちゃんが不利な立場に置かれて、利益だけを搾り取られる、不正を強いられる。そんな場所に居てはいけないよ」
これまでにない真剣な表情。
私が雰囲気に押されて、黙り込んでいると、急にイブキさんがニコっと笑う。
「いやー。最近、利用されたあげく蔑ろにされて苦労してる冒険者がウチにやってくることが多くてさぁ」
「は、はぁ……」
「『座敷わらし』スキル持ちは真面目な性格で頑張りすぎるからね。一応、シワラちゃんも言っておこうと思って」
「あ、そういうことですか! 分かりました!」
どうやら心配してくれたらしい。
仲間ともうまくいっているし、魔法使いさんもいい人そうだから大丈夫だと思うけどな。
「これから、ギルドでメンバーと合流して、隣の街に移動なんです! 今度は泊まりにきますね。それじゃあ行ってきます!」
「……気をつけて、行ってらっしゃい」
送り出してくれたイブキさんの顔はいつもより硬い表情だった。
鼻歌を歌いながら、宿屋『緑の風』の扉を開く。
「ご無沙汰してました、イブキさん!」
「あぁ、シワラちゃん。お久しぶり。またパーティから追放された……ワケでは、なさそうだね」
イブキさんは私の機嫌の良さを察したようだ。
私は、新たなパーティに加入した。今日はいくつかの仕事が片付いて、仲間たちと王都に戻ってきたところだ。
それで、イブキさんに現状報告がてらに『緑の風』に寄ってみたというわけ。
「今のパーティーでは順調ですよ。地道に仲間のみんなで仕事をこなしてます。今回は、私の『不運』が発生しませんでしたよ!」
「ふふ、そうみたいだね」
「冒険初心者ばかりが集まったパーティなんですが、それがよかったみたいで仲良くやってます。初心者だからこなせる依頼は簡単なものが多いんですけどね。地方都市の周辺で素材の採取とか、農家さんの畑の害獣駆除とか……」
「それも立派な『お仕事』だよ」
私の『座敷わらし』スキルの効果なのか、他の冒険者たちでは捕まらなかった害獣が目の前に現れて捕獲できたり、素材を探すときは天候に恵まれて、多く採取できたりした。
依頼主からは感謝されて、ちょっぴりだけどボーナス報酬も貰えている。
「えへへ。でも、目標は仲間たちと遠く離れたダンジョンのモンスター討伐なんです。今のパーティの実績だと、まだ討伐依頼は回してもらえないんですけどね」
「コツコツと実績を積んで行けば、そのうちギルドからお声が掛かるよ」
大きな依頼は報酬が高い。そして、そのかわり危険も大きい。
依頼は基本、冒険者ギルドが管理している。ギルドだって、経験不足の初心者集団に危険な仕事を回すほど愚かではない。わざわざ死地に行かせるようなものだ。
大きな仕事は、実績のあるメンバーが最低一人は居るパーティにしか回ってこない。
「あっ、でもでもイブキさん聞いてください! 今度、ウチのパーティに新しいメンバーが入るんですよ!! しかもその人、複数属性が使える凄腕の魔法使いなんです!!!」
「……そうなんだ。どうして、その『凄腕の魔法使い』は、経験の浅いシワラちゃんのパーティーに?」
「ギルドからの紹介があったんです! ほら、初心者だけだとなかなかギルドから大きな仕事は回してもらえないじゃないですか。『凄腕の魔法使い』さんは、あちこちの初心者パーティを回って討伐やダンジョン攻略の経験を積ませているんだそうですよ」
「そんな親切な人がいるんだ?」
「そうなんです! その人は、冒険者を目指す後進の助けになればって、活動しているらしいです。世の中にはそんな素晴らしい冒険者もいるんですね」
最初は詐欺かともパーティメンバーは警戒したが、ギルドでその魔法使いが初心者パーティに入り討伐をこなしたという過去の依頼実績も見せてもらった。
ギルドの公式記録なので、間違いはない。言っていることは、信頼できるだろう。
初心者パーティにとっては、追い風とも言える出会いにメンバーみんな興奮した。
これで、念願だった上級の大きな依頼を受けることもできる。
「パーティメンバーはみんな大喜びですよ。いやーこれも、私の『座敷わらし』の効果ですかねー」
ふざけて、「ふふん、どうだ」と胸を張ってみせてみる。
「…………」
「イブキさん、どうかしました?」
笑ってくれると思ったのに、イブキさんは黙ったままだ。
「シワラちゃん。今から言うことは頭のスミに置いておいて欲しいんだけど」
「え? 何ですか?」
「たとえ仲間が優秀でも信頼関係に傷をつけるような所だったら、すぐに逃げるんだよ。シワラちゃんが不利な立場に置かれて、利益だけを搾り取られる、不正を強いられる。そんな場所に居てはいけないよ」
これまでにない真剣な表情。
私が雰囲気に押されて、黙り込んでいると、急にイブキさんがニコっと笑う。
「いやー。最近、利用されたあげく蔑ろにされて苦労してる冒険者がウチにやってくることが多くてさぁ」
「は、はぁ……」
「『座敷わらし』スキル持ちは真面目な性格で頑張りすぎるからね。一応、シワラちゃんも言っておこうと思って」
「あ、そういうことですか! 分かりました!」
どうやら心配してくれたらしい。
仲間ともうまくいっているし、魔法使いさんもいい人そうだから大丈夫だと思うけどな。
「これから、ギルドでメンバーと合流して、隣の街に移動なんです! 今度は泊まりにきますね。それじゃあ行ってきます!」
「……気をつけて、行ってらっしゃい」
送り出してくれたイブキさんの顔はいつもより硬い表情だった。
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